11. 嵐の金曜日
平日は基本嫌いだが例外が1つある。それが今日、金曜である。あいにくの雨だがいつもよりは気分は晴れやかだ。
多少の勉強や面倒事も、週末のことを考えれば普段よりは苦にならない。
早く帰宅することだけを夢見て家を飛び出した。
昼休み、前方では週末の予定について盛り上がっていた。入学してから2週目、だいたいなんとなく自分が属するコミュニティも決まってきた頃だ。高校のメンツではじめてのお出かけを企画するには絶好の頃合いといえよう。
まあ俺には縁のない話だ。俺にはすでに家でゴロゴロするという予定が決まっている。
ちらと北本の方に目をやる。一人で黙々と弁当を食べていた。とても俺好みな昼休みの過ごし方をしている。きっと週末も俺と同様にインドアな過ごし方をしているに違いない。そんなどうでもいい妄想をしながら教室を後にした。
図書室の扉を開けようとする手が止まる。
・・・なんだか嫌な予感がする。
扉の隙間から重い空気が漏れ出ているような錯覚に陥る。
ただ俺は霊感を信じていない。きっと雨で湿気が多いせいだろう。
気のせいということにして扉を開けた。
入ってみても特に変わった点はない。じいさんがいないが、これまでもいない日はあった。あとは例の女の子がいないくらいだが、そもそも図書室は毎日来るような施設でもないし用事が済めば来なくなるのも当然だ。
やっぱり気のせいだった。そう安心して図書室の奥に行ったのが間違いだった。
いつも俺が座っている席でその女の子は泣いていた。
・・・。
・・。
・。
悪いが退散させてもらおう。申し訳ないが泣いている女の子を慰めるスキルは持ち合わせていなかった。
帰ろうとして後ろに振り返る。
・・・。
しかしここで教室に帰ったらどうなるだろうか。じいさんや白川は俺が毎日昼休みに図書室に来ていることを知っている。後々この子が図書室で泣いていたことが教師に知られたら誰が疑われるだろうか。参考人として放課後呼び出される可能性が否定できない。そうしたらせっかくの金曜日の放課後が台無しだ。
振り返った体勢で固まる。声をかけるべきか、かけざるべきか。色々な可能性が頭を駆け巡る。
・・・。
ただ、高校にもなって学校で泣くとは尋常なことではないことは確かだ。ここで俺が帰ったらまず間違いなく誰も来ないまま昼休みが終わる。
ここで放って置いたら変な気がかりができて気分が悪い。まったく、なんで俺のパーソナルスペースで泣いてるんだよ。
仕方ない、俺は腹をくくって震える背中に声をかけた。
「…おい、どうした。大丈夫か?」
その女の子は顔を上げた。元から小柄だが、今日はさらに小さく見えた。
「もう…学校に来たくない。」
ゆっくりと、しゃくりあげながら彼女はそう言った。




