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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第8章 間違う季節の過ごし方
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97. おかえりなさいませご主人さま!



 「そこはもっとかわいく!」

 「そこフリフリ増やしたほうがいいんじゃない?」

 「・・・」

 「いやいや、そこはもっと明るい色で!」

 「カチューシャは?」

 「脚はどうする?」

 「・・・」


 現在9月2日、文化祭のための短縮授業が始まり、午後がまるまる自由時間となった初日の放課後。場所はいつもの1年3組教室。

 「えーと、どうしましょう。」

 教卓には困り顔の委員長がきょろきょろしている。

 「だからそんなんじゃ萌えが足りないの、萌えが」

 「そんな服恥ずかしいよ・・・」

 「せっかくの機会なんだしここはとことん攻めようよ」

 大激論を読んだ議題はメイド服のデザイン。

 「・・・・・・。」

 そして存在意義を考え続けている男がそこに一人立っていた。


 

 「なぁ、俺帰っちゃだめ?」

 「だーめ。一応雑務なんだし。」

 「えー」

 そんなやりとりの末にさっき俺の残留が決まったのだが、話し合っている内容が内容のせいで流石に場違い感が否めない。

 そしてその場違い感を加速させているのが今この教室にいる男子が俺だけという事実である。聞くところによると他の男子は部活で忙しいらしい。お前ら本当にそんな部活やってんのか?

 ちなみに我らがSSS部は文化祭明けまで活動しないことになっている。まぁ元から何もやってないしな。


 「なぁどうすんだよ。」

 「えへへ、どうしよう。」

 雑務(書記)という名目で委員長の横に立たされた俺は委員長に事態の収拾をはかるよう諫言する。

 「うーん、あ!」

 お、なにか妙案が思いついたようだ。

 「みんな!」

 いきりたった、もとい議論が白熱した女子たちが委員長の一声で一斉にこちらの方を向く。

 「やっぱりここは男子の意見も聞きましょう!」

 「なっ。」

 げ。本気で言ってんのか。

 ほら、みんなも『え、斉藤に聞くの』『こいつかよ』『てかこいつ誰』みたいな目で俺を見てんじゃん。


 「せっかくさいとーくんがいるんだし聞いてみようよ。」

 「ちょ、本気で言ってんのか。」

 「男子のほうがメイド喫茶とか詳しいかなーって思って。」

 「おい別に俺はそんな趣味ねえよ。」

 「いっつもさいとーくんがこそこそ読んでる漫画とかにそういう女の子出てこないの?」

 「いやまぁ結構出てくるけど・・・ってなんで俺がそういう漫画読んでるって知ってんだよ。」

 「いつも休み時間読んでんじゃん。」

 こいつなんで休み時間の俺を見てるんだよ。しかも漫画の方向性まで知ってやがる。


 「でもなんで俺がそんなことしなきゃいけないんだよ。」

 「雑務でしょ!」

 雑務のカバー範囲広すぎませんか?もう少ししたら雑務という理由で世界を救えとか言い出すんじゃねえだろうな。

 「ほら斉藤なんか言いなさいよ。」

 名も知らない女子に促される。

 「え、えーとそうだな・・・」

 ここで黙っていても仕方ない。俺の脳内データベースからこれまでの漫画アニメの文化祭回を引っ張り出す。

 メイド服の印象では色は黒か茶色。プラス白エプロン。案外そんなに派手じゃないものが多い気がする。

 脚はニーソを履いていたものが多い印象がある。たしかにニーソはいいものだ。普段ニーソを履かないキャラにニーソを履かせる絶好の機会である。

 あとあれだ、なんか自作する時に不器用なキャラがしっかりものの友人に助けられるみたいな展開が多い気がする。それは関係ないか。


 「まぁあれだ。あんまり派手すぎるのはやめたほうがいいかもな。作るの大変そうだし。」

 意外と男は派手な衣装より、少し可愛いくらいが好きなのだ、という意志を言外に込める。

 「なるほどね。」

 「ま、確かに作る時のことを考えたほうがいいかもね。」

 お、なんとか及第点はもらえたようだ。

 さっきまでの疑いの目はなくなりどうやら受け入れられたようだ。

 「ああ、あとニーソは履いたほうがいいんじゃないかな。」

 「それはあんたの趣味でしょ。」

 どこからか飛んできた中谷の言葉に俺は二の句が継げなかった。

 そして再び女子からの視線は非難を致死量配合したものに変わった。

 


 「ニーソ、好きなの?」

 「やめろ委員長、そんな優しい目で見るな。」

 でも1番心に来たのはなぜか委員長の純粋な目だった。

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