再会
「トキ…ちゃん?」
「あんた…まさか靈?」
剣から声が響いた。
「そうだよ。僕だよ」
もう二度と会えないと思っていた。それなのに再会できた。これは、奇跡だ。喜びで、消滅してしまいそうだ。
「あのときは、守れなくて、ごめん」
何をいっても、いいかもわからず謝罪の言葉が最初に出た。
「別に、謝らなくていいよ。私はあんたを守ったことを誇りに思ってるから。それより、ありがとうって言葉が欲しいな」
「そっか、じゃあ、ありがとう」
「で、私の夢はどうなったの?」
「確か、腐りきった世を平和に変える、だったよね。残念だけど、世界は変わらなかった。それどころか、さらに多くの罪なき人が死んでしまった。だからさ、僕は、そんなことが起きない国を海の底に作ったんだ。そこでは誰も殺されない平和な世が築けたよ。結局は爆発でなくなっちゃったけどね。でも、これで、証明できたと思うんだ、本当に、平和な世界もあることを」
こんなのは言い訳にすぎない、結局のところ、幽霊なんかじゃ、なにもできなかった。平和な世界があることを証明できた、何て言ったけど、世界や人を変えることはできなかったことを証明してしまった気がする。それじゃあ、なにもできない、なにも変わらないんだ。
「そう、頑張ってくれたんだね。やっぱあんた、いい奴だよ」
トキちゃんは、認めてくれる。しかし、自分はきちんとした形では約束を果たせていない。
「違う、約束を守れなかった」
だから自分は許されるべきじゃない。もっと咎められるべきなのだ。
「自分を否定してても、なんにもならないよ、もっと前向きに行かないと。ということで、過去の話は終わり! 今の話をしよう!」
そういってくれた。過去の話もいいけど、やっぱり今の話か、トキちゃんっぽいな。
「分かった。じゃあ最初はお互いが、今まで何をしてたか話そう。」
『私たちの勝利です!皆さんの健闘により、防衛は成功しました』
頭に声が響く。
「なんだ、これ?」
「エリア様の念話だよ」
「念話ですね」
エイジよ、いたのかびっくりしたではないか。というか、絶対コイツ聞いてたよね。それだったらすごく恥ずかしいよね。
「エイジ、今ここで聞いたことは忘れるんだ」
「感動の再会を恥ずかしいことみたいに言わないで!」
「いや、そもそも恥ずかしい何て言ってないよ!」
「でも恥ずかしいんでしょ! ほら、言っちまえよ、恥ずかしいってよぉ!」
「そうだよ。そうですよ。というか、さっきまで感動の再会だったのになんでこんな流れになってるんだよ! エリアなんでこんな空気よめない!」
「そうだよ、これは、全部あの神様が悪いんだ! 靈さんよ、殴り込みに行かない?」
「それいいな。久しぶりにやるか。トキちゃん」
「パワーアップしたトキちゃんを見せてあげる」
エイジからトキちゃんを奪い取り、エリアが指揮をしている部屋に向かう。
こんなふざけた感じだった気がする。これが僕たち二人のあるべき姿だ。思い出せて良かった。
「まってください。靈様、殴りこんじゃダメです!」
やっぱり明るい雰囲気の方がいいな。気が楽だ。
「トキちゃん、何か欲しいものとかある?」
「なんで?」
「お詫びだよ。前世の」
「じゃあ、あれが欲しい。エイジがいってた、何だっけ……そうだ、ゲームだ。ゲームがほしい」
「分かった。用意しとく」
ゲームか、ゲームなら一緒にもできるな。あと、エイジもゲーマーなら、一度でもいいから対戦したいな。
ドアの前に着いた。トキちゃんを構える。剣の使い方何てのは全くわからないので、適当にそれっぽく振る。するとドアはきれいに真っ二つだ。
「トキちゃん、切れるようになったんだね」
「いや、問題があったのはあんただからね。私のせいにしないで」
「あなた達何してるんですか。」
エリアが呆れた声で言った。
「エリアに殴り込みに来た!」
「今なんて言いました?」
「 殴り込みに来た!」
「その前です。呼び捨てしましたよね。仮にも、私のは先輩なんです。礼儀は正しくすべきです」
何を言ってるんだこの神は、僕の方が強いんだからそんなことする必要ないだろ。先輩、後輩何て関係ない。上下関係を決めるのは強さだ。
「だから、僕の方が偉いと証明しにき……」
全身に激痛が走り、言葉が途切れる。
なんだこの痛み、さっき喰った奴が原因なのか? てか、これ、僕の魂を、喰おうとしてる? せっかく、トキちゃんと再会できたのに。消え、て、たまるか……
そこで意識は途切れ、僕は倒れた。