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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第8章 間違う季節の過ごし方
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117. ナニカノハジマリ



 ついにやってきた文化祭当日。雑務係という係はどうやら文化祭前日までしか主だった仕事はなかったらしく、他の買い出し担当の男子とは違って特に仕事を言い渡されることなく当日を迎えた。


 そんなわけでもうすぐ文化祭が始まるという高揚感に学校全体が包まれているような空気を全身で感じながらも俺はバックヤードの端で静かに座っていた。

 あたりを見渡すが白川の姿はない。

 昨日から機会を窺っていたものの、ついぞ良いタイミングは来ず結局白川の家に行った日以来まともに会話を交わすことなく今日を迎えてしまった。


 しかしこんな日にわざわざ謝りに行くのも間が悪い。

 それに今日はせっかくの文化祭だ。

 別に楽しみつくそうと息巻いているわけではないが、どうせ帰れないんだ、あえて斜に構えて虚無な時間を過ごすくらいなら少しでも楽しもうという気概で過ごしたほうが幾分楽しいだろう。


 一応持ってきた文化祭のしおりを開く。表紙には『(青春)'>0』と書かれているがこれはおそらく今回の文化祭のスローガン的な何かなのだろう。意味はよくわからないが多分鳥肌の立つような寒い意味が込められているだろうから深く考えないでおこう。

 1ページ目に挟んであったクラスみんなに配られたシフト表をどかしクラスの出し物一覧を流し読む。

 縁もゆかりもない人しかいないところに言っても仕方ないので、ここは数少ない知り合いのいるクラスを見ていこう。


 佐々木と順は4組だ。えーと4組は・・・大脱出?なんだそれ。あー、なんか巷で流行っているという脱出ゲームというやつだろうか。

 うーん、ひとりで行くのはなんだか気が引けるなぁ。無難にカフェとかならよかったのに。



 ・・・。知り合いの弾がもう尽きた。我ながら友達の数の少なさに笑える。

 いやいや、1年生なんてこんなもんだろう多分。多くの人も友達の大半はクラスのやつらだろ。まぁ俺はクラスにもそんなに友達がいないんですけど。


 そうじゃなくて俺が悩むべきは文化祭の間どう時間を潰すかってことだ。

 上級生のよくわからないダンスを見てもしょうがないし、有志が出している部活のコーナーにもさほど興味がない。

 となれば自然いつもの場所、つまり図書室に行くことを思いつくがあいにく文化祭期間は一般開放されている。


 はぁ、とひとつこの浮ついた雰囲気にそぐわないため息をする。

 多くの人はこういう行事をどう楽しんでいるのだろう。出し物の回り方すらわからない俺はどうすればいいのだろうか。もし俺が今成人していたら間違いなく喫煙所に直行していたことだろう。

 きーんこーんかーんこーん

 意味もなく高校の館内マップを見ながら、へー保健室ってここにあったんだーなんてくだらないことに驚いていたところ、そんな無駄なことはやめろと言わんばかりにチャイムが鳴る。どうやらいよいよみんなが待ちに待った文化祭が始まるらしい。

 役職のない俺がクラスにいても邪魔なだけだろう。

 しかたなく俺はあてもなく廊下を歩き始めたのだった。



 

 謎解き・お化け屋敷・マジックショー・ストラックアウトなどなど思ったよりもバラエティに富む他クラスの出し物に一抹の驚きを感じながらも、かといって客の少ないそれらに入る気にはなかなかならなかった。


 校内をぐるりと一周したが結局4組の前に戻ってきてしまった。

 まぁ他クラスの様子を見る限りおそらく我らが4組もそんなに混んでるということはないだろう。

 そう思いながらちらりとクラスの様子をうかがう。



 しかしその予想は裏切られた。

 座席どころか待ち行列ができるほどクラスの中は混雑していた。

 俺は目を疑った。こんなにも混んでいる理由がわからなかったからだ。実はクラスに富豪の子供がいて新聞かテレビに広告でも打ったのだろうか。そんなことを考えてしまうくらいにはクラスに人が溢れていた。


 だがよく観察してみると理由がわかり始めた。


 まず客層が変だ。客のほとんどが男子なのである。

 たしかにメイドカフェとなればメインターゲットは男だろうから客の多くが男というのは不自然ではないのかもしれないが、それは世間一般ならの話である。

 うちの高校はどこぞのエロ漫画の世界のように学生の男女比が女子に異様に偏っている。実際うちのクラスも男子数人に対して女子は20人を超えている。

 いくら父兄が訪れる文化祭とは言え文化祭の多くの参加者はこの学校の生徒だ。

 そう考えるとさすがにこの光景は少なくとも普通とは言えない。

 (俺を除く)クラスの男子も大方揃っているようだしなんなら学年問わず他のクラスの男子もかなり集結しているようだ。


 次に、待っている客たちの多くが時間を気にしている素振りを見せている。

 今はまだ文化祭も始まってすぐ、大きなイベントがあるというわけでもない。

 なのにみんな判を押したように時間を気にしながらスマホの画面を見ている。


 外でそんなことを考えているとひときわクラスの中が騒がしくなる。

 なにが起こったのかとクラスを見てみる。

 なるほどメイドさんたちが出てきたのか。

 でもさっきまでも何回かメイドさんが出てきていたように見えたけど・・・。

 ・・・・・・。

 もしや。

 俺は手に持った文化祭のしおりを開く。


 なるほど、そういうことか。


 

 俺はひとつの仮説を立て、それを確認するため明日の同じ時間再びクラスの様子を見ようと決めクラスの前から去った。

 

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