出張2回目
「もう頭冷えてるかぁ?」
黒い部屋……
「うん、あのときはごめん、ケテル」
いやほんと、すいません。何も考えず叫んで、すいません。
「いいよ、あんま気にしてねぇし。それより、トキから聞いたんだがフィーロッカに行くらしいな。そこで迎えを出そうと思う。お前諜報向いてないっぽいからな」
「ああ、分かった」
エリアとエイジにお別れか……
「おはようございます、靈」
「おはよう」
「二人とも、おはよう」
エリアはもう空間魔法を発動させ始めた。かなり焦っているようにも見える。僕は剣のトキちゃん、を右手に持って、魔方陣へ入る。
「では、いきます」
閃光が拡散する。
「靈様、エリア様。今、使徒は七〇人ぐらいで、俺を含めて勇者が一二人です。なぜか要塞などには攻撃しないので、持ちこたえていますが、やつらがやって来たら……」
エイジが話していると、扉が開き、人が入ってくる。
「勇者様、サース大陸の要塞が一斉に落とされました。使徒が動き始めたんです! 次はここに!」
向かっているとそう言いたいんだな。規模は違うけど、前と同じだよね。でも、今回は迎えだよね。過保護か、ってぐらいだけどね。
「靈様、トキさん、俺たちだけで七〇、仲間たちが何人か倒したと考えたら、六〇、できますか?」
「楽勝だよ」
だって、ねえ……
「敵には空間魔法使いがいるのですぐ来ます。いきますよ」
エイジについていく、ここは見た感じ、前の砦よりはいい装備してるな。それに、現地人がの魔法使いが結界魔法張ってるな。頑張ってるとこ申し訳無いけど、敵はもう中にいるんです。
「来てますね」
エイジは剣を片手に持ち、使徒の集団に切り込む。それに続いて、僕も走る。トキちゃんに魂を送る。そして、エイジの胸を貫……けていない? 切っ先は不可視の爆発を起こした。エイジは、爆風に吹き飛ばされ、地に転がる。
「トキちゃん?」
「あんた、なんで殺そうとしたの」
重く、意志のこもった声だ。
「そっか、トキちゃんは殺したくないんだね。なら、僕がやる」
体勢を立て直すエイジの首を掴む。同調、破壊、吸収を済ませる。エイジは、動かない。脱け殻になった。
使徒の一人が近づいてくる。そして、一礼した。慣れていないのか、不恰好だ。
「えーと、ケテル様の命令で、お迎えにあがられました? あがりました? まいっか、とりあえず帰りましょう」
「ああ、転送お願い」
使徒集団の魔法使いが空間魔法の準備を始める。
五割終わったというところで、光の矢が降り注ぎ、魔法の発動が中断させられる。僕とトキちゃん以外全滅か。とりあえず、出ていく魂は喰っておくか。
「邪神の使徒でしたか。最初から、そんな予感はしていましたが」
空中にエリアがいた。最初からじゃないし、使徒になったつもりはないし。やっぱり、考えに自信持ちすぎかな。
「トキちゃん、僕死ぬかも」
反応なしか、無理矢理はいやだし、トキちゃんの協力は諦めるか。
再び、光の矢が放たれる。先程と、同じように回避する。
意味ないってわかんないかな。それとも、自分は無駄遣いできるほど魔力があるってことですか。
足元の土が光る。結界? ああ、さっきのは気づかせないためね、神なのに小賢しいな。もっと派手に行くもんじゃないんですかねぇ。
うーん、体が重い、魂を潰そうとしてるな。結界のなかで、魂術とか器用だな。まあ、魂術なら、僕は負けないけどね。
さて、結界はどうするか。そう考えていると、危険を感じる。第六感に従い、空を見上げる。白く光る巨大な魔方陣が浮かんでいる。要塞の方まで届いている、大きさだ。結界が解除される。
まずい、すぐに結界を張る。小さいものを一三重にだ。それも、層の間に魂を充満させてだ。
光の天井が迫ってくる。到達までに、あと二枚張れるな。
遂に一枚目の結界に到達する。
何とか助かった、あと残り一枚か。再び、上を見て、驚嘆する。
第二射かよ、ふざけんな、もう魔力が尽きるんだよ。魂も限界だ。仕方ないな、右手に持っているトキちゃんのスキルを強引に取り込む。
地を蹴り、爆発の勢いを得て、上空に飛ぶ。魂が持っていかれる。空を蹴り、さらに加速する。魂がさらに持っていかれる。
届いたと同時に魔方陣を左手で、切り裂く。
「え!?」
エリアは戦慄とした表情になる。
「お前が飛んで、僕が飛べない道理は無いだろぉがよぉ!」
「こ、来ないで!」
左手でエリアを横薙ぎに切り裂く。そして、魂を捕喰する。
「丁寧語、崩れてるよ」
そして、おちていく。
「ごめんね、これ返すよ」
スキルをトキちゃんに返す。
そこで僕の意識は途切れる。