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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第1章 変わらない世界の改変
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14. そして役者は揃う。



 図書室についた。


 「わたしたちの図書室だね。」


 佐々木はまたも意味不明なことを言ってくる。

 その横では白川が恐ろしい顔で俺を睨んでいた。

 今日だけで5年は寿命が縮んだだろう。


 いつものところにつく。まさかこんな大所帯になるとはな。机も椅子もあと2つしかない。


 「あ、お疲れ様です。」

 最奥の席では相変わらず北本が自習をしていた。


 てか教室の時もういなかったのな。影薄いすね。


 「で、そちらの方は?」

 「えっと、わたしは佐々木南です。この度はSSS部に新たに入部させてもらうことになりました。よろしくおねがいします!」


 元気ハツラツな挨拶だ。これまでこの部は比較的静かな人ばかりだったので、新鮮なような喧しいような・・・。


 「そうですか。私は北本雫です。よろしくおねがいします。」

 「はい。雫ちゃんね。よろしく!」


 北本がわかりやすく照れている。慣れない呼ばれ方だったのだろう。


 「俺はさっき言ったばかりだけど一応斉藤です。」


 「…白川香織です。」


 一通り挨拶を交わし本題に入る。


 「ところでこの部ってなにやるの?」

 「うーん、自分たちの好きなことかな。」

 「え、ちょー最高な部活じゃん。」

 「まあ、現状はちょっと違うけどな。」


 簡潔に創設の経緯を説明する。


 「なるほどー。じゃあ私はまさくんと遊んでいればいいんだね。」

 「え?」

 俺よりも先に白川が声を発した。


 「だってわたしやることないし適任でしょ。白川さんは編み物やってればいいじゃん。」

 「でもこれは私の仕事なので。」

 白川が慌てている。


 「お前最近編み物してなかったしちょうどいいじゃん。」

 「ほら、やっぱわたしが適任だ。」

 「でも私誰かに教えることも好きですし。」

 ああ、そうか。ところで最近ちゃんと編み物の道具を持ってきているのだろうか。


 「それより佐々木さんはさっきマネージャー志望と言ってたじゃないですか。SSS部のマネージャーになってくださいよ。」

 「こんな部活で何をマネージャーするのよ!あ、そうだね、まさくんをマネージメントするよ。」

 「もう、それは私の職務なんです!」


 ああ、埒が明かない。なんで俺にそんなに構うんだ。

 もしかして、こいつら俺のこと好きなのか?



 ・・・。

 まさか。そんなわけがない。俺がこんなトラップに引っかかるわけがない。

 何度も言うが俺はホコリであり小石なんだ。

 たしかにこいつらは優しいし変わっているので色々かまってくる。

 しかしそれは他の小石にも同様である。

 なんならもっといい形の小石にはさらに優しくしていることだろう。

 自分だけが、なんて思うなんて自意識過剰にも程がある。

 そういう意識は改めておかないと後々痛い目を見ると相場が決まっている。



 ・・・。

 自分の矮小さを確認している間にも二人は言い争いが止まることはなかった。


 こいつらが何をしたいのかわからんが、せっかく部活問題が解決したのに、部活体験最終日に空中分解というのは勘弁してほしい。



 「なにも俺と1対1じゃなくてもいいだろ。3人でやればいい。」

 「うわあ。」

 思わず振り返る。意外なところから不満が出た。


 「なんか問題あるか?ああ、もしかしてお前も北本も一緒に遊びたいのか。なら4人でいいぞ。」

 「「「はあ・・・」」」

 三人からため息が漏れる。俺の提案はそんなに的外れだったか?

