99. 特に発言することもないのに会議に出席させられるやつ
「ということですのでなにか困ったことがあったら白川さんに訊いてください。」
放課後、衣装の裁縫の先生として白川が選出された。
といっても白川自身の
「私・・・少しなら裁縫の経験が・・・。」
というほぼ立候補と思える発言があったから決まったのだが。
本日も16人ほどのクラスに俺は雑務という名の何でも屋として男子一人取り残されている。
しかしこう見ると案外運動系の部活に入っている人は多いんだな。
昨日までいた中谷なんかも部活があるということで今日からはそっちに行くらしい。他にも何人か女子が減っていた。
「じゃあ早速。白川さん、ちょっと前に来てくれる?」
「はい。」
先生役の白川が教卓に立つ。
よし、これで俺の役目は委員長に移行したな。帰ろう。
「ちょっとどこいくの?」
委員長に制服の袖をくいくい引っ張られる。
「いやもう俺はいなくていいかなって。」
「なんで」
「お前が書記やるんだろ?」
「いやいや、わたしも作り方教えてもらわなきゃ。」
「え、お前も作るの?」
「そりゃあ作るでしょ」
「そう・・・」
てっきり指揮する役目に徹して衣装係とかに任せるのかと思った。でもそりゃそうか。みんな自分の分は自分で作るか。
「あの」
「「あ」」
「私、席に戻ったほうがいいですかね?」
気付いたら俺達の前にはほんのり笑顔を浮かべた白川が立っていた。
「わ、わたしは席に戻るから!」
おい。なんか知らないけど俺が悪いことしたみたいな雰囲気になってんじゃん。
「ほら早くそっちに立っててください」
「はいはい。」
昨日はあんなに照れてたくせに今日になったらなんか異様に不機嫌になって・・・
全く女心はよくわからない。
「ここはこうすれば簡単に・・・」
ふむふむ。さすが白川、みるみるうちにメイド服のデザインと作り方が黒板上に現れる。
「ここはこうして・・・」
ふむふむ。
・・・絶対俺必要ないだろ俺。完全に黒板の横の置物になってるぞ。
「一から作っていては時間も予算も足りないので、既製品を買ってアレンジするというのが最適ではないかと思います。ということで今週末材料を集めて来週から製作に取りかかりたいと思っています。」
おおー、と歓声が上がる。これまで漠然としか見えていなかった衣装作りの全体像が白川の一連の説明で一気にクリアに見えてきた。
きっと昨日の時点で誰も裁縫に明るくないということがわかったから、おそらく自分に白羽の矢が立って衣装作りのリーダーになるだろうと思ったのだろう。それで昨日の夜にここまで考えてきたんだろうな。一から作るわけではないというのは作る側にとっては朗報だろう。しかし学校の文化祭で買ったやつそのまま着るというのは面白みに欠けるだろうということでアレンジをするということか。なるほど良い落とし所である。
「それで買い物担当ですが・・・どなたか立候補はおられますか?」
まぁ目下の課題は材料だろうな。それがなけりゃ何も始まらない。
しかし、裁縫に詳しくない人が買い物担当に立候補するとは考えにくい。
・・・・・・。
まぁそうだよな。このままじゃこれも白川が一人で担当することになる。多分本人はそれでいいとさえ思っていそうだが・・・
しょうがない。
「俺が行くよ。裁縫じゃ役に立てねえだろうからな。」
「ふふ、ありがとうございます。」
俺だけに聞こえるよう小さい声で礼を言う白川。
・・・仕方なくだぞ、仕方なく。本当は休みの日をこんなことに返上したくない。
だけど俺はあの日、白川の片棒をかつぐって言っちゃったしな。それになんてったって雑務だからな、今の俺。
「わたしも行くよ!」
委員長も名乗り出てくれる。もしかしたらこいつも白川っぽいところがあるのかもな。
「ではそういうこんなところで今日は解散ということにしましょうか。いいですか、伊集院さん。」
「おっけーです。みんな各自できる範囲で裁縫の練習しましょうね。」
「「はーい」」
めでたく本日解散。クラスの女子は三々五々帰っていく。
「さいとーくん、白川さん、ちょっといい?」
「明日のことですね。」
「そうそう。」
さすがに俺一人帰るわけにも行かないので白川と委員長改め伊集院とともに下駄箱を目指す。
「このへんだったらやっぱり隣町のショッピングセンターかな。」
「そうですね。そこの一階の雑貨屋さんはよく行くのでだいたい何があるかわかります。」
「ならそこで決定。現地集合にする?学校に集まる?」
白川が俺の方を見る。視線で特に意見のないことを主張する。
「私たちは、どっちでも。」
「ああ。」
「ねえ、もしかしてなんだけど・・・あなたたち、同棲してるの?」
「え?」「は?」
二人して伊集院のほうを見る。
「いやだってなんか2人仲いいみたいだし今のだってまるで同じところに住んでるような感じに聞こえたよ!?」
とんでもないことを言い出す委員長。
「ただ俺達はどっちも家が学校に近いってだけだ。」
「なーんだびっくりした。」
「びっくりしたのはこっちだ。」
まじめそうな感じがしてどっか抜けていると言うか、ずれてる感じがするんだよなこの委員長。
「それで、どうするんです」
白川が話を戻す。
「わたしも学校に近いし学校集合にしようか。」
白川と俺は頷く。
「じゃあまた明日。」
「じゃねー」
手を振って委員長と白川と別れる。
なんだか今日一日ずっと委員長に振り回されていたような気がする。
喋り方とか感性とか発想とか、なーんか独特な感じなんだよな。
しかしそのどこか憎めないところがきっと委員長がみんなに慕われている理由なんだろうな。
あと委員長ってあだ名のおかげもあると思う。
俺も気付いたら呼び方が委員長に戻ってた。
名前にも微妙にかかってるみたいだしこのあだ名を考えたやつは相当良いセンスの持ち主に違いない。




