144. 彼女がくれた1日
「今更だけど・・・デート、これで良かったのか?」
帰りの電車に揺られながらようやく手を離してくれた佐々木に問いかける。一応このデートは俺の『なんでも券』によって敢行されたものなので、実質俺の誕生日プレゼントだ。その分の仕事はできたのだろうか。
「うーーん、最後がなぁ」
「それは・・・ごめん」
せっかく参考文献から得た学びを無駄にしてしまった。
「なーんてね。すごい楽しかったし最高のデートだったよ!」
「・・・そうか」
佐々木は屈託なく笑う。それを見て安心する俺だった。
「だから・・・その、また次の誕生日もこうやって一緒に遠出してほしいな?」
そんなことを言いながら佐々木が俺の肩に寄っかかってきた。こんな時間だと言うのに車内にいる人はまばらだ。
「ああ、誕生日と言わずとも、またいつか行こう」
流れる夜景を見ながらそう答える。かくいう俺も楽しかった。だから別に強制とか頼まれる形ではなく普通に遊ぶ感じでまたこんな旅行ができたらいいなと素直に思った。
「やった!」
嬉しそうな声とともに佐々木の頭が揺れる。肩にかかる重さがなぜだか心地よく感じられた。
しばらくすると車内に人が増えてきた。
「そういえばしずくちゃんはあの券何に使うって?」
「まだ聞いてないな」
こっちから急かすのも変だからと思って何も聞いていないが、言われてみればまだ何も連絡がないし少し気になる。
「もしかしたらしずくちゃんもデートって言うかもね。」
佐々木は笑いながら冗談交じりに言う。
「それはないだろ。あの北本だぞ。誰ともデートなんか行かないだろ。ましてや俺となんて。」
てか北本ってデートとかそんな言葉知ってるの?
「・・・相変わらずだね」
はぁ、と佐々木はため息をついて呆れる。
「どういう意味だよ」
「別にぃ~・・・」
どういうことなんだよ。
まぁいいや。どうせたいしたことは考えてない。
しばらくしたら連絡が来るだろう。
俺たちの最寄り駅に着く。どうやら最後の路線では後半少し寝てしまったようで帰りはすぐだった。
「今日はありがとうね!」
佐々木が何でも券を掲げる。
「ああ、てかまだ持ってたのか」
「写真あとで送ってね」
「ああ」
そう言えば。
「ってかあの写真消しとけよ!」
「あはは、どうしよっかな~」
絶対消さないなこいつ。
「じゃあね」
「ああ。また月曜」
佐々木は駅の自転車置場の方へ歩いていった。その背中が見えなくなるまで見送る。
・・・さて帰るか。家のある方向に向き直る。
電車を降りてからどっと疲れが出てきた。特に足が痛くて仕方がない。
「・・・」
どういう一日だったかと聞かれると一言ではなかなか言い表せない。
だけど今日一日はとても楽しかった。
ありがとう佐々木。
今日という日は彼女から色々なものもらえた一日だった。
その日の夜だった。
疲れたし今日は早めに寝ようなんて思っていたタイミングで俺のスマホが震えた。
スマホ画面を見る。
「・・・え」
俺は目を疑った。
ロック画面の通知にはこう書いてあった。
『From: 北本
私とデートしてください』




