146. 劇的ビフォー・アフター
北本の姿に俺は思わず息を呑んだ。用意していた定型文を言うつもりが、その姿につい言いよどんでしまった。
「ど、どうですかね・・・」
北本は照れながら自分の髪をくるくるしている。
「・・・」
改めて目の前の風景を見る。
そこには秋らしい臙脂色の服とクリーム色のひらひらしたかわいいスカートをまとい、普段の学校には履いてこないであろうヒールの高い靴を履いている北本が立っていた。北本のスレンダーな体型(婉曲表現)も相まってスラッとした印象を受ける。
服と靴もさることながら髪型もいつものさらさらの真面目ちゃんセミロングではなく、ふわっと巻いてあるおしゃれ女子大生とかがしていそうなかわいらしい髪型をしていた。
何より彼女のトレードマークといえるメガネがその目にはかけられてなかった。そのせいでいつも見ていたはずの北本の顔が全然違く見える。なんというか地味っぽさがない。知的な感じを残しながら垢抜けた風に映る。俺は心底驚いた。服も顔も、これじゃあまるで別人である。
「・・・・・・誰?」
あまりにも俺の想像していた北本と違い、俺は顔をまじまじと見ながら思わず声が漏れてしまった。
「さすがにひどくないですか?」
さすがに北本も少し怒ったようだ。
「ごめんごめん、あまりにもいつもと違ってびっくりした」
「私がこんな格好、変ですよね・・・」
北本は自分の服の裾を引っ張る。
「いや、そんなことはない。危うく見惚れそうになった。」
「そ、そうですか・・・」
北本はうつむきながらまた自分の服をつまむ。どうやら照れているようだ。
俺も油断すると照れそうである。というか惚れそうで危ない。その格好だとどんな仕草もめちゃくちゃかわいく見える。
今日はデートではなく、北本の指示通りに動く従者という心構えでここに来たのにこんな格好されると思わず北本を女として意識してしまいそうになる。これじゃあ本当にデートじゃないか。なんか調子狂うわ。
「では今日は色々付き合ってもらいますね」
落ち着いた北本がこほんと咳払いをしてそう言う。
「俺は今日お前の言ったところに付いていけばいいんだよな?」
前日のメッセージのやりとりで北本にどういう方針のデートなのかを確認していた。北本曰く、行き先は自分で決めるということだったので俺は特に何も考えずに今日馳せ参じたわけだ。
「はい、よろしくおねがいします」
まぁデート提案者本人がそういうなら俺は従うだけだ。
「ああ」
俺たちはようやく噴水前を動いた。
「・・・」
歩きながら俺はほっとしていた。
格好は違くても調子はいつもの北本に戻ってくれた。
たださっきから北本が全然目を合わせてくれないのはなぜだろうか。




