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甘いかおりの花蜜は苦い  作者: あさまる
9/61

4ー1

「転校生だぞー、お前ら仲良くしろよー。くれぐれも問題は起こさないようにかー。」

やる気のまるで感じられない声と表情。

ひまわり達の担任教諭だ。


どんな子だろう。

無縁だと思っていたが、やはりどんな生徒が来たかは気になるひまわりであった。



がらら……。

入口の扉が開かれる。

そこから転校生が教室へ入ってきた。


ひまわりと、転校生の目が合う。


「……え?」


「はじめまして、日向アリアと言います。皆さん仲良くして下さると嬉しいです。」

頬笑む少女が教壇で自己紹介をする。


気を抜けば、吸い込まれそうな錯覚を覚える美しい瞳。

それ自体が輝いているような金色の髪の毛。

そして、透明感のある肌。


ひまわりには、彼女に見覚えがあった。

以前通学路、そして、自宅の玄関にいた少女であった。


アリア。

変わった名前だな。

そういえば、あの子も同じ名前だったな。

そんなことを思う呑気なひまわりであった。


目鼻立ちのはっきりとした顔。

ハーフだろうか。

ボーッとアリアを見つめるひまわり。


見れば見るほど似ていた。


それに気づいたアリア。

一瞬驚いたように目を少し大きくした後、微笑んだ。


「っ!?」

アリアとは比較できないほど大きく目を見開くひまわり。


……今微笑んだ?

ドキンと心臓が跳ねる。


「いや、気のせい、気のせい。」

自分自身に言い聞かせるような小声の独り言。

心臓の音がうるさかった。


「じゃあ、日向は空いてる席に座ってくれ。」


「はい。」

担任の言われた通り、アリアが席に座る。

そこは、ひまわりの席から離れていた場所であった。

そして、さくらの隣の席だ。


物珍しさからか。

それともその端正な顔からか。

アリアの周りには、クラスメイトの塊が出来ていた。



自身の席から遠目にアリアを見ていたひまわり。

すると、突然背中に柔らかい感触がした。

それは徐々に重くなっていき、しまいには、自身の身体を机に突っ伏す形になってしまった。


「はぁー、もう嫌ー。」

さくらの声が背後からする。


「どうしたの、ひのっち?」

もごもご。

目の前にある机に反射し声がこもる。


「ほら、私の席あの転校生の隣でしょ?だからさ、ほら見てよ。」


「いや、ひのっちのおっぱいに潰されて見えないよ。」


「……いやん、はっちのえっち。」

恥もなにも感じていないような棒読みのさくらの声。


ひまわりからは、彼女の表情を伺うことは出来ない。

しかし、容易に想像が出来る。

ひまわりを弄ろうとにやけるのを必死に我慢し、ピクピク口元が動いているだろう。


幸か不幸か。

さくらの友人は、皆アリアを囲む生徒達の一員になっている。

その為、さくらは教室でも堂々とひまわりと話すことが出来る。


普段ならば、彼女達によって邪魔されてしまう。

あいつは暗い。

だからさくらはいくら幼馴染でも教室では近づかない方が良い。

そんな勝手な理由で妨害してくるのだ。

身勝手極まりない。

しかし、今は違う。

それが、さくらには嬉しかった。



「転校生には感謝しないとな……。」

ぽつり。


「うん?ひのっち何か言った?」

未だ机に強制的に突っ伏さざるを得ない状態のひまわり。

さくらの呟きが、そんな彼女の耳には届いていなかった。


「なんでもないよー。」

微笑みながら誤魔化す。



こんな日が続けば良いな。

次章

4ー2

2018年9月29日

投稿予定。

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