145. たいしてモテない男に限って女子を品評しがち
佐々木とのデート、そして北本からのメッセージがあったあの日からの1週間はとても疲れた。佐々木はいつもどおり気さくに話しかけてくるが、白川と順は口を開けば「デートは楽しかったですか」だの「ふたりきりでなにしてたの」だの聞いてくる。
それに対して「まぁ楽しかった」なんて言えば白川は「それは良かったですね、私には関係ないですけど」なんて言いながらすごい不機嫌そうな顔をしてくるし、「電車で遠くまで行っただけだけど」と答えれば順は「別にまあくんがどこで誰とどこまでナニしてようがどうでもいいけどね」なんてそっぽ向きながら返してくる始末だ。
特に怖かったのは佐々木が俺とのツーショット写真を自分のスマホの壁紙に設定しているのをふたりに見つかったときだ。この暴挙のおかげでそれを見た白川と順が俺に対してすごい剣幕で怒ってきた。俺はただ平謝りすることしかできなかった。
そのうえ北本はあんなメールを送ってきたせいで、かなり気まずいというか、何を言えば良いのかわからない空気が二人の間に流れていてた。北本はずっと勉強して逃げているが、日頃なんだかんだで勉強をやめて俺たちに混ざっていたおかげでむしろ不自然だった。
そんな俺達を白川と順が見逃すわけがない。あえて何かを言ってくることはなかったがおそらく、いや間違いなくふたりは察していた。
時間つぶしにする恒例の麻雀でも白川は一切容赦がなかった。俺がリーチしたら順と結託して千点で流すし佐々木からの当たり牌を見逃して山越しで俺から満貫直撃取ってくるし、あのときの白川の目は明らかに俺を飛ばすことだけを考えていた。
そんなこんなで迎えた次の週末。珍しく誰も居ない我が家の鍵を締め、俺は駅に向かって歩いていた。
俺はどうして2週連続で女子と待ち合わせをしているのだろうか。いつからこんな高貴な身分になったのだろうか。自分でもわからない。
しかし冷静に考えると、佐々木はまだしも北本は俺を呼び出したことに何かしら裏がありそうだ。先週佐々木がデートしたいと言い出した時妙に静かだなとは感じていたが、きっとその時からなにかを企んでいたのだろう。
少なくともあの北本が俺といちゃいちゃデートがしたいというわけのはずがない。
なぜなら北本が俺に好意を持つ理由がないからだ。そんな事を言いだしたら佐々木にも理由はないはずなのだが、いくら鈍感系主人公を装おうとしてもあいつは俺に幾許かの好意を持っていることは事実であろう。
でもまぁ北本と話が合うのは間違いがない。俺が関わる女子の中で誰が一番話していて気が楽かと聞かれたら北本と即答する。
ときおり、というか基本俺に厳しいが、根底にあるメンタリティは近しいものがある。
それは順もそうかもしれないが、順はなんだかかわいらしさがあってどうしても異性というを意識してしまう(別に北本がかわいくなくて女として見れないと言っているわけではない)。
北本が女の子という感じがしない理由は話し方が理由だろう。なぜ敬語なのだろうか。はじめの頃はまだ出会いたてということもあって敬語なのかと思っていたが、もう出会って半年経ってるのに未だに敬語である。別に敬語でも良いのだが、敬語で話されるとどうしてもかわいらしさは薄らぐ。
敬語と言えば白川もだが、あいつはかわいらしさが無いというよりもむしろ淑やかさを感じられる。順やその他の女子とは違うベクトルではあるがたしかにあいつには女としての魅力がある(別に北本に淑やかさが感じられなくて魅力がないと言っているわけではない)。
・・・。
・・。
・。
ま、まぁ、こんなふうなやつだから一緒にいても気が楽なんだろう。
そう思うことにしてスマホで時計を確認した。
今は集合10分前。今日は別に電車でどこかに行くわけではないが、待ち合わせの場所は佐々木と同じ駅前の噴水のある広場だ。
今日も土曜なので人通りはかなりある。
駅に入っていく人を見ながら北本の到着を待つとしよう。
・・・。
「お、お待たせしました・・・」
噴水の前でしばらく待機していると後ろから声がした。
「いや、待ってない・・・けど・・・」
北本の姿に俺は思わず息を呑んだ。




