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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第8章 間違う季節の過ごし方
123/241

119. その男、無教養につき



 クイズ大会主催者の説明によると、4択クイズを5問出題されるのでそれらを正答すればよいらしい。個人プレイでもチームプレイでも良いということなので俺達はチームで挑むことになった。


 「合宿の時はまさくんがバシバシ答えたんだよー」

 司会者によるルールの説明が続いている中、佐々木が順と刻にそんなことを言い出す。

 「そうなんだ!」

 「あんたがぁ?ほんとに?」

 かわいらしい順と、ちっともかわいらしくない刻が同時に俺の方を向く。

 「ま、まぁな。」

 そういやあのときはたまたまクイズ番組で見た内容ばかり出てきたからバシバシ答えていたような気もしないでもないので否定はしなかった。というか今思うとそれって問題作成者が同じ番組を見ていたってだけなんじゃないか?


 「じゃあわからない問題があったらまあくんに聞けば大丈夫だね!」

 順がキラキラした瞳を向けてくる。

 「ま、まぁな。任せとけ。」

 正直そんな自信はないが、そんな目を向けられたら男としての意地でこう答えるしかない。

 「ほんとに大丈夫なんでしょうね?」

 刻は未だに疑っているようだ。

 「ああ。ここにいる誰よりもクイズ番組を見てる自信はある。」

 だからよくある問題なら大丈夫だ。

 

 『これでルール説明を終わります。』

 司会者の締めの言葉が聞こえた。

 『今回は文化祭ということで、問題は高校の知識を問うもののみとなっています。高校生の皆さんなら全問正解できて当然ですよね。』

 司会者の最後の言葉にあたりで笑いが起こる。

 「・・・ほんとに大丈夫なんでしょうね?」

 「・・・すまん、順。俺が順に頼ることになりそうだ。」

 「えーー!?」

 なんとも情けない男である。



 

 『早速行きますよ〜!第一問!』

 さっきの一言で戦意を喪失した俺とは対照的に、俄然やる気になっているのは北本である。

 いや、もちろん本人がそういったことを口にしたわけではないが、なんというか立ち居振る舞いがやる気に満ちている。多分本人は気付いてないだろうが。


 『まずは国語の問題。歴史書『四鏡』のうち最も成立が新しいものはどれか。』

 画面には大鏡やらなにやらよくわからない鏡の種類が書かれている。

 俺と刻は他のチームメイトの表情をうかがう。

 「えーっと、どれだっけー」

 「なんか語呂合わせがあったような・・・」

 佐々木と順は考えてはいるが思い出せないようだ。

 「あー思い出せない!ふたりはわかってるんでしょ?教えてー」

 佐々木は残り二人、つまり白川と北本に答えを求める。そう、このふたりは明らかに余裕のある表情をしていた。

 北本と白川がアイコンタクトを取る。

 そして2人は『増鏡』と書かれたCのエリアに向け歩き出した。

 「かおりちゃん、語呂合わせなんだったっけ。」

 「大根水増し、ですか?」

 「あーそれそれ!」

 「それだぁ。ふたりともよく覚えてたね。」

 前で四人が盛り上がる中、なんの役にも立たない金魚の糞の俺達2人は何も言わずみんなの後ろをついていく。

 「あんた知ってた?」

 「いや、全く。なに大根水増しって。二郎系?」

 「それは違うでしょ。」

 「・・・」

 俺はまた自分に情けなさを感じるはめになった。


 

 『まだまだ行きます!第二問!』

 せめて漢字でも来てくれれば俺も戦えるんだけど。

 『王水は何と何の混合液でしょうか?A.塩酸と硫酸 B.塩酸と硝酸 C.硝酸と硫酸 D.炭酸と酢酸』

 ああ、化学ね・・・。

 王水という名称に聞き覚えはあるが、それが何からできているかは全く覚えてない。

 「お前わかった?」

 「なんとなくDじゃないと思う。」

 「俺もそう思う。」

 なんか他のと毛色が違う気がする。というかそれってただのお酢の炭酸割りじゃない?

 「3分の1だね」

 「俺達だけならな。」

 「そうね、でも・・・」

 そう、俺達はふたりじゃない。

 「わたしわかるよ!教科書に書いてあった!答えはB!」

 佐々木が嬉しそうにに手を挙げながら答えた。

 「私もBだと思います。」

 北本の同意の声に他2人も頷く。どうやら答えは出たようだ。


 

 『少し減ってきましたか?では折り返しの第三問!』

 ぱっと見半分くらいになった参加者の中に俺達は残っていた。

 正直俺と刻はここにいていいのかわからないが、これもチームプレイということで許されると信じたい。

 『十八角形の対角線の数は?A.105 B.115 C.125 D.135』

 十八角形?

 くそお、数学ならできる問題が来ると思って密かに数学を待っていたのに十八角形なんて人生で出会ったことがない。

 いや、でも対角線の数の問題を出すなんてきっと公式があるからに違いない。というか考えれば公式を自分で導出できそうな気もする。

 ただそれはもっと時間がある時の話で、それは今の状況には残念ながら当てはまらない。

 「うーん・・・」

 今回はみんな悩んでいるようだ。

 第一受験生ならまだしも高1がそんなマニアックな公式を覚えているはずがない。それこそよほどの数学好きか勉強好きでないと・・・。

 「Dですね。」

 なんて考えていたのもつかの間、うちの勉強好きが当たり前のように回答する。

 「数えたのしずくちゃん!?」

 「ええ、と言っても多分これ公式があるんでしょうが。」

 こいつさてはこの短時間で一般化したな。恐ろしいやつだ。

 「わたしもこの中ならDだと思う。」

 順もDと答える。

 「わかんないけどDだけ9の倍数だし。」

 「確かに・・・!」

 佐々木が納得する。

 みんなも納得したようで(というか北本が言った時点で納得していたと思うが)Dへ移動を始めた。

 「お前も考えたか?」

 「考えてたわよ!」

 ただ後ろをついていくだけの暇な俺は刻をいじるくらいしかやることがなかった。



 『随分減ってきましたね。では第四問!』

 もう北本だけでいいんじゃないかという気分になりながらも一応問題の読み上げに注意を払う。

 『森鴎外の子供の名前ではないものはどれ?A.ルイ B.ベン C.マリ D.アンヌ』

 あ。これは聞いたことある気がするぞ。確か森鴎外は自分の子供に外国人ぽい名前をつけていたってテレビで言っていた気がする。

 ・・・でもそれがどんなだったかまでは覚えてない。

 マリとかアンヌはいたような・・・

 「ご存知ですか?」

 「すみません、これはわかりません・・・」

 「いえ、私もわからなくて・・・」

 北本白川コンビもこの問題はお手上げのようだ。

 「あー聞いたことはある気がすんだけど・・・」

 「んー・・・」

 佐々木順コンビも厳しい様子。

 「え、3つはほんとなの?」

 刻もこんな感じ。

 となるとみんなの視線が集まるのは俺だ。

 「俺も確証はない。だけど確かCとDはいた気がする。」

 名誉挽回のチャンスが来たが残念ながら答えをバシッと言うことはできない。

 「AかBか・・・」

 みんなで考えるが答えは出ない。

 「もう時間がないな」

 「まさくんもう決めちゃって!」

 みんなも異存はないようだ。

 責任重大だが考えても仕方ない。ここはマークシートあるあるのここまで出てきていない選択肢を選ぼう・・・。


 「じゃあ・・・・・・」


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