141. 街ブラロケみたいなデートしてんな君たち
交差点からしばらく歩いて俺は看板に漁港の文字を見つけた。
「そうだ、海鮮丼なんてどうだ?」
隣の佐々木に提案する。
「いいね!きっと漁港の近くに食堂とかあると思うし」
昼飯の内容が決まった。だいたい俺たちの年齢で飯に決めあぐねた場合、自動的にラーメンになることが多いが今回は土地柄にあった良い飯を思いつけた。
それから程なくしていい感じに古びた、やっているのかやっていないのかわからない感じの町の食堂という雰囲気をまとった実に今の俺たちの探し求めていたような個人経営の食堂を見つけた。
暖簾をくぐるとこれまた想像したような手書きのメニューが壁に貼ってあったり、いまだに机の上に灰皿があったりするような期待通りの風景が広がっている。
とりあえず営業中であったことに安堵して手近な椅子を引き佐々木と向かい合わせ座った。
刺し身定食と海鮮丼のどっちにしようかと一瞬迷ったが初志貫徹ということで俺は海鮮丼を頼むことにした。
「お前は決まった?」
「わたしも海鮮丼で」
すいませーんと佐々木が厨房の方へ人を呼ぶ。
「海鮮丼2つお願いします!」
「はいはい」
おばあちゃんに一歩足を踏み入れているおばちゃんに注文を告げる。
「海鮮丼って具はなんだろうね?」
佐々木は期待に声をはずませる。
「なんだろうな、きっと旬の魚だろう」
「さんまとかかな?」
そんな他愛もない話をしながら海鮮丼の到着を待っていた。
「ごちそうさま!」
びっくりするほど美味しかった海鮮丼とそれに引けを取らない衝撃的な美味さのあら汁を食べ終わり、俺たちは席を立つ準備をする。
「これからどうする?」
財布を出しながら佐々木にこれからのことを聞く。
「なんとも微妙な時間だね」
「ああ」
ただいま2時を少しまわったところ。帰るにしては早いが、遠出はできない。まさに微妙な時間である。
「おふたりは旅行でここに来たの?」
器を取りに来たおばちゃんに話しかけられる。
「そうです!日帰りですけど」
にこにこした佐々木がフレンドリーに返事をする。
「昔はよく夏になればあなたたちくらいのカップルが来ていたんだけどねぇ。最近はめっきり見なくなったねぇ」
「そうですかー。そうだ、なにかおすすめの観光地とかありますか?」
「そうだねぇ、やっぱりここは海の街だからどこかと言われたら海かねぇ」
そう言い残して器を下げていった。
「あ、お勘定お願いします!」
お金を払って俺たちは食堂を出た。
「どうしよっか」
店の前の自販機で飲み物を買いながらこれからの行き先を考える。
「特に行くところもなさそうだし、まぁまったり海岸線を歩くか。」
俺は漁港の方を指す。まぁあんな話をされたら海を見たくなるし、それに腹ごなしにまったり海を歩くのも気持ちが良さそうだ。
「そうだねぇ」
佐々木も異議はないようだ。
俺たちは海に向かって歩き出す。
「お前、さっきのばあさんの口調移ってるぞ」
我慢していたがどうしても指摘せずにはいられなかった。




