10ー1(過去編5)
「お母さーん。」
エアコンの効いた涼しい部屋。
そこから台所にいるであろう彼女の母を呼ぶひまわり。
「なにー?」
「ひのっちどうなったか知らない?」
「……。」
急に無言になる。
「おーい、お母さーん?ひのっちなんだけどさー、どうなったの?」
聞こえていなかったのだろうか?
再度ひまわりが言った。
少しして、神妙な顔をしたひまわりの母がリビングに入ってきた。
「あんた、あの子と付き合うの止めなさい。」
「え……?お母さん、何言ってるの?」
「あの子とは距離を置きなさいって言ってるの。」
その後、母の制止を無視したひまわりは、家を飛び出してしまった。
そんな彼女の目的地は決まっていた。
さくらの家だ。
息が上がる。
脳に酸素がいってないからだろうか、それとも久しぶりに外に出たせいだろうか。
いつもなら平気なタイミングで吐き気がするほど苦しく、足元がふらつく。
しかし、そんなことなど気にせずひまわりは走っている。
やっとの思いでさくらの家へ着いたひまわり。
汗だくで、喉もからからで、目眩もする。
インターホンを鳴らす。
誰も出ない。
もう一度押すべきだろうか?
「はぁ……。」
とぼとぼと肩を落として歩くひまわり。
結局、彼女はもう一度インターホンを押すことが出来なかった。
これからどこへ行こう。
家へ帰るのも、格好がつかない。
「今帰ったら怒られるよなぁ……。」
ポツリと呟いた。
母の言うことを聞かず、家を飛び出してしまった。
拳骨の一つや二つは覚悟しておくべきだろうか。
家に帰るわけにはいかない。
かと言って、さくらの家へもう一度行くわけにもいかないだろう。
また、公共の場所はクラスメイトがいる可能性がある。
ひまわりは、今はクラスメイト達には会いたくなかった。
そうなると、行く場所はかなり限られてくる。




