104. クラスでいちゃいちゃしやがって
「・・・・・・」
翌日、他の女子たちが絶賛メイド服を製作している中、俺はクラスの端っこで縫い物の本で勉強をしていた。
とりあえず白川がみんなに説明する時に使う専門用語くらいは理解できるようになりたいということで今のところそれを目標に勉強を進めていた。
以前白川が話していたことを今更内容を理解したりしているので、ちょっとずつだがわかる用語が増えてきたように思える。自分には全く関係しないと決めつけ何も知らないでよいと思っていた分野を、基礎的な知識くらいは持っておいたほうがおそらく人生を豊かにしてくれるんだろうなと痛感した。
たいていのことは知らないよりは知っている方が良いのだろう。知らんけど。
「どうですか?」
「あ、ああ。まあどうだろう。」
「とりあえずこれからの工程はミシンを使うので・・・」
「そうだな。俺もお前のミシン講座を俺も聞くよ。」
ということで周りの女子に「なにしてんだこいつ」というような奇異の目で見られているような気がしながら白川のミシン講座を受けることになった。
「・・・・・・ふう。」
教室の端、いらない布で練習を重ねるうちに決まった道をミシンで縫うのはそれなりにできるようになった。
というかそれしかできないのだが、多分俺が求められるであろう労働内容はこういう単純作業だと思われるのでこれを極めるのは悪くない選択だろう。
「どうです?」
白川が斜め後ろから少しかがんで、手で髪を耳にかけながら話しかけてくる。
「まあまあ」
その仕草にどきっとしながらも、それを悟られぬよう自然に答える。
「ミシンの使い方はわかりました?」
「ただ縫うだけなら多分。でもこれ思ったよりむずいな。」
練習台となってくれた布たちを持ち上げながら自信なさげに返答する。
「十分上手くできてますよ。」
ほんとうかねぇ。まぁ学祭程度ならそこまでのクオリティは求められないのかもしれないが。
「明日からは本格的にミシンを使っていくので、もし困っている方がいたら・・・」
「ああ。できるか怪しいけどな。」
白川は何も言わずただ微笑んで去っていった。
結局その日はひたすらミシンの練習をして終わった。
翌日から俺は困っている人の手伝いをする仕事に就いた。
困っている人と言っても何も理解できていないということではなく、殆どの場合他の人よりミシンを使うのが遅いというだけなので単純に労働力を増やせば解決する。
そのマンパワーがまさに俺であって、これが案外効果てきめんだったらしい。
「こっちやってくれる?」
「はいはい」
「次あたしのも手伝って。」
「ほいほい」
「わたしも~」
「へいへい」
と、こんなふうに引く手あまたである。
「どうです?」
「見ての通り誰よりも忙しいわ。」
「うふふ、それは良かったです。」
「良くねえよ・・・いや、良いのか。」
各班を順に巡っている俺に例のごとくにこにこしながら声をかけてくる白川。
「お前も忙しそうだけどな。」
「そうですね・・・いよいよ佳境ですし。」
白川は俺じゃわからないような技術的なサポートをしている。というか白川がいなかったら誰がこれらを教えていたのだろう。・・・まぁいいか。白川がいるんだから。
世の中って思っているより見切り発車な事案が多いのかもしれないななんてふと思った。
「白川さ~ん」
「は~い。」
他の班の女子に呼ばれる。
「ではよろしくお願いします。」
「ああ。」
そう返事して白川に軽く手をふる。
「ねぇ斉藤・・・」
ふぅと一息ついて再びミシンに目を落とした時、今時の女子っぽいやつが話しかけてきた。




