137. 長考に好手なし
放課後、部活動の時間が始まる。今日は事前の話し合いで昼休みの集合は休みになっていた。
いつもと変わらない雰囲気で俺たちは図書室に集結する。
遅れました~、と言いながら荷物を持った白川が10分遅れくらいで図書室に到着して全員が集まった。
いつもどおり机の周りにみんなが座る。
「・・・」
「「・・・」」
俺、白川、順は視線を合わせる。
「???」
俺たちを見て佐々木ははてなという顔でキョロキョロする。
「佐々木さん、北本さん、誕生日おめでとうございます!」
パン、パパンと音がなる。
「わぁ~」
俺たち三人が鳴らしたクラッカーに佐々木が拍手する。それに合わせて北本も優しく拍手していた。
「私と白川さんふたりからプレゼントがあります!」
そういって順が机に白い箱を出した。
え、ちょっと、ふたりの合同プレゼントって聞いてないんですけど。今から俺も一緒に用意したってことにしてくれませんか?
「わぁ~~~ホールケーキだ~~~!」
「・・・」
俺も開かれた箱の中身を見ておお、と声を出す。
売っていたものと言われても信じそうなくらいのクオリティの色々なフルーツが乗ったケーキが出てきた。なるほどこれを家まで取りに行っていたから遅れてきたのね。
「ありがとう~かおりん!順ちゃん!」
「ありがとうございます」
ふたりともかなり喜んでいるようだ。
白川が各人にケーキを取り分ける。もちろん主役ふたりの分は多めである。
学校の木目丸出しの机の上にケーキが並ぶというなんとも異質な見た目がなんとも面白いが、これはこれで一周回って逆におしゃれな感じがしないでもない。
「「・・・」」
白川と順からアイコンタクトを食らう。
なるほど、たしかに俺がプレゼントを渡すならこのタイミングが良い。
しかし、こんなに出しにくいタイミングがあるだろうか。
・・・いや、そんなことを言っていても仕方がない。何より悪いのは俺だ。
決心したとおり覚悟を決めて正直に言おう。
「・・・こんな素晴らしいケーキの後に出すのはいささか心苦しいのだが、俺からもプレゼントが・・・」
「ほんと?」
「・・・」
佐々木はあからさまに、北本も静かにこちらに期待の視線を向ける。
「ある、予定だった。だけど、ごめん。俺、女子にどういうプレゼントを送るのが正解なのかわからなくて・・・。」
そう言いながらノートの切れ端を渡す。
戸惑いながらもふたりはその切れ端を受け取る。
「『なんでも券』?」
その切れ端には俺ができるだけきれいに書いた『なんでも券』という文字だけがあった。
「その・・・もうわからなかったからお前らに決めてもらおうと思って。なにか欲しいものでもしてほしいことでもなんでもいいから俺に言ってくれっていうそういう券なんだけど、ごめんな、こんなものしか思いつかなくて」
さっきのケーキのときとは明らかに違う空気が漂っている。
「・・・」
「・・・・・・」
プレゼントを受け取ったふたりは何も言わずにじっと券を眺めている。
「まぁいつでもいいからなんか言ってくれ。なんもなかったら適当に一回食堂おごれとかでもいいから」
さすがにいたたまれなくなって声を出してしまった。
「なんでも、ねぇ・・・」
「なんでも・・・・・・」
困惑しているのかなんなのかわからないが、ふたりは何度もその券を見ては内容を復唱している。
「有効期限は?」
「え?あぁ、そうだなぁ、じゃあまぁ1ヶ月で」
佐々木が真剣な顔で聞いてくる。
「なんでも、いいんですよね?」
「え?うん。俺ができる範囲なら・・・あんまり無理難題とか持続的なものはやめてほしいけど・・・」
北本もいつになく真剣な眼差しをしている。
なんだか佐々木と北本の目が真剣で怖い。
こいつら俺に何をさせようとしているんだろうか・・・
とにかく俺のターンは終わった。
ちらりと白川・順の方を見る。
「・・・」
「・・・」
いや、なんでお前らも真剣に券を見つめてるんだよ・・・。
俺は席に座る。
とりあえずプレゼントを渡すというミッションは完了した。
しかし俺はこのときは考えてもいなかった。
ふたりの券の使い方を・・・
「じゃあわたしとデートして!」
空気が、止まった。




