Answer12・合わさるピース
「ちえり、調子はどう?」
「あっ、お姉ちゃん。私は今日も絶好調だよ?」
六畳程の広さをした個人病室。明るいクリーム色の壁紙が貼られた部屋にあるベッドの上では、小さなウサギのイラストが散りばめられた青色のパジャマを着ているちえりが居る。
「うん、顔色はいいみたいね。はいこれ、家から持って来た着替えね」
「ありがとう、お姉ちゃん。いつもごめんね」
「そんなの気にしなくていいのよ」
私は着替えが入った鞄をベッドの近くの床に置き、その近くにある椅子に腰掛けてちえりの方を向く。
「ねえ、お姉ちゃん。私ね、来週の入学式には出席できそうなの!」
「本当!?」
「うん! さっき担当の先生がね、『経過は良好だから、このまま行けば入学式には出られそうだね』って言ってくれたの」
「そうなんだ。良かったね、ちえり」
「うん! これでお姉ちゃんと一緒に制服を着て入学式に出られるよ」
「それじゃあ新しい制服を出してちゃんと用意をしておくね」
「ありがとう、お姉ちゃん」
ちえりは嬉しそうに表情を綻ばせている。妹のちえりが入院するのはこれが初めての事じゃない。
初めてちえりが倒れたのは、小学校五年生のミニバスの試合中。ちえりはその時に初めて病院に担ぎ込まれて入院する事になった。あの苦しそうにしているちえりの姿を見た時は、私の息も止まってしまうんじゃないかと思うくらいに焦っていたのを覚えている。
結果的にあの時は、蓄積された肉体疲労からくるものだろうという事で一日入院しただけで終わったんだけれど、あの時以来、ちえりはちょくちょく体調を崩しては病院のお世話になるようになった。
そんな事が繰り返されてさすがにちょっとおかしいって事で色々と病院を回ってはみたけど、結局その原因を突き止める事が出来ずに月日だけが流れた。
そして小学校六年生を迎えた時、出かけ先で倒れたちえりが運び込まれた病院でその病気の正体は明らかになった。簡単に言うとちえりの抱えている病気は心臓の疾患、しかも治すには移植手術をするしか方法は無いという難病。
とりあえず原因が判明したとは言え、すぐに適合する臓器ドナーが見つかるわけもなく、その事実が判明した時には私と両親は酷く落ち込んだ。だけど当の本人であるちえりは私達とは違って明るく、心配そうな表情をする私達に向かって『焦っても仕方ないし気長に待とうよ』と言った。
不安じゃないわけがないと思う。怖くないわけはないと思う。なのに両親や私を心配させないようにと明るく振舞うちえりの優しさに、私は不安な顔を浮かべるのを止めた。
「入学式、楽しみだなあ」
「そうね」
それからしばらく雑談を交わした後、私はいつものように自分の鞄から勉強道具を出してからちえりに勉強を教え始める。
ちえりが入退院を繰り返すようになってからというもの、ちえりに勉強を教えるのは私にとっての日課になっていた。こうしてちえりに勉強を教える日々は、私にとって結構楽しく感じる。案外私にはこういった事が向いるのかもしれない。
「ねえお姉ちゃん、これってどうやって解くの?」
「ん? これはね」
病気の事があるから二人でバスケットをする事はなくなったし、生活にも色々と変化はあった。
それでも私はちえりと一緒に幸せな日常を送っていたと思う。あの時を迎えるまでは……。




