129. 嫉妬がかわいいのは一部のフィクションだけらしいね
さっきまでとは打って変わっていつも以上の落ち着きに包まれた校舎を歩く。もう校舎にはほとんど人が残っていないようだ。
「大丈夫か?」
おそらくもう元気いっぱいであるとは思うが、一応病み上がりの白川を気にかける。
「・・・」
しかし返答はない。またしても黙りこくる白川。
「どうした?」
「あのっ、腕、掴んでもいいですか?」
「え?」
俺の答えも聞かずに白川は俺の右手を抱くように掴んできた。もうこいつの甘えん坊はとまらなくなっちゃったのか?
「だ、誰かに見られたらどうすんだよ」
さっきも大概恥ずかしかったが、流石に人に見られたらそんなレベルではないので照れ隠しにそんなことを言う。
「きっともうみんな校庭にいますよ」
たしかにそうだろうが、そういうことじゃなくてだな・・・。なんで今日はこんなに積極的なんだよ。
「む、むしろ歩きにくいだろ。」
苦し紛れに言い訳をする。
「・・・嫌ならやめますよ?」
しかし白川にはお見通しのようだ。
「それは卑怯だろ・・・」
だって嫌なわけないじゃん。
「なにがですか?」
わかっているくせにとぼけやがって。もうこいつが何を思って何を考えているのはなんにもわからなくなってきたわ。
わからないといえばもうひとつ気になることがあったしこの機会に聞いてみるか。
「第一お前ずっと怒ってたんじゃないのか?俺のこと。」
「あぁ、そう言えばそうでしたね」
あ、もしかして余計なことを言ってしまったか?
どうやら忘れていたはずの白川の怒りが戻ってきたようで俺の腕をつかむ力が強くなった。てか離してはくれないのね。
「斉藤くんは私がなんで怒っていたかわかってるんですか?」
「・・・」
わかっていたら聞くわけがない。わからないから聞いているんだ。
もちろん色々考えた。考えたんだけど思い当たる節がないんだよなこれが。
考えた結果の唯一の候補は・・・
「お前の・・・・・・パンツ見たことか・・・?」
「・・・・・・」
違ったようだ。
「すまん、わからん。」
呆れたような目でじとーっと俺の目をじっと見てくる白川。
「はぁ、もういいです。あなたがそういうところで鈍いことはわかってましたから。」
「???」
やっぱりわからない。
「よくわからんが許してくれるのか?」
「うーん、そうですね。次の質問次第では許してあげます。」
はぁ。正直このやり取りの要領を得ていないが素直に従う。
「斉藤くんは私のことクラスの女の子の中で特別に想ってくれてますか?」
「・・・そりゃあ、まぁ。」
クラスで気兼ねなく話せる女子は白川と北本くらいだし。
それに他のやつらよりはかなり優しいし、かなーーりかわいいし。
まぁ今日の事件を受けて少し優しすぎるのではと思わなくもないが。
「ほんとですか?」
「ほんとだよ。女でこんなに気楽に一緒にいられるやつは家族以外でお前が初めてだ。」
こんなに俺の人生深く関わってきたやつはこいつが初めてだ。多分。
「・・・・・・」
白川は何も答えずそっぽを向く。何か俺の答えは良くなかったのだろうか。
「・・・そうですか。まぁ今回は許してあげしょう。」
深呼吸してから普段の北本のような口調で白川がそういった。どうやら許されたらしい。
「まぁ特別度で言えば北本も同じくらい特別だけどな。」
話を一段落したようなので一応このこともさらっと付け加えておく。俺がクラスで気兼ねなく話せるのは白川と北本だけだ。
「・・・」
「いててててなにすんだ」
白川が腕を思いっきり引っ張ってきた。
「・・・」
何かを訴えたそうな目で見てきたが、すぐそっぽを向いてそれ以来白川は何も喋らなくなってしまった。




