116. フラグを全力で折りにいく馬鹿
白川の家でメイド服を作った日から数日経ち、メニュー決めだの飾り付けだのいろいろやっているうちにいよいよ文化祭前日となった。
部活組も次第に文化祭の準備へ参加するようになりここ数日は先週にも増して忙しない日が続いていた。
しかし俺もそれに混ざってたまに手伝ってはいたがいかんせん初めてのミシンが大変だったので今週は比較的余裕を感じながら作業をしていた。
今も他の男子たちは女子の指導の元でビシバシ働かされている。
しかしそんな中も俺にはそんなに仕事がふられない。
そういうわけで教室の端でぼーっとしていると「斉藤にはカフェで出す予定のデザートの味見をしてほしい」なんて言われて今テーブルクロスの引かれた机でそのデザートの到着を待ってる。他の男子は恨めしそうに見てくる。が、俺は逃げたお前らと違って先週散々こき使われたんだ。これくらいは許されてもいいだろう。
待ってる間俺は最近ずっと引っかかっていることに考えを巡らせる。
白川だ。
白川の家に行ってからなんだかそっけない。
別に避けられているとか露骨に無視されるとかはない。
放課後の3人会議の時も普通に事務的な会話は交わした。
しかしなんだか前よりも会話の時に白川の表情が見えない。
裁縫担当大臣の職が解かれた白川だが結局その後も名も無きリーダーとして文化祭関係の仕事を委員長とともに指揮している。だから白川の実質的立ち位置は変わらないのだが、前と違って白川が俺に仕事を振ってこない。むしろ今週から来た他の男子に仕事を振っている。
最初は俺が裁縫を手伝ったことを配慮してくれたのかと考えた。
だけどこんな風に何をするでもない待ち時間にふと考え直してみるとやっぱり白川の態度は前とは違う気がするのだ。なんというかつーんとしている。
なにか俺は白川を怒らせるようなことをしたのだろうか。
最近の思い当たること・・・パンツを漁ろうとしたのが良くなかったのか、パンツを見たのが悪かったのか。・・・って白川の家でろくなことしてないな俺。
まぁいつか頃合いを見計らって謝ろう。
「おまたせ〜」
「お」
服をならすために着ているのか、メイド服姿の上田(数少ない顔と名前が一致している女子)が持ってきてくれたのはパフェだった。
「食べていいの?」
「もちろん、召し上がれ〜」
素人が作った割には上手に盛り付けられているパフェを一口食べる。
「うん、うまい」
特別何かがうまいわけじゃないが、教室で食べるという非日常感とメイドさんが持ってきてくれるという特別感がパフェの味を何倍もうまくしてくれる。
「お店で出しても大丈夫そう?」
「ああ」
さすがに学祭のカフェに味目当てで来る客はいないだろう。
「上田が作ったの?」
「うん!」
えへへと上田が笑っている。
「そうか」
「ボクのパフェが食べたくなったらいつでも作ってあげるよ。」
気づけば上田は向かいの席に座って俺がたべる様子をじっと眺めていた。
「さすがにそんなに作ったらまずいだろ。」
「冗談冗談、そんなに作ったらみんなに怒られちゃう。」
上田は教室の一角にある調理用のバックヤードの方をちらっと見る。
「ああ、まぁそりゃs・・・」
そりゃそうだろうと言おうとした時そのバックヤードからこちらをじっと見ている人影に気がついた。
その影は目があった瞬間ご機嫌がよろしくない時の証である冷たい笑みをこちらに向け姿を消した。
「・・・」
「どうしたの?」
「い、いや・・・俺そろそろ作業に戻らないと。」
「そう・・・またね。」
「ありがとう、美味かった。」
白川の圧力に負けた俺は上田に礼を言って足早に仕事を振られてもいない男子たちの飾り付けに加わった。
やっぱりあいつ相当怒ってるわ・・・。




