13. カオスの幕開け
放課後になった。正直今日は無駄に疲れたので部活もなんなら休みたかったが金曜日ということでなんとか自分を奮い立たせた。
白川の準備を待っていると不意に悪寒がした。
「まーさくーん!」
後ろの扉から何かが聞こえてきた。う、嘘だろ。嘘だということにして無視することにした。
しかしこちらには退路がなかった。教室に入ってきた佐々木に肩を掴まれる。
「もーう、なんで無視するのー?」
「あ、いや」
「あの、そちらは?」
準備の終わった白川が聞いてくる。笑顔のはずなのに目が笑っていないように見えるのは気のせいだろうか。
「いや、ええと、その、ちょっと知り合いで・・・」
「違うでしょー。わたしはまさくんのはじめての人だよ。そしてわたしにとってもはじめての人・・・」
クラスの空気が凍る音がした。終わった。今度は俺が図書室で泣く番だ。
「へえ・・・ずいぶんと仲がいいんですね。」
白川が怖い。怖い。
「い、いや誤解だ。こいつは俺の初めての友達を自称しているだけだ。てかお前の初めてってなんだよ。」
「そ、そんなことここでは言えないよ。もう・・・」
「へえ…」
「い、いや待て。違うんだ。」
「早く部活行こうよ。」
「もうお前は黙れ。てか部活行くってなんだよ。」
「わたし野球部のマネージャーになることにしたの。」
「は?なんで。」
「だってまさくんが野球部って言うから。」
今日2度目の時間停止。週末が終末に変わった瞬間だった。
「斉藤くん、これはどういうことが説明してもらえますよね?」
「ああ、説明する。だから殺さないでくれ。こいつがうるさいから適当にあしらおうと嘘をついたんだ。そしたらまたわけもわからないことを言い出した。」
「私との関係は嘘だったの?」
「お前は一旦黙れ。な?」
「斉藤くんがいつも昼休みに図書室に行っていたのは女の子をいちゃつくためだったんですね。」
「違う違う。こいうとは今日初めて話したんだ。」
「1日で随分と仲を深めたんですね。」
「ただ、ただ話しただけだ。頼むから信じてくれ。」
「まさくんの口技に負けちゃった。」
「口を開くな。」
「そうですか。」
「怖いからその笑いやめて。」
「てかさっきからその女誰?まさくんのなんなの?はっ、もしかして彼女?」
「えっ、ち、違いますよ。もう。」
白川の表情が一瞬和らいだように見えた。
「そう。ならもう口出さないで。」
ただの幻覚だったようだ。
「斉藤くんとは同じ部活なんです。」
「ええ。あ、そういえばまさくんほんとはどこの部活なの?」
「・・・SSS部だ。」
俺は観念した。
「そんな部活あったっけ?」
「新しく作ったんです。私と斉藤くんで。」
その倒置法要りますか?
「えーずるい。じゃあ私もその部に入るー。」
さよなら安寧の学校生活。図書室に行く前に教室で泣き出しそうだ。
「だ、」
ダメとは言えない真面目な白川。
「じゃあ、決まりだね。」
白川は名状しがたい表情をしていた。
ちなみに俺は屍のような表情をしている。
白川と佐々木に挟まれ、まるで捕獲された宇宙人の如き体勢で教室から連れ出された。




