149. みんなでいると、ひとりになりたくなる。ひとりでいると、みんなといたくなる
このラーメン屋恒例の行列を待ちながら今日のデート(仮)の意図を聞くことにした。
「今日の目的ってお前ひとりじゃハードルが高いことを俺と一緒にしようの会って感じだったりする?」
「まぁ大体そんなところです」
世の中にはひとりでするにはハードルが高いことがあると聞く。それこそひとり映画というのは世間的にはぼっち偏差値55くらいはあるらしい。
北本はどちらかというとぼっち適性高そうかと思っていたが、案外そうでもないのかもしれない。まぁラーメンとかは男女の差というのもあるのかもしれないが。
「斉藤くんはいつもひとりで来てるんですか?」
「まぁそうだけど」
その問いには俺を傷つける意図は込められてないよね?ただの確認だよね?
「他の男子が仲良さそうにしているのを見て何か思うことはないんですか?」
「別にないなぁ」
「そうですか」
「あいつらと話せないほど仲が悪いということもないし。まぁこっちから話しかけるほど仲が良いわけでもないが。」
「・・・」
「お前は誰かと仲良くしたいの?」
まるでこう聞いてほしそうな話の流れだったのでご期待に答えて聞いてみる。
「どうなんでしょうか・・・」
「お前ってクラスだと白川ともあんま喋らんよな」
これに関しては実は密かにずっと疑問に思っていた。
「そうですね」
「なんで?」
「白川さんはいつもクラスの女子に囲まれていますし・・・」
だから自分が話しかける隙はない、とでも言いたげである。
「ひとりでいる時はひとりは楽でいいなと思うんですけど、いざ誰かが必要というか誰かと共にしたいなと思った時、日頃そういう過ごし方をしていると相手がいないことに気がつくんですよね。」
「まぁそれはあるな」
「そういう時、ふと、ああ私ってひとりなんだなと思うんですよね。悲しくはないんですが、虚しい気分になるときがたまにあります」
「そんなことないけど、と言いたいところだけど、心当たりはあるな、正直」
北本相手だと強がることなく本心を言える。
「そういう時斉藤くんはどうしてるんですか?」
「なにもしないな。だって日頃はひとりが楽というプラスを積み重ねているわけだから。たまにそういう不利益があってもトータルの損得はプラスだろうし。」
「でも日頃のプラスというものが本当に自分の取りうるマックスのプラスなのかとか考えません?」
「まぁ、な。それを甘んじて自分の限界とすることが弱さとわかっていても、でもそういう性格だからと思うしかないよ。それにその仮定は仮定から生まれる不利益について無視してるからな」
この話はまさに隣の芝生は青いってやつだろう。
仮にひとりじゃなくても楽しいというプラスが今の我々のプラスより大きいとしても、ひとりではないことによる今の俺たちでは想定できないマイナスが存在しうるかもしれない。そうすれば期待値はトントンか下手したら俺たちのほうが上だ。
人の自分より優れている面は羨むくせに、人の大変な面は見ようともしない。人間という生き物は往々にしてこういうところがあると思う。
だから俺はいつでも理性的に、論理的に、理詰めでことを精査している。
たとえそれが自分勝手な理であることを自覚しながらも。見たくない現実から逃げるための理だと認めながらも。
「まぁいいじゃん。俺がいるんだから。少なくとも俺はお前が誘ってきたらいつでもどこでも付き合うぞ。」
そんな話をするということはつまり北本は休日に気軽に誘える相手がいないことにふと悲しくなってしまったんだろう。
それについてわざわざ明言はしないが、でも気持ちはわかってるよという意図を込める。
「券が無くても、ですか?」
「ああ、だって今日もうすでに楽しいからな。楽しいことを友達から誘われて断る道理はないだろ?」
「・・・」
何も言わずうつむいてしまった。今日はなんかこんな北本をよく見るな。
「ほら、そろそろ俺たちの番だぞ。」
俺たちは水やお手拭きを取りながらカウンターに座った。




