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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第8章 間違う季節の過ごし方
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96. 委員長キャラって良いよね



 「ちゃんと話すの初めてかもだね。」

 「そう・・・かもな。」

 「・・・」

 「・・・」


 委員長が世間話をしてくるが、しかし明らかに話題に困っている様子である。ごめんな話題が少なくて。

 とは言えこちらも女子と盛り上がれるだけのトークスキルを持ち合わせていない。きっとできる男ならそのかわいらしいヘアピンから何か話を広げられるのだろうが、残念ながら俺はできない男なので褒める勇気もなければ広げられる話術もない。


 「あのっ、これから色々助けてもらうことになると思うから、その、よろしくね。」

 「お、おう。ご期待に沿えられるかどうか・・・」

 たいした力もないし、頭もないし・・・あるものと言えば、時間くらいか?

 たぶん昔の俺だったら文化祭なんてものに時間を取られることに腹を立てていただろうが、今はそこまでの拒否反応はない。

 理由は2つ。

 ひとつはここで過剰な拒否をするとかえって面倒になることが多いから。

 こういう強制イベントはある程度流されるがままに流される方が楽だったりすることを経験則で知っている。


 もうひとつの理由は案外佐々木のせいかもしれない。

 別に俺は文化祭を楽しもうなんて気持ちは毛頭なかった。

 だが佐々木は言っていた。何事も本気にならないと楽しくないと。

 これまでの俺はあらゆることから逃げていた。転んだ時怪我をしないように、殴られた時すぐ身を引けるように、俺はいつでも片足を後ろに引いていた。


 しかしそれがダメなのかもしれないということは薄々気づき始めていた。

 これはその姿勢を脱却する良い機会なのかもしれない。柄にもなくそう思ったの・・・かもしれない。


 「まったく他の男子は部活があるって聞かないんだから・・・」

 話は続く。

 「だから俺にお鉢が回ってきたのか。」

 「あ、やっぱりさっき聞いてなかったのねっ!」

 「あ」

 やべ。

 「もーこれからはちゃんと聞いてよねっ。」

 委員長はそういいながら人差し指をピンと立てる。現実でこのポーズする人初めてみた。今や絶滅危惧種ではないだろうか。さすが委員長。


 「でもさいとーくんが文化系の部活で助かったよ。」

 「そうなの?」

 「やっぱり男手はほしいからね。」

 「そう、というかなんで俺の部活知ってるの?」

 「うちのクラスで知らない人はいないんじゃないかなぁ。」

 「うっ・・・」

 たしかに思い当たる節はいくつかある・・・

 いや、別に秘密結社とか反政府的な集まりとかではないわけだしいいんだけどさ。

 でも・・・なんか、ねえ・・・


 「そのSOS部?だっけ。いつもなにしてるの?」

 なにその普通の人間は入れなさそうな部活。ここは「禁則事項です」とでも答えるのが正解なのか?

 ・・・なんて言っても多分通じず俺が恥ずかしい思いをするだけなので普通に答える。


 「なにをしてるってわけでもないんだよな。実は。」

 「えっ?」

 「強いて言うなら将棋とか?」

 「すでに将棋部あるのに?」

 そうなのか。案外色々な部活があるんだなこの高校。入学当初部活に入る気がなかったせいでそのへんの情報に疎いみたいだ。


 「ほかはそうだな、勉強教えてもらったり・・・」

 漫画読んだりお菓子食べたりスマホいじったり、とは言えないしもう言えることがなくなった。

 「なんかよくわからない部だね。」

 「俺もそう思う。」

 委員長は苦笑い。そりゃそうだ。


 「・・・でもきっと楽しい部活なんだろうね。」

 「なんでそう思う。」

 その答えに幾許かの違和感を持った。今の話の流れでそう判断でいる材料あったか?

 「だってさいとーくんが楽しそうに話してるんだもん。」

 「嘘言えいつもと同じだ。」

 「ふふっ。それは、良かった。」

 「いや何が良かったのか教えてくれ。」

 なんであんたがほっとしているのか。

 言っている内容もさることながら、その言葉に違わず本当に何かに安心したような表情が妙に気になった。

 「ほら、職員室入るから静かにしてて。」

 が、その真意は聞きそびれてしまった。

 「ったく。」

 案外委員長くせ者かもしれない。

 なにがくせ者って、何を言われてもその舌っ足らずな言い方をされるとこちらは強く出られないんだよ・・・



 

 「もう帰っていい?」

 「うん、ありがとね。」

 メジャーを教室まで運んで今日の雑務は終わりらしい。まぁメジャーを使うようなイベントに男の出る幕はあるはずがないわな。


 「じゃ」

 「あの、一応、連絡先、おしえてくれる?」

 「ああ。・・・えっとどうやってやんの?」

 連絡先交換という行為が生涯で数回しか経験したことがないのでやり方がわからない。

 「貸してくれる?」

 社交性のない俺から社交性の塊のような委員長に携帯が渡る。


 「連絡帳開くよ。」

 「ああ。」

 どうせなんにも書いてないし。

 「・・・・・・。」

 「どうした。」

 「女の子の名前しかない。」

 「え」

 あっ、しまった。あいつらの連絡先が書いてあるじゃん。多分その時も誰かにやってもらったから全く記憶に残ってないんだな。

 「いや、それは・・・」

 「じーーーーーー」

 まずい、釈明しなくては。

 ・・・。

 いや、俺別に悪いことしてなくね?

 俺の携帯に女子の連絡先があってなにが悪いのだろうか。

 明らかに何も悪くない。


 「いいだろ別に。というかそれ部活の人だし。」

 よくよく考えてみたらそのへんの男のほうが女子の連絡先持ってるだろ。それともなにか、俺みたいなオタクくんの女子連絡先所持は違法なのか。


 「さいとーくん・・・案外やり手だねっ」

 「それは違う」

 「そう?」

 「いいから早く済ましてくれ。」

 うるさい委員長をせかす。

 「白川さんの番号知ってる男子きっとさいとーくんくらいじゃないかなぁ。」

 「え。いやいやまさかぁ。」

 「それに北本さんだってそうだよ。」

 北本の連絡先を欲しがる男子がいるのかは俺にはわからないしこれについて言及するのは多分損しかないから黙って携帯を受け取った。


 「ところで俺の連絡先知ってなにに使うの?」

 「うーん、多分使わないかな」

 「え?」

 「さいとーくんが最後だったんだよね。クラスで連絡先知らなかったの。」

 「・・・。」


 知らない間にどうやら俺はラスボス扱いされていたらしい。


 「みんなとは入学してすぐに打ち上げで交換したから。」

 「ははは。」

 「じゃあねー」



 あの。



 

 その打ち上げの存在、初耳なんですが。

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