5ー2
ひまわりが、さくらの家へ向かっている頃。
ひまわりの家へ向かっている少女がいた。
今日転校して来たアリアだ。
無表情で歩く彼女の姿は、見る者全てを魅了した。
道行く者達は、彼女を見ることだけで、声をかけることすら出来ずにいた。
急がなければならない。
一切の躊躇なく、インターホンを押す。
アリアの指が押したのは、ひまわりの家のものだ。
早く。
早く早く!
早く早く早くっ!!
ガチャリ。
扉が開く。
「あら、この前の……。」
ひまわりの母だ。
「はい、近くに引っ越して来た日向です。実は私娘さんと同じ高校に転校しまして……。それで、教室であまり話せなかったので挨拶をと思いまして……。」
綺麗に頭を下げる。
脳内で何度も反復練習した言葉。
ドクンドクン。
心臓がうるさい。
冷静な顔をしているが、内心緊張しているアリア。
今日こそ言おう。
そんな決意を胸に、アリアはここへやって来たのだ。
「あー、ごめんね。あの子まだ帰って来てないのよー。」
「そう……ですか。すみません……。」
しょんぼり。
雨の日の捨て犬のようなアリア。
可哀相に。
彼女の姿を見て、そんな気になるひまわりの母。
「良かったら家の中に入ったら?」
願ってもない。
まさか本人不在でも家へ入れるとは思ってなかった。
「はいっ!ありがとうございます!」
アリアの満面の笑み。
皆を虜にする笑顔。
彼女の美貌から繰り出されるそれは、ひまわりの母も例外ではなかった。
「あの子の友達は二人とも美人ね。」
ニコニコするひまわりの母。
彼女の手には、菓子とジュース。
「……私なんてそんな……。ところでひまわりさんのお友達ってどなたですか?クラスメイトですか?」
「あー、近くに住んでる子なのよー。」
「名前分かりますか?」
「え?さくらちゃんって子よ。日乃山さくらちゃんって子。見た目はチャラチャラしてるギャルで、昔ちょっといろいろあったけど良い子よ。あの子とも仲良く出来るんじゃないかしら?」
ひまわりの母が、ニコニコと話す。
「日乃山さくら……。二人は仲良いんですか?」
「まぁね。幼馴染でずっと一緒だからね。」
「ずっと……ですか……。」
「え?そうだけど……。」
「日乃山……さくら……。」
ポツリ。
そう呟くアリアの表情は、美しくも恐ろしかった。
そして、幸か不幸か、彼女の呟きも、その顔もひまわりの母には届かなかった。
次章
5ー3
2018年11月3日
投稿予定。




