転生させる側になった。
さて、今日も出勤しますか。
「七時一二分、四二分遅刻です」
「仕方ない、昨日徹夜だから。で、今日はなにやるの?」
眠い、とても眠い。さっきから欠伸が止まらん。
「転生、一番基本にして一番重要な仕事ですから、もっときちんとした態度でやってください。スキルの授与も昨日やった通りに」
「ん、了解。来る場所は?」
「四〇分後に勇者候補がここに来ます。マニュアルと記録用紙を渡しておきます。スキルはこちらのスキルをあげてください。派遣地は世界番号4456です。私は私の仕事に行きます。」
「はいよー」
こたつで寝るか。
「おい」
「あと、三〇分」
「ここは、どこだ」
「あと、六〇分」
目が覚めた。起き上がり、大きく伸びをする。よく寝た、昨日の分まで寝れた。寝てできる仕事ほど楽のものはない。
「おい、ここどこだ?」
なんだこいつ、なんでここにいる? ああ、例の勇者候補か。マニュアルを開く。
基本的に自分で考えてください。
エリアよ、人、神はこれをマニュアルとは呼ばない。記録用紙はただのA4の紙かよ。俺のときみたいに記入欄はないのな。とりあえず、初めて会ったときのエリアと同じにやるか。
「こんにちわ、転生神の靈だ。早速だけどこれに名前とか、いろいろ書いて」
ペンと記録用紙を渡す。
「そうかここは、死後の世界って奴か転生については断らせてもらう。俺にその資格は無いんだ……」
は? なに言ってんだよ、勇者。意味分からん。たぶん、勇者は既に少し錯乱している。そんなのはどうでもいいから書けよ。
「少し落ち着け、お前には勇者の素質があるんだ」
「そんなものはない。俺はみんなを殺した。だから、罰が必要なんだ。ほら、神なんだろ、罪人を裁けよ!」
みんなって誰だよ、そんなこと聞いてないんだよね。僕が聞いたのは、名前とかだから。まあ、転生がお前の罰とか言っとけば、こいつは納得するだろ。
「勇者、転生こそお前の罰だ。お前が殺した分だけ、使徒を倒し、世界を救え。だが、それによってお前の罪が許されることはない。罪を背負い生きていけ。例え、許されなくても、償う意思を忘れるな。そして、動け、自分のできることをしろ。それくらいは、できるだろ?」
自暴自棄になっていた勇者の目に闘志が宿る。こいつ、ちょろいな。
「やればいいんだろ、やれば! やってやるよ! 俺が! ドミ・ルキファーナが! 俺の剣で、殺しちまったみんなの分まで!」
おお、熱い熱い。気合い入ってるな。
「じゃあ、お前にそのための力をやるよ」
勇者の胸に手を当て使徒の浄化した魂、スキルを注ぎ込む。スキルを同調させてっと。
さて、こっからが問題だ。魂が霧散しないよう、肉体に到達するまで解けない保護を掛ける。そして、目的地へ転生させる。前者が結界魔法、後者は空間魔法だ。昨日はできた。ちなみに、魔力は吸収した使徒から得ていたらしい。
ローブのポケット(不便だったので昨日の深夜にトキちゃんに付けて貰った)の中の石を掴む。これは、魔力結晶、魔力を固めた結晶だ。さすがに使徒2人分だと足りないので、補填するためだ。
「これからいく世界はデオナイトツ。剣の力も十分に活かせるだろう。仲間もいる。使徒を倒し、世界を救ってくれ」
「分かった」
「じゃあ、いくぞ」
目を閉じ、イメージを膨らませる。
まず、青い魔方陣を二重に展開する。そこから球状に結界を形成する。
次に、白く光る魔方陣を展開する。光は膨張し、白い部屋をより白くする。
光は瞼を貫き、僕の視覚を白で染める。
目を開けると、勇者はいなかった。
「なんとかなったー」
初めての転生仕事が終わり、気が抜けて思っていル事が声に出る。
こたつで寝るか。
脚になにかが当たり、目を覚ます。起き上がると、反対側で、トキちゃんが寝ているのが見える。ついでに、A4の白紙が見える。やべ、書かせ忘れた。名前なんだっけ? 確か……
ンゴ・ルキファーナ無事に転生
これでおkと。
「トキちゃん、起きて」
「ん、ああ、靈起きたんだ」
トキちゃんは目を擦りながら起き上がる。ロングの黒髪は昨日より、乱れている。もはや、ボサボサすぎて、新しいヘアスタイルだ。
「ゲームしよ」
「いいよー」
僕たちはこたつから出て部屋に向かう。
ドアをノックする音がした。まったく、誰だよ、せっかくトキちゃんとゲームしてたのに。せめて、このチャプターが終わってからにしてよ。
「トキちゃん、ごめんね、ちょっと見てくる」
「うん、分かった」
いったん、ポーズ画面を開いて、止めておく。そしてドアを開ける。
「僕は宗教はお断りです」
そう言った後、ドアを閉めようとする。ドアを手で掴まれる。
「なにふざけた事抜かしてるんですか? これ、再提出です。それと覚えていないようなので、今日は昨日よりも時間をかけて、しっかりと、教えてあげます」
イヤだぁぁぁ、やりたくないぃぃぃ。
今さらですが誤字、意味が完全に通ってない文など教えてくれると助かります。きっとあるので。