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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第9章 答を出すには早すぎる
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139. 異世界転生(乗り換え数回)



 「ところで俺デートとか言われても何すればいいかとかなんもわからんけどいいの?」

 強いて言えば1クールに1本は見ているラブコメアニメと、たまに妹から拝借する少女漫画と、あまり大きな声で言えないような年齢を対象にした恋愛シュミレーション(笑)ゲームなどからは男女のデートシーンをいくらか見たことがある。が、それだけである。つまり何も知らない。


 「いいのいいの!こういうのはその時の成り行きのほうが楽しいから!」

 事前のやり取りで俺のデートプランニング能力の欠如についてはカミングアウトしていたが、その時も大丈夫とだけ返答があった。

 まぁ主役の佐々木がそう言うなら俺は構わない。

 性格上成り行きでの行動というのはほとんど経験していないが、まぁそれこそなるようになるだろう。

 「じゃあ適当にどこか行くか」

 そんなわけで俺たちは何のあてもなく駅の改札へ向けて歩き出した。


 そうして俺たちは何も考えず佐々木が地図で適当に指差したホームに来た電車に乗った。なんとも適当なデートである。

 普段あまり使わない路線に少々の不安と不安からくるワクワク感を感じながら休日とは思えないほど人が少ない車内でふたり並んで座る。

 車窓も全く見覚えのない景色が続いており、はやくもデートなのか流浪の旅なのかわからなくなってきた。

 「なんかドキドキするね」

 佐々木は外の景色を見ながら目を輝かせている。

 「ああ」

 かくいう俺もそれなりにドキドキしていた。相手が佐々木と言えど(失礼)、やはり高校生男子にとって同級生の女子とふたりでどこかに行くというのはなかなかに胸躍るシチュエーションである。

 あまつさえこの列車の行き着く先に何があるかわからないと来た。

 この状態に緊張しない人などいないだろう。

 「お前日頃もこんなふうに適当にどっか行くみたいなこと結構すんの?」

 旅の同伴者にこのデート内容を聞かされて以来ずっと訊きたかったことを訊いてみた。

 「うーん、そうだね。休みの日にたまに自転車で知らない街までサイクリングしたりはしてるね。」

 ほう。やっぱり佐々木は俺達のグループの中ではアウトドア寄りなんだなぁ。他がインドアすぎるということもあるかもしれないけど。

 「まぁ電車は初めてだけど」

 てへへという感じで笑う。

 なるほど、日頃行っている行ったことのない土地探訪の電車バージョンをこの機会に俺としようと思ったわけか。


 「いい趣味してるね」

 俺は素直な感想を述べる。実際今この状況を楽しんでいる自分がいる。

 知らない街。未体験のこと。自分以外の人がそういうものに触れる機会を与えてくれるのは貴重である。

 そういうことはなかなか自分ひとりで始めてみようというふうにはならない。たいてい外的な要因がきっかけとなる。

 そういうきっかけはほしいと思っても自分の意志ではどうにもならないものである。

 だから佐々木みたいに、趣味とか生き方が別世界の人との交流はありがたい。

 ・・・なんていつからこんなに変化を楽しめるような余裕が出てきたんだろうか、俺には。

 「えへへ」

 佐々木は嬉しそうである。

 「なに笑ってるんだよ」

 「だってまさくんが楽しそうだから」

 「・・・」

 どうやら表情を隠せていなかったようだ。実に恥ずかしい。

 「お前だって楽しそうじゃん」

 照れ隠しに言い返す。

 「えへへ、そう?」

 「ああ」

 「それはきっとこんな風に休みの日にもまさくんと一緒にいられるからだよ」

 「・・・」

 思わず視線を外す。こいつ、よくもまあそんな恥ずかしいことを堂々と言えるな。そういうところほんとにすげーと思うわ。恥ずかしいセリフ禁止。



 そのまま俺たちは勉強の話や兄弟の話など他愛もない話をしながら佐々木の持ってきたお手製クッキーを食べつつ鈍行を乗り継ぎ、聞いたこともないような終着駅で電車を降りた。

 そこはこれまで全く聞いたこともないような名前の駅だった。

 その駅舎の古めかしい佇まいに異世界に来たような錯覚を覚えた。

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