134. スタンド・バイ・ミー
教室に帰る間佐々木と順が談笑する後ろで俺と北本は並んで歩く。こんなふうに北本と並んで歩くのも久しぶりだ。
「斉藤くん」
北本が話しかけてくる。
「私は斉藤くんのしたことは間違っていないと思いますよ。」
北本の指すものはさっきの話のこと、つまり俺が文化祭の時にクラスの女子に啖呵を切ったことを指しているのだろう。
「俺があっていようが間違っていようがどうでもいい。白川さえクラスから浮いていなければ。」
少しぶっきらぼうに答える俺。
そう、俺は別にクラスの女子にどう思われようが、それにより不利益を被らない限りはどうでもいいのだ。
だが白川は違う。白川の努力が正当に感謝するどころか無下にされた挙げ句白川本人が虐げられるようなことは絶対に許せなかった。なぜなら俺は白川の頑張りを、陰の努力を知っているから。
俺は女子に好かれたいとも思っていない。もちろん嫌われたいとも思っていないが、白川が嫌われるくらいなら俺が嫌われたほうが何倍も楽である。
「それは大丈夫だと打ち上げでわかったでしょう。」
確かに北本の言うように文化祭の後の打ち上げでは白川はみんなに謝られて、それを白川は笑って許して、その後は普通に談笑していた。
今もクラスの女子とご飯を食べていることからもそういった種類の心配はしなくても大丈夫そうだ。あくまで俺からの視点での判断だが。
「まぁ、な。それだけで少なくとも俺のしたことは大間違いではないだろうしそれでこの話は終わりだ。」
実際俺も女子たちに多くの反感を買っている、ということはないと思う。それは俺達のクラスの女子の性格が素直だからなのか、それとも他の男子にヘイトが集中しているからなのかはわからないけど、とにかくそこまでの敵意は感じないし、なんならメイド服制作のせいか文化祭前より気軽に話しかけられるまである。
つまり俺のしたことってのはわざわざ取り上げることでもない、要するに取るに足らない些細なことなのだ。
だからこの話はそれで終わりだ。
「はい。でもこれだけは伝えさせてください。私は斉藤くんのしたことは正しかったと思います。」
・・・さてはこいつそれを言うためにこの話題をわざわざ出してきたな。
「お前に褒められても嬉しくねえよ。」
なんだかメイド服を作っている時に北本に同じようなことを言われた気がするが、俺には別に仕返しとかそういう意図はない。
「まぁまぁそんなに恥ずかしがらずに素直に受け取ってくださいよ。」
珍しく北本のいたずらっぽい笑顔が見れた。
クラスに入り俺たちは離れて席に着く。そう言えば席が替わったんだった。
「はぁ」
一息つく。
・・・。
北本の言葉を反芻する。
「・・・そうか」
珍しく素直な北本の言葉に、俺は少し救われてような気がした。
少なくともひとりは俺のしたことを正しいと言ってくれる人がいる。
それだけでも随分楽になるものなんだな。
俺は教科書を出して授業を聞き始めた。




