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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第8章 間違う季節の過ごし方
112/241

108. ここ、イベントCGのシーンです



 時は流れ金曜日。今週末が文化祭前ラストの週末ということもあり、いよいよメイド服製作もクライマックスとなっていた。

 「できたー」

 どこかの班からそんな声が聞こえてくる。またひとりメイド服が完成したらしい。


 今の我々の目標は今日までにメイド服を完成することだった。

 指導役が白川ということもあってなのか、それともそもそもこの学校に通っている人のスペックが高いからか、その両方が相まってか、その目標は多くの人が達成できそうであるというのが現状である。

 「ちょっとここ教えて」

 「ああ、そこは上を引っ張りながら・・・」

 そうは言っても全員が滞りなくできるということはなく、メイド服製作最終日ということもあり俺の手助け役もいつもより出番が多い。


 「どうです?」

 例のボクっ子を手伝っていると白川が声をかけてきた。

 「ああ。お前は?」

 「はい。このまま行けば。」

 「そうか。」

 白川と現状報告をする。どうやら全体で大きな問題のある進捗の人はいないようだ。

 「あ、それが終わったら・・・」

 白川の視線の先には北本がいる。

 「・・・大丈夫そうか?」

 「ええ・・・」

 「わかった。」

 「よろしくお願いしますね。」

 白川に手で返事する。

 「どうだ、できたか?」

 「う、うん。」

 ボクっ子の返事の歯切れが悪い。

 「どうした?」

 「あんたたち老夫婦みたいな会話するのね。」

 「は?」

 「いや、なんでもない。」

 「わけわからんこと言ってないで手を動かせ。」

 「はーい。」

 「じゃあ俺は向こう行くからな。」

 「ありがと。」

 ボクっ子の手伝いを終え北本の班へ向かう。



 ・・・。

 ・・。

 ・。

 「よくできてるじゃないか。」

 北本の作った服を眺める。

 「いえ、ここはまっすぐ縫えてませんし、そっちは傾いてますし・・・」

 あの日以来北本は一層努力をして前よりも格段に上手に裁縫ができるようになっていた。しかし根が真面目だからか、ちょっとの失敗も妥協しない。そのせいでどうしても他の人よりは遅れていた。

 「はたから見たらわからんよ。」

 「・・・・・・。」

 北本は釈然としていないようだ。ちょっと前にやるかどうかで悩んでた人と同一人物とはとても思えない。

 だが俺はそんな北本の姿を見てなぜか少し嬉しい気持ちになった。

 「お前はよく頑張った。俺が保証する。」

 「・・・別に斉藤くんに褒められても嬉しくないです。」

 北本は顔を背ける。

 しかしちらりと見える表情は満更でもなさそうだった。

 「とにかく後は最後の仕上げだけだ。時間もないしちゃちゃっと終わらせるぞ。」

 「はい。」

 北本には珍しく素直な返事が聞こえた。

 ・・・やっぱりうれしそうじゃないかお前。




 

 「もう入っていいか?」

 「あーーまだだめ〜」

 「のぞくなよ〜」

 「ったく・・・誰がお前らの着替えなんて覗くかっての・・・」

 全員のメイド服が完成しさっさと帰ろうと思っていたのだが、とある女子が「せっかくだし今着てみようよ!」なんて言い出し、他の女子も「いいね!」なんて賛同し始めたせいで、今や教室は大きな更衣室に変わり、それにしたがって俺は教室から追い出された。


 もちろん俺はその瞬間に帰ろうとした。

 「じゃあ俺は帰るから。」

 「ちょっと待ってください!」

 だがそんな俺を引き止めたのは他の誰でもない白川だった。

 

 クラスの前で棒立ちしているのも怪しいので教室の戸に背中を預け、あたかも誰かを待っているという雰囲気を出しながらスマホをいじっている。

 しかし思いの外待たされているため、さながらかくれんぼのごとく中の女子を催促するのだった。

 「もういいか?」

 「もうちょっと〜」

 「・・・」

 何のために待たされているかは大体予想できているので、早くしてくれ・・・と思っていたらようやく背中の戸が動いた。

 「あれ、開かない」

 「悪い、よっかかってた。」

 扉が開かれる。

 「おおーーー・・・」

 扉の先には圧巻の景色が広がっていた。

 どこを見てもメイド服姿の女子。しかもその女子がみんな顔なじみというのがその異常さに拍車をかけている。

 予想していたとは言え数秒呆然としていた。

 するとどこかから「せーの」という声が聞こえた。

 その声で我に返ったその時だった。




 「「「「「「おかえりなさいませ、ご主人様!!」」」」」」




 クラスの女子全員スカートの端をちょんと持ち俺に向かってお辞儀をしていた。

 「どうでしたか?」

 またも茫然自失としていた俺に白川が話しかけてくる。

 「え?」

 「サプライズ、喜んでいただけました?」

 「・・・え」

 未だ状況を読み込めていない俺。


 「斉藤、今回いろいろ手伝ってくれたでしょ。だからあたしたちからのちょっとしたお礼」

 近くの女子(名前は知らない)が教えてくれる。

 「な、なるほど・・・」

 「どうです・・・?」

 手で服を引っ張りながら白川が訊いてくる。


 「どうって・・・」

 「あたしたちのメイド服姿をみて感想はないの?」

 またしても近くの女子が白川の質問の意図を教えてくれた。

 もう一度クラス全体を見渡す。自信満々の子や少し気恥ずかしそうにしている子、特に何も思ってなさそうな子など色々な女子がいたが特段浮いているやつがいるとは思わなかった(全員浮いているという可能性は否定できないが)。しいて言えば、うつむいていてもわかるくらい赤面している北本がなんだかいつになくかわいらしく見えた。元のポテンシャルが異常な白川は当然似合うのはわかるが、それに迫るかそれ以上に北本のルックスがメイド服と異常な親和性を見せていてびびってる。お前普段からメイド服でいたほうがいいレベルだぞ。


 「どうなんですか?」

 「まぁ、その、なんだ・・・みんな似合ってると思う。」

 「うふふ、よかったですっ」

 「・・・」

 これはお礼なのかという疑問が俺の脳から離れなかったが白川も嬉しそうだしみんなも機嫌が良さそうだからまあ良いかという気分になった。

 「じゃあもう一回外で待っててくれる?」

 あぁ・・・まぁ制服に着替えないとね・・・

 俺は教室の外で昂ぶった鼓動を鎮めながら静かに彼女たちのニーソを噛み締めていた。

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