3ー2
それは、数日後のことだった。
「あ、お、おはよう……。」
玄関の前で待っていたさくら。
気まずそうに目を背けている。
それは、ひまわりも同様であった。
いつもの仮初の元気もなく小声で挨拶を返すだけであった。
今までのさくらなら、お構いなくリビングへまっすぐと向かっていた。
しかし、ここ二、三日は玄関の前で待っていた。
家の中にすら入って来なかったのだ。
「二人どうしたの?」
心配そうなひまわりの母の声。
「なんでもないよ!行ってきまーす!」
絞り出した明るさ。
玄関を飛び出すひまわり。
それに少し遅れて着いていこうとするさくら。
「ひのちゃん待って!」
ひまわりの母が、さくらを呼び止める。
「は、はいっ!」
何だろう。
振り返り、立ち止まる。
「あの子ちょっと空元気で何とかしようとすることあるけどよろしくね。」
「もちろんですっ!」
サムズアップするさくら。
ひまわりを追い、走り出した。
すぐに追い付き、声をかけようと近づく。
前を行くひまわりを見つめる。
いつも誰かに怯えている。
小さく弱々しい背中。
その姿が、さくらにはたまらなく愛おしく思えた。
必ず守ってみせる。
さくらは、そう決意を胸に抱き、ひまわりの隣へと戻った。
いつもさくら自身がいた場所だ。
そして、そこは、これからも彼女がいるべき場所なのだ。
気まずさなど、すぐに消し飛んだ。
さくらが、隣を歩くひまわりを見る。
同じタイミングでひまわりも彼女を見ていた。
それが二人にはおかしく、つい吹き出してしまった。
「もおーはっち笑わないでよー。」
ケラケラと笑うさくら。
それに対し、クスクスと控え目に笑うひまわり。
「えー、ひのっちだって笑ってるじゃん。」
彼女の可愛らしさに、さくらはとうとう我慢が出来なくなり、抱き締めてしまった。
細く、それでいて柔らかい感触を包み込む。
「ぎゃー襲われるー。」
微笑みながらそう言うひまわり。
彼女は、抵抗せずにさくらにされるがままであった。
二人はそのままじゃれいながら教室に辿り着いた。
そこは、いつもと少し雰囲気が違っていた。
「おつー、どしたん?」
「なんだ、さくら知らないの?転校生が来るんだって。」
さくらの問いに答えるクラスメイトの一人。
「へー。」
興味なさげに口を開くさくら。
「なに、あんた興味ないの?」
「え?いや、まぁ、なくはないけど……。」
そのやりとりを横から聞いていたひまわり。
転校生か。
どんな子だろう。
仲良くなれれば良いな。
そう思ったが、それを自身で否定してしまった。
転校生が来たところで自分には無縁だ。
どうせクラスの中心の人間と関わっていくのだろう。
次章
4ー1
2018年9月22日
投稿予定。