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甘いかおりの花蜜は苦い  作者: あさまる
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1

目が覚める。

ゆらゆらと揺れるカーテン。

それに遮られた窓から明るさが漏れだしている。


ゆっくりと起床する。

八原ひまわりは重い瞼をごしごしと擦る。

寝汗を不快に感じながら大きく欠伸をした。


真っ黒で、枝毛もなければ癖もついていない艶やかな髪。

寝ぼけ眼で鏡を見る。


我ながら、起きたばかりの顔は酷いものだ。

そんなことを思うひまわりであった。


櫛で髪を梳かしていく。

すんなりと櫛が入り、これまたすんなり櫛が進む。

何回かその行程をした後、部屋を出た。



またつまらない日常が始まるのか。

リビングの椅子に腰かける。

いつも座っている、云わば彼女の定位置だ。


「いただきまーす……。」

トーストを食べ、テレビを見る。


いつも通り、朝の占いを見る。

良い結果なら信用し、悪い結果なら無視をする。

ひまわりが決めた都合の良い占いの信じ方だった。



「……うん?」

トーストを食べる手が止まる。


新しく、素敵な出会いがあるかもしれない。


「出会い……か……。」

ぼそりと独り言。


現在高校二年生のひまわり。

そして、今は七月の半ば。

間もなく期末テストが始まる。


そんな時期に新しい出会いと言われてもピンとこない。


「まぁ、占いだしなぁ……。」



ピンポーン。

インターホンが鳴る。

その音に、ひまわりは焦り始めた。


「お邪魔しまーす。はっちおはよー。」

明るい声が玄関から聞こえる。

その声は、リビングで呑気に占いを見ながら朝食を食べているひまわりの耳にまで、しっかりと聞こえた。


ガチャリ。

ドアが開いた。


「あっ!はっちまだ食べてるの!?」


「ひのっち……おはよう。」

気まずそうに苦笑いするひまわり。


日乃山さくら。

校則を無視した明るい金色のボブヘアー。

そしていくつも耳についているピアスとイヤーカフ。

下着が見えてしまいかねないほど大きく開いた胸元のボタンと短いスカート。


所謂ギャルと呼ばれるようなタイプの人間だ。

ひまわりとは真逆な格好の女子であった。


「あら、さくらちゃんいつも悪いわね。良かったらお茶飲んで待っててね?ほら、ひまわり!早く準備しなさい。」

ひまわりの母が彼女を笑顔で迎え入れる。


「いえ、お構いなくー。」

こちらもにこにこと笑顔で応えるさくら。


「ごめん!ひのっち早く食べるから待ってて!」

二人と対照的なひまわり。

大きく口を開き、トーストを頬張る。

そして、それをそのまま紅茶で流し込んだ。


「よしっ、歯磨いてくるね!」

小走りで洗面台へと向かった。


「ゆっくりで良いよー。」

さくらは、のんびりと言った。

そして、ひまわりが座っていた椅子へ腰かけた。



「よし、準備オッケー!ひのっちお待たせ、行こっか。」

数分後、準備を整えたひまわり。


玄関へ向かうひまわり。

そして、それについていく彼女の母と、さくら。


ひまわりは、いそいそとローファーを履いた。

普段は座って履くが、今日は少し横着をして、立ったまま行ってしまった。

その為、後ろにいたさくらは恥ずかしそうに視線を反すのであった。


「う、うん、行こ。」

小声でボソボソっと言う。

先ほどまでの勢いが嘘のようだった。

頬が少し紅い。


「ちょっとひまわり!あんた下着見えてるわよ!ごめんね、さくらちゃん。朝からつまらないもの見せて……。」


「なっ!つ、つまらなくないわ!人によってはお金出すわ!こちとら女子高生やぞ!」


「はっち遅刻しちゃうから早く行こ!?はっちのママ、行ってきます!」

言い争いになる前に制止するさくら。

そして、半ば強引にひまわりの肩を後ろから押して玄関を出た。


「ちょ、ひのっち待って……い、行ってきまーす。」

転けそうになりながらも玄関を出ていくひまわり。


こうして、ようやく彼女達の一日が始まるのであった。

次章

2ー1

2018年8月11日

投稿予定。

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