 何を考えてるか全くわからない。だから他人と関わるのは苦手なんだ。


 「なんか、もうなんでもいい気がしてきたぁ。」

 「私もです・・・」

 え、丸く収まったのか。それは良かった。


 とにかくやっと部活が始められそうだ。

 各々席に着く。佐々木は俺の横に座る。


 さてと、いつものアレをやろうとしたとき、思い出す。



 そういえばアレの説明がまだだったな。


 「言い忘れていたが、実はな、この部活に入るには一つ条件があるんだ。」

 「そうなの?」

 「ああ。それは。」



 俺と白川と北本はスマホを準備する。



 「麻雀ができることだ。」








 「へ、麻雀?麻雀ってあのドンジャラみたいなやつ?」

 まあドンジャラが麻雀みたいなやつなんだけどな。


 「そうだ。できるか?」

 「やったことないよぉ…」

 「ああ、それは入部できないなぁ。残念だ。」

 「ちょ、ちょっとまって!覚えるから。覚えるから入部させて。」

 「冗談だ。でも俺たちはおそらくこれから毎日部活の最初に麻雀をやる。これは本当だ。」

 「じゃあ覚える!」

 「おお。入部決定。」

 「やったあ。」


 こいつの性格には多少ならず問題がありそうだが、知り合いだけで4麻ができるようになるのは非常に嬉しい。これまではメンツが足りずNPCを入れるか3麻だったけど、やっっぱ4麻の方が面白いし、対人ゲームは生身の人間とやるのがいい。



 ・・・。

 今日はいつもどおりの3麻をした。

 もちろん白川が勝った。しかも今日はいつにもまして容赦がなかった。俺は東場で飛ばされた。




 「じゃあ今日も将棋やるか。」

 「そうですね。」


 おそらく今週いっぱいで将棋講座は終わりだろう。別にここは将棋部ではないからな。色んなことをやる(やらされる)部活だ。主に俺が。


 「あ、将棋はできる!」

 「まじか。」

 「わたしもやりたい!」


 じゃあ俺と代わろう、と提案しようかと一瞬思ったが、そもそも将棋は俺のために白川が持ってきたゲームだ。俺が抜けるのはおかしいだろう。しかしさっき麻雀の時何もわかってなさそうな顔で俺の画面を見ていた佐々木に、また見とけというのは忍びない。



 どうしようかと悩んでいるところにまたも遠くから声が飛んできた。


 「トーナメントをやりましょう。部員も増えたことですし。」

 その手があったか。それなら全員ができる上に盛り上がる。


 「いいですね!やりましょう。」

 「おー燃えてきたぁー。」

 白川と佐々木も異存はなさそうだ。


 北本は早速くじとトーナメント表をノートで作る。



 抽選の結果、1回戦目は俺vs佐々木、北本vs白川となった。


 「よーーし、まさくんには悪いけどここで散ってもらうよーー」

 「そうやすやすと負けるもんか。」



 ・・・。

 やすやすと負けた。1週間の儚さを痛感する。


 「では次は私達ですね。」

 「麻雀の雪辱を果たしてやります。」


 こちらもバチバチに燃えている。北本に負けず嫌いの1面があることはなんとなく察していた。


 ・・・。

 ・・。

 ・。

 激戦の末、白川が勝つ。北本は心底悔しそうだ。



 「やっぱりあなたとは争わなければいけない運命みたいね。」

 「そうみたいですね。」


 ヒエッ。もう決勝のふたりは臨戦態勢のようだ。


 敗者二人が見守る中、試合が始まった。





 「のおおお、ちょおおっと、待ったあ!」

 「待ったはなしですよ。」

 「お願い!」

 「ダメです。はい、王手。」

 「のああああああ!」

 断末魔とともに佐々木の玉は散った。



 「相変わらず負け知らずだな。」

 「たまたま運が良かっただけですよ。」

 しかし、そういいながらも白川はいつもより嬉しそうだ。


 「でも、ほんと白川さんって勝負事に強いですよね。」

 北本も感心している。


 「あ~もう悔しい!かおりんもう1回やろう!」

 「か、かおりん?」

 「そう呼んじゃ、だめ?」

 「い、いえ、ダメというわけでは・・・」

 「じゃあいいよね。ねーえーかおりんもう一回やろうよぉ。」

 「え?ええ?」

 珍しく白川が戸惑っている。


 「諦めろ佐々木。こいつはとんでもないギャンブラーで勝負師なんだ。俺らの年じゃ敵うはずがない。」

 「同い年です!」

 「・・・そんなに強いの?」

 「ああ、こいつは強い。びっくりするほど強い。将来は有名なギャンブラーとして裏社会で名を馳せるだろうから今のうちにサイン貰っとけ。」

 「もうからかわないでください!」

 白川はすねてしまった。



 「そんなに強いんだ~。でもいつかもっと強くなって倒してやるんだから!」

 「そうね、一緒に頑張りましょう。」

 「うおっ、え、雫ちゃん!?」

 「私も過去に白川さんにボコボコにされたの。ううん、今日も麻雀でボロボロに負けたの。いつか、私達であの女を倒しましょう。」

 「うん!いつかわたしたちで悪を倒そう!」

 「なんで私が悪者みたいになってるんですか!?」


 共通の敵を見つけ、部内で友情が芽生えていた。






 その後も佐々木を中心に話で盛り上がっていたら、いつしか下校の時間になっていた。


 佐々木の入部届を提出しに職員室に向かう。その間も佐々木のおしゃべりは止まらなかった。


 「そういえばみなさんSNSやってます?」

 「「やってません。」」「やってない。」

 本当は漫画やアニメの情報を集めるためのアカウントを持っているが、ここでは伏せた。


 「へえ、今どき珍しいね。」

 たしかに珍しいかもしれないな。てかお前も最近始めたばかりではなかったか?


 「便利だからみんなもやろうよ。部活のグループとか作ってチャットとかしたらきっと楽しいよ。」

 「そんなこともできるんですか?」

 「うん。家にいても誰かと会話できて便利だよ。休日もお話できるし。」

 「便利そうですね。北本さんと斉藤くんもどうですか?」

 「私はいいと思います。部内連絡が必要な時が来るかもしれません。」

 「斉藤くんは?」


 えー、だるそう。第一、目を見てのコミュニケーションも苦手なのに文字だけの会話なんてもっとできそうにない。それに休みの日も通知が来たら学校のことを思い出して鬱になりそうだ。


 しかし、反対する勇気も正当な理由のなかった。



 「まあ、みんながいいなら・・・。」


 その後は佐々木が全員分のスマホで設定をしてくれた。


 俺にはちっともわからない世界なので少し感心した。佐々木に感心したのはこれが最初で最後になるだろう。

 



 校門に着く。いつしか雨はやんでいた。


 「わたしこっち。」

 自転車を押して歩く佐々木が指さした方向は俺の家の方角だった。


 「俺も。」

 「私も。」

 「えーーーー」


 つまり白川だけ違う方向である。




 「じゃあこれから私もそっちから帰りますっ。」

 「いやでも遠回りだろ。」

 「元々家が近いので問題ないです。」


 こうなったら白川は何を言っても考えを変えないだろう。


 

 自然と2対2に分かれて歩く。前では白川と佐々木が何かを話している。


 「なんだか賑やかになりましたね。」

 「ほんとに。少し喧しい気がするが。」

 「ふふ、そうですね。」

 「お前は勉強できそうか?」

 「まあ、やろうと思えばなんとか。」

 昨日の話を思い返す。



 「でも、まあお前も勉強ばっかやらずに俺たちと遊べよ。」

 「え?」

 「勉強しないことで学べることもあるかもしれないぞ。」

 「将棋とかですか?」

 「いや。もっと広いなにか。俺も知っているわけじゃないけどな。知らないけど、学校の勉強なんて世界のほんの一部だろうと思っただけだ。」


 「…そうですね、気晴らし程度に勉強したいと思います。」

 「お前はすごいな。」

 「いいえ、やりたいことがないだけですから。」


 佐々木はさっき北本と同盟を組んでいたが、俺も北本と同盟を組みたい気分だ。



 「じゃあ俺はここで。」

 「ここがまさくんの家なの?」

 「ああ。」

 「へえ~高校近くていいね。」

 「だからこの高校に入ったんだ。」

 「あはは、まさくんらしい。」

 「じゃあな、また来週。」

 「うん、またね~」

 「さようなら。」

 「また来週。」









 長い、とても長い1週間が終わった。






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