作戦会議
「父さん、内部の反対がとか、そういう面倒なことは後にしてくれるかな。無の奴等にどう対抗するかってのが重要だろ。このまま全滅するわけにはいかない」
部屋に入って早々、クタンは白側の代表らしき男に話しかけた。てか、お父様ですか。エリアと同じく真っ白だな。そういえば、クタンは茶髪だけど、母似とかなのかな。
「そうだな、まずは生き残らなくてはな」
「それなんだけど、無と戦えるのは僕と零固とクタンぐらいだね。他に候補がいるなら戦い方は僕が教えるけどね」
無の勢力は僕の下位互換だけど、自分の魂を守れないような人はすぐ死ぬだろうからね。だから、戦闘に関しては、作戦なんてまともに練る必要がない。拠点を見つけて突っ込むだけ。
「敵の拠点の場所を特定するのも、僕に考えがある。それより、僕はどうやってエリアが生き返ったのかを知りたい」
自分のペースで話を進めると、ストレスフリーだね。ほとんどの人は僕に意識を向けてる。やはり僕には、こういう才能が……あるのか?
「俺の力だよ。じゃあ、今度はそっちが話してくれない。その考えを」
クタンくん、それはないでしょ。お前がやったって事は知ってるよ。どうやったのかを聞かせてよ。魂術なのか、固有のスキルなのか、僕にも出来るかとか。
「もう少し詳しくお願い」
「言う必要がある?」
「ある。言わなきゃ僕は協力しないから」
これで話す以外の選択肢は無くなったでしょ。ほら、早く話せよ。
「言えばやってくれるって事だな?」
こいつは何がしたくて、こんな意味の無い事をしてるんだ。僕ってそんな信じられないのか。
「うん。早くして」
「抜き取って、ばらばらに崩れた魂を組み立てる。戻したい誰かを強く思う。それだけ」
本当に聞いといて良かった。これで新しい可能性が見えてくる。さすがに全員同一人物の世界ってのは、面白みがなくなるしね。
「ってことで、僕の意見を言わせて貰うよ。まず、無の何体かに僕の魂を混ぜておく。で、一つ集まったのを感知したら、そこがたぶん拠点。簡単でしょ」
「君はそう言うが、その策を可能にするだけの能力を持っているんだな」
たぶん白のトップだろうと思われるクタンの父が確認を取ってくる。他の奴は黙ってるのに、無知は面倒くさくて嫌いです。ほら、ビウンとトールなんてもう喋り始めたぞ。見習え。
「それは、愚問っていう奴でしょ」
「自信に満ちているな。これなら問題はないだろう」
「じゃ、僕はもう帰る」
皆に手を振る。それをトリガーにし零固を連れて転移する。さて、これからが僕達の作戦会議だ。
いつも通りの僕の部屋に到着。いつもと違うのは、僕だ。作られた僕こそがいつもの僕だから。僕の望んだ通り。
「とりあえず座ってて、菓子持ってくる」
零固をこたつに座らせて、菓子を選ぶ。いろんなのがあるけど、これでいいか。袋から白い塊を出し白い皿に移す。白の上に白い物があると見にくいかな。見た目にそこまで凝ってる訳じゃないからいいんだけどさ。
「持ってきたよ」
零固の対面に座り、真ん中に皿を置く。そして、零固の顔を見る。なんで、こいつ皿ばっか見てるんだ。
「角砂糖で悪いか?」
零固は視線を下げたまま反応しない。角砂糖がそんなに不思議なのか。別に悪いものとか入ってないよ。
「もう食ってみればいいんじゃないですかね!」
皿から一つ取って零固の口に突っ込む。これでさすがになんか反応するよね。
「ああ、確かに甘い」
やっと顔上げて何いうかと思ったら、それだけかよ。いや、もういいや。始めるか。
「えー、では会議を始める。これからのシナリオは昨日話した通りだが、何か思い付く事があれば挙手をして言ってくれ」
「くだらない」
僕が言い終わると同時に零固が呟いた。何に向かって言ったのだろう。この会議かそれとも僕の戦いか。
「今更何を話すんだよ。無を殺して、古城靈も死ぬ。そして、この世界に古城靈を認めさせたら、俺がそれを保つ。少なくとも俺はこれでいいと思ってる」
まあ、確かにそうかもしれない。僕だって変えようとも思ってないし。もしかしたら僕には、まだ不安が残っているのかもしれない。理由もなく、なんとなく怖がってたって意味ないだろうに。
「そうだね。それならいいのか」
僕が納得する事でこの会議は終わる。短い時間だけど無駄に過ごしてしまった。もうすぐ死ぬ奴のする事じゃないね。