133. その 穏やかな日常に…
「なんかこうやって集まるのも久しぶりな感じするね」
夏休みやら文化祭のおかげでまるで1年ぶりではないかと思えるくらい久しぶりに昼休み図書室部の民が集結した。
「これまでは何してたの?」
昼休み図書室部初参加の順が俺達に聞いてくる。
・・・そうか、順はテスト期間じゃない、何もないときの昼休みに参加したことなかったか。
言われなければ順が初参加なの絶対に気が付かなかった。
まぁ夏休みにそれだけ馴染んだということだから悪いことじゃないと思うが、内心かなりびっくりした。
「佐々木のお菓子食べてだらだらする、とか?」
「私は勉強です」
「わたしもまさくんと同じかな」
順番に答える。
「・・・まぁなんていうか予想通りだね。」
順は苦笑い。これだけ聞けば何の集まりだかちっともわからない。俺たちにもわかってないけど。
「かおりちゃんは?」
「あいつはクラスのお友達となんかしてる」
「ああ・・・」
なにかを察する順。そう、普通の交友関係を築いている人は休み時間にこんな辺鄙な場所に避難したりしないのだ。つまり俺たちは普通じゃ・・・いや、わざわざ言うのはやめておこう。
「わ、わたしはクラスに友達いるよ!?」
佐々木も何かを感じたらしく慌てて訂正する。
「俺はいないけどな。」
「私も。」
「わたしも」
訂正のない3人も一応その旨を伝える。順が来たことによりこちらの軍勢はよりその力を増したのだ。ここでは佐々木、お前がマイノリティだ。
「ま、まあお菓子でも食べよう!」
ぼっちじゃないせいで孤立するという珍妙な状態を俺は面白く感じていたが佐々木は気まずかったようで話の転換を試みる。
それもなんだか面白くてつい笑ってしまう。
ちらりと2人の方を見ると2人も少し笑っていた。
ああ、穏やかな日常が帰ってきた。そう実感できた。
佐々木のお菓子を食べながら俺たちは自然と文化祭の思い出話をしていた。
「刻の猫耳なぁ、なかなか似合っててびっくりした。」
「えーわたしも見たかった〜」
「俺もたまたま見かけて入ってみたからな。あんなに面白いことしてるなら事前に教えてくれりゃよかったのにな」
「わたしは事前に聞いてたよ。でも絶対に他の人、特にまあくんには言うなってときちゃんに口止めされてた。」
順が楽しそうに面白い事実を教えてくれる。
「じゃあ順ちゃんがまさくんに教えたって思われたんじゃない?」
「うん。帰ったら『順、あのことあいつに教えたでしょ!』って。でもわたしはなんのことかわからないから『なんのこと??』ってなったよ」
「なかなかいいものが見れてよかったと今度言っておいてくれ。」
「そう言えば2組のメイドカフェは随分繁盛していたらしいね。クラスの子が驚いてたよ。」
「そうらしいな。」
「なんか学年中の男子が集まったとか言って呆れてたけど。」
「ああ、あれなぁ。俺も知らなかったんだけど、どうやらうちのクラスの男子がシフト表をばらまいたらしくて白川のいる時間に人が大量に押し寄せたらしい。」
「さ、さすがかおりん・・・」
「さすがだね・・・」
佐々木と順は苦笑い。しかしこの話を聞いて有りそうな話と思わせる白川は本当にさすがという言葉しか出てこない。
「おかげで今うちのクラスの男子は人権を失ってる。」
「まさくんは大丈夫なの?」
「まぁな。実際知らなかったし。」
「斉藤くんは違う意味合いでクラスの女子に扱われてますもんね」
思わぬ方向から声が飛んでくる。声の主はもちろん北本だ。こいつが勉強しながらこっちの話を聞いているのはこれまで何度も経験しているので俺は驚かない。
「まぁ、な。」
「そうなの?」
「なんかあったの?」
「大したことじゃないよ。他の男子と違って俺はずっとクラスに関わっていたからな。」
そうなんだ、と言う佐々木と順。その表情から続きが気になっていたようだが俺の言い方で気を遣ってくれたのか、それ以上聞いてくることはしなかった。
「そろそろクラスに戻るか。」
時間も来たので話を切り上げ図書室を後にする。




