102. ハーレ務
週が開けて少し経った日の放課後。昼食を終え、出ていく人は出ていき、残る人は残った教室で俺は相変わらず前に立たされていた。
「本日からメイド服の製作に取り掛かりたいと思います。」
白川は教室の端に置かれていた袋と別の大きなダンボールを叩く。このダンボールに既製品のメイド服が入っているのだろう。
「基本的に1人1着、自分たちのものを作ってもらいます。」
クラスの女子達から不安の様子がうかがえる。
「けれど安心してください。ほぼできていますので。少しのアレンジですので大丈夫かと思いますが、もしわからなくても私がサポートしますのでどうか身構えず楽しんで製作してください。」
「まずはまわりの、そうですね、だいたい4人くらいで班を作ってください。」
いよいよ本格的にメイド服作りが始まった。
・・・というかもう俺絶対いらないだろ。
みんながハサミで布を切っている間、白川は先生さながら教室をぐるぐる歩いて色々アドバイスをしていた。
俺はというと何もやることがないので教卓の横の椅子に移動しぼーっとしていた。
スマホを堂々と見ているのもなんとなく感じ悪い気がする。なので手慰みに近くに置いてある紙を手に取る。これを読んでいればなんとなく仕事をしている雰囲気は出せるだろう。
えーなになに。安西が150,75,55,77?上田が149,77,58,80?
・・・んーっと、これは多分見なかったことにしたほうがいいだろう。紙を気付かれないようにそっと元にあったところに置く。
・・・・・・あーせっかくなら白川のも見とけばよかったなぁ。しかしもう一度その紙を手に取る度胸はないしなぁ。
何ていうのはほんの冗談だが、いよいよやることがなくなったのは本当だ。んーどうしたものか。帰りたいのは山々なんだがなぜか委員長は俺が帰ることを了承してくれない。
曰く、
「さいとーくんがいたほうがなんか良い感じがする」
らしい。まったく意味がわからないが、帰る正当な理由がないためそんな意味のわからない言葉にも反論できず今もここで無為な時間を過ごしている。
仕方がないので委員長のいるグループの方に向かう。
「あの」
「ん?」
委員長の席の近くの空席に腰掛ける。
「俺することないんだけど。」
「いいのいいの、ゆっくりしてて。」
や、だからそれどういう意味なんだよ。
「そう言われてもなぁ・・・」
「ちょっとちょっと。」
委員長と話していると同じグループの女子がにやにやしながら話しかけてくる。
「前からずっと斉藤に聞いてみたかったんだけど。」
「おおお、え、なに。」
「斉藤と白川ちゃんって結局どういう関係なの?」
「は?」
戸惑う俺に構わずにずんずん迫ってくる。てかこいつ誰?
「だから、なにか特別な関係なの?」
「別にただ同じ部活ってだけだけど。」
「えーほんとにぃ?」
「ひっ、なに。」
思わぬ方からの声に驚く。見知らぬ女子Aに気を取られていたら見知らぬ女子Bにいつの間にか背後を取られていた。
「ボクが見る限り斉藤と一緒にいるときだけ白川ちゃんの雰囲気が違うような気がするんだよね。」
「わかるわかる!」
前後挟まれてよくわからないことを言われる。それより俺はこの世にボクっ子の実在を確認できて幾許かの感動を覚えているのだが。
「委員長もそう思うでしょ?」
その女子たちは委員長も巻き込む。もうやめてくれないかなこれ。
「うーーん、たしかにいつもよりもっと優しい感じがするかも。」
「「ほらー」」
「ほらーと言われてもな。というかあいつっていつでも誰にでも優しいだろ。」
「あいつだって。」
「ねぇあんたたちほんとは付き合ってるんでしょ。」
「みなさん」
「「あ」」
めんどくさくなって立ち去ろうかと考えていた時だった。
「手が止まっているみたいですけど大丈夫ですか。」
白川先生がご登場なられた。
「なにかわからないことでもありましたか?」
「あ、ううん、大丈夫大丈夫。」
「上田さんは?」
「ぼ、ボクも大丈夫。」
「そうですか。ところで」
こちらに視線を送る白川。
「斉藤くんは何をやってるんですか。」
「ちょっと委員長とお話を・・・」
「つまり暇だと。」
「まぁ有り体に言えば。」
「じゃあ私についてきてください。」
「・・・・・・はい」
なんでちょっと俺が悪いことしたみたいな雰囲気になってるんだよ。
くそ、やっぱり白川のスリーサイズ見ておけばよかった。
ん?上田?ふーーん・・・
「ほら、早く来てください」
「へいへい。」
立ち去る時ボクっ子とボクっ子じゃない方がなにかこそこそ話していたが内容まではわからなかった。




