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甘いかおりの花蜜は苦い  作者: あさまる
7/61

3ー1

「ただいまー。」

自宅の玄関の扉を開け、ひまわりが声を発した。


安心する。

力がどっと抜ける。

思わず座り込んでしまいそうになるが、ぐっと堪える。


男は敷居を跨げば七人の敵あり。

そんな諺が、昔からある。


ひまわりには、その意味がよく分からなかった。

しかし、それでも言えることが一つあった。


少なくとも自分には七人よりも多くの敵がいる。

味方はさくらだけだ。


ため息が出てしまう。


「おかえり。ひまどうしたの?何か嫌なことでもあったの?」

母の出迎え。


いけない、いけない。

いつも通りの私を演じなければならない。


「いや、なんでもないよ、なんでも。……今日暑かったから疲れちゃっただけだよー。」

わざとらしく胸元をパタパタと動かす。


何度もやった作り笑い。

始めこそ親を騙している罪悪感があった。

しかし、もうその感覚は彼女の中に残されていなかった。



「疲れた……。」

ひまわりが自室に戻り、ため息をつく。


親にも見せられない顔。

それは、今にも泣きそうな情けないものであった。


いじめ……とまではいかないのだろうか?

今自分が置かれている立場を考える。


「いじめ……なんだろうな、これ。」


目を瞑る。

底の見えない沼に沈んでいく感覚。

ドロリ。

どす黒く不快なものが自分の中に入ってくることがひまわりがに分かる。


ひまわりが再び目を開けた時には、すでに外は暗くなっていた。

どうやら寝てしまっていたようだ。

一体何時間経ってしまったのだろうか。


寝汗により、身体に貼り付く制服。

それが、より一層不快感を増幅させる。


「お風呂入って来ようかな。」


気分を変えるべく、入浴しようとする。

タンスから、パジャマなどを取り出し浴室へ向かう。


後は夕食だけだ。

それならもうこれで良いだろう。


ひまわりが浴室へ向かっている最中、玄関から声が聞こえた。

その声は、二人分であった。


一人はすぐに分かる。

彼女の母だ。

しかし、もう一人の声が分からない。


誰だろう。

ひょこっと顔だけをのぞかせ、ひまわりは玄関を見た。


この距離でも分かる。

浮世離れした美しさ。

そして、眩しく煌めく金色の髪。


そこには、下校時に見た少女が立っていた。


「あっ!こんばんは。」

ひまわりに気づいた少女。

彼女がひまわりに気さくな挨拶をする。


「ど、どうも……。」

一方、ひまわり。

焦りと緊張。

それらを隠せず無愛想になってしまうのであった。


新しく、素敵な出会いがあるかもしれない。

ひまわりは、そんな今朝の占いを思い出していた。

次章

3ー2

2018年9月15日

投稿予定。

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