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ここに来てから半年

 ここに来てから半年が経ったらしい。地球にいた頃と比べて、時間が進むのが早い気がする。


 僕は今、ケテルに頼まれ仕事をしている。

「で、さっき言ったとおり転生して戦ってもらうんだけど、とりあえずこれが合ってる確認して」

「はい……分かりました……」

 目の前の少女は、僕が渡した個人情報満載の紙をじっくりと読んでいる。ここでは少女だけど、前世では老衰死したババアらしい。見た目は当てにできないね。

「たぶん合っていると思い……ます……」

「じゃあ、細かい説明をしてくよ」

 僕は資料を見せながら、少女に説明していく。たまに質問してくるのだが、すぐに答えられる。もう何回もやって、慣れてきた証拠だ。

「説明終わり。んじゃ、ちょっとした力をあげるから、頑張ってね」

 少女にスキルを注ぐ。そして、結界を張ってから魂を転移させる。


 今日のノルマは達成だ。帰ってゲームするか。オンライン環境は無いけどね。せめてトキちゃんと一緒ならいいのになって思う。まあ、ケテルが言うには、あいつも忙しいみたいだからしょうがないね。


 それはそうと、僕がなぜこんなことをしてるのかだ。理由は単純に人手不足。転生神も戦場に行ったり、戦神の戦場との行き来が激しくなり、戦神を転移させるのにも人員が多く割かれたりした結果だ。まったく休ませると言ったのは誰だよ。


 この仕事を始める前に、スキルについて教えてもらったことがある。

 スキルって言うのは普通、トキちゃんの異能みたいのじゃなくて、単純に体力や魔力、筋力とかを上げるものらしい。ゲームに例えるなら、ステータスを上げるアイテムみたいなものかな。これが魂の力の層ということらしい。

 これに対してトキちゃんみたいなスキルは、強い望みによって、精神自体に力が宿るみたいなことを言ってた。それを得るには他人の精神をくっ付けなければならない。そう考えると、あいつは人化とか、いろいろ切れるのとか、持ってて凄いと思う。僕も魂を同調させて使えたけどね。


「居ます?」

 自室のドアを開けて、そう言った。返事はない、まだ来てないのか?

 そう考えていると、背後に気配を感じた。

「サイスさんですか?」

「ああ、今日は暇だから迎えに来た。行くぞ」

 いつ後ろにまわったんだよ。しかも、それいつも言ってるよ、毎日暇だろ。

「分かりました」

 歩き始めたサイスさんについていく。真後ろではなく、斜め後ろでだ。前に、靡いた髪が目に刺さってすごく痛かったからね。


 いつもの武器庫の横の広い部屋に着いた。

「サイスさん、いつも使ってるのください」

「私の求める剣はここにあり」

 サイスさんが詠唱するとともに、装飾のないシンプルなブロードソードが出現する。それを右手で握って、振ってみる。問題ないな。

「ありがとうございます。準備できたら言います」

「そうしてくれ、私は武器庫で待ってる」


 準備運動が終わったので、サイスさんの部屋に行き、ドアのコンソールを操作して、呼び出す。

 出て来たサイスさんは険しい顔をしていた。そして、1度ため息をついてから言った。

「残念だが、今日はできないことになった。重要な話をしたいとケテルが言っていた」

「そうですか残念です……それで、何をやらかしたんですか?」

「そうじゃない。話があるのは君だ」

 はい? 僕ですか? いや、ちょっと意味がわからいないなぁ。僕はなにもして無いと思うんだけどなぁ。

 ちょい待て、ネガティブに考えるな。もしかしたら「靈、お前仕事頑張ってんだろ。だから、一週間休みやるよ」とか言うかもしれない。

「じゃあ、僕は行くんで」

「ああ、また明日」

 僕はサイスさんに挨拶してから、ケテルの部屋の前に転移する。


 ケテルの部屋のドアをノックし、開ける。すぐ開けたら、ノックの意味ってあるのかな。まあいっか。

 中に入ると、ケテルが機嫌が悪そうな顔をしていた。

「ケテルさん、なぜ呼び出したんですか?」

「安心しろ、しかる訳じゃねぇよ」

 なんだ、やっぱりいいことじゃないか! 心配して損した。

「だがなぁ、良いことじゃない」

 やっぱり悪い話じゃないか! 歓喜して損したよ。

「ここに来てから一ヶ月経った頃のことを覚えてるか」

 一ヶ月って、ビウンとハッセンがどっか行った頃か確か時間感覚が変になってたりもしたっけか。

「お前は、その時初めて黒として戦場に行った。そして、お前は無と名乗る者を見た。それと同時に取り乱し始めた。しかもその記憶を失ってる」

 うん、知らね。てか、あの時行ったら、僕死ぬだろ。いや、ビウンが同伴とかかな。

 それより僕が取り乱すって、そんなことあんまりないと思うけど。まあ、消えそうな時とか割とそうだと思うけど。でも、それで記憶吹っ飛ぶほどか?

「その無ってのは、お前の声だったんだよ」

「は?……」

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