123. CV. 竹達○奈
二日目となっても相変わらず俺に仕事はなかった。もしかしたら雑務係というのは前日までの限定役職だったのかもしれない。
まぁ二日目ともなると勝手もわかってきてそんなに忙しくもないのだろう。そもそもクラスに居る生徒の数が昨日に比べて少ないように見える。
だがクラスの端でぼーっとしているとひとつ思いがけないことが起こった。
なぜか白川が朝からクラスで忙しそうに働いている。
それだけならまだわかるが、そのままウェイターとしてクラスで接客をはじめたのだ。
俺はシフト表を確認する。
やはり今は白川のシフトが入っている時間ではない。
そのはずなのに当然のように白川は朝から支度をして今も誰よりも働いている。
なによりクラスの女子の雰囲気がなんというかあまり和気藹々という感じではないように見えた。
クラスを後にし、廊下を歩きながら文化祭が始まってから何度開いたかわからないしおりを開く。
さてどこで時間を潰すか。
昨日の反省を踏まえ一応ラノベをカバンに忍ばせては来てるが、ラノベを読むなんていつでもできる。わざわざ文化祭の日に読む必要もないし、一応色んな所を見てみようと思っているわけだからこれは最終手段として取っておこう。
出し物一覧を見る。
そういえば昨日はすっかり忘れていたが刻のクラスは何をやっているのだろうか。というかあいつって何組なんだろう。
とりあえず暇だし1組から見ていくか。
えーと1組は・・・猫カフェ?
学校に猫を持ち込んでいるとは思えないし、なんならちょっと想像もつくけど一応どんな風に実現しているか見に行ってみるか。
お昼時ではないということもありそこまで混雑はしていないようなので、例によってドアのガラスから中の様子を見る。
「・・・。」
予想通り、と同時に予想以上にとても面白いものが見れそうなので気を弾ませながら扉を開いた。
「いらっしゃいませにゃ・・・ん・・・・・・」
俺は笑いをこらえながら猫さんに挨拶する。
「よ、よお、刻」
「あ、あ、あああんた!!なんで来たのよ!!!!」
顔を真っ赤にしながら激昂しているのは猫耳を付けたエプロン姿の刻だった。
「暇で覗いてみたらなかなか面白いものが見えてつい。」
「つい、じゃないわよ!」
「どこ座れば良いんだ?周りの客が注目してるぞ」
実際、刻の馬鹿でかい声のせいでかなりの視線を集めているのを感じる。
「ちょっ、あんた本気?」
「コーヒーかなんか飲んだら帰るよ。」
案の定歓迎はされていないようだ。
「まったく、なんでよりにもよって私の時間に来るのよ・・・」
「お前がいなかったら入ってないけどな。」
知り合いがいるとか、やたらかわいい娘がいるとかじゃなけりゃ入ろうなんて思わない。
・・・って3組に集まってる奴らと似たようなことを考えてしまった。男って単純ね。
「は、はぁ?どういう意味よ・・・」
刻はなぜか驚いている。もしかして俺とお前の関係って知り合い未満だった?
「どういう意味って、お前に会いに来たんだよ。」
「へ?な、なんでそんなことを・・・」
なに照れてるんだこいつ。
「なんでって言われても・・・」
「・・・」
「暇だったから?」
「さっさと飲んで帰れ飼い主様。」
メニューを叩きつけながらよくわからない捨て台詞を残して刻は去っていった。
時間は正午少し前。思いの外時間は潰せなかったが刻の面白いところを見れて満足した俺は、自分のクラスの様子を一瞥した後グラウンドに移動して昨日座っていた花壇のへりに座って屋台で買ったフランクフルトを食べていた。
今日もグラウンドのステージではなにかの演劇をやっているみたいだが、途中からなので話がちっともわからない。
ふと空を見上げる。
秋晴れと言うにはまだ幾分早いかもしれないが、なかなかに爽やかな天気だ。
流れる雲をぼーっと見つめ、場の喧噪に似合わず牧歌的な気分でフランクフルトの最後の一口を食べた。
さてこの串はどこに捨てたら良いんだろうなんて思いながらも、なんとなく立ち上がるのが面倒に感じたので串を咥えながらクラスのある校舎の方に目をやる。
「・・・」
スマホを見ると、部活メンバーのグループの通知が来ていた。
内容な佐々木がみんなの今日の予定を聞いていて、それに対して各々が返信しているというものだった。
串を口で動かしながら白川の返信内容を読む。
『ごめんなさい。今日も忙しくていつ抜けられるか・・・』
アプリを閉じる。
どうやら昨日の昼からなんとなく感じている違和感について今一度しっかり思いを巡らしたほうが良さそうである。




