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【最弱】金コイ縛りのモンスター育成ゲーム暗躍記 ~前世のゲーム知識で黒歴史を回避していたら〈金鯉の賢者〉と呼ばれるようになっていた  作者:
10周年の黒歴史

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第15話 なないろのハネコイ

 小さな振動と共に、スマホのテラモンアプリにメッセージが表示された。


――――――――――――――――――――――――

【ゼノライズ】

 ハネコイがゼノハネコイへゼノライズされました。


 以下のゼノスキルが使用可能です。


〈フレアジャンプ〉

〈リフレクトリップル〉

〈テールスラスト〉

〈スパークフィン〉

〈ナイトバブル〉

〈ルミナススケール〉

〈シアターコール〉

―――――――――――――――――――――――――


 小技中心だが、選択肢が一気に増えた。


 何がどうなるとハネコイがこんなスキルを獲得できるのかというと……たぶん、劇場配布テラモンだ。


〈キュウペンとなないろのハネコイ〉という映画で、それぞれ特別なスキルを持った七色のハネコイのデータを劇場でダウンロードできた。


 ーーハネさん! 〈ナイトバブル〉!


”よっしゃいくでっ!”


 闇属性のむらさきハネコイになったハネさんが口から黒い泡の群れを放ち、距離を詰めようとするビシャモサを迎え撃つ。


「ビシャアアアア!」


 劇場配布特典なので、ハネコイが一気に強テラモンになるようなスキルじゃない。


 ビシャモサはお構いなしで突っ込んでくる。


 だが〈ナイトバブル〉の価値は命中率デバフにある。


 当たれば当たるほど視界が暗くなり、周囲の状況がわからなくなる。

 

 ビシャモサの攻撃を紙一重でかわしたハネさんはもう一発〈ナイトバブル〉を放ってビシャモサの視界を削っていく。

 

 ハネコイとは思えない、精密な身のこなし。


 なないろのハネコイにしてもスキルと属性が違うだけで基礎ステータスは通常のハネコイとさして変わらない。

 元ハイランカーのハネさん自身の経験とセンスだ。


 デバフを積んだら、今度はバフを積んでいく。

 

”〈フレアジャンプ〉!”


 橙色、オレンジのハネコイは火属性。


 炎を纏って跳ね上がったハネさんの体当たりがビシャモサを直撃する。


 視界は奪われているが、本能的な動きで翼を動かし、ハネさんをとらえに行くビシャモサ。


 狙い自体は正確だったが、ハネさんは素早く跳ね上がってかわし、今度はビシャモサの頭部に〈フレアジャンプ〉を叩き込んだ。


 どんどんハネコイにあるまじきスピードになっていっているのは〈フレアジャンプ〉の副次効果だ。


 ダメージは小さいが使うごとにすばやさがアップしていく。


 ペースは奪えているが、相手のテラモンは2匹いる上、六根丸はリーダーにダイレクトアタックをかけてくるタイプの反社会的テラモンリーダーだ。


 血走った目でオレを見据え、地響きをあげて迫って来る。


 張り手の一発でも食らったら即入院ものだろう。


”やらせんで”


 ハネさんは再び〈テールスラスト〉、ビシャモサそのものを飛び道具にして六根丸に叩きつけた。


 六根丸は吹っ飛んできたビシャモサに足を取られてよろめき、転倒した。


「……ッ! 馬鹿野郎がッ!」


 激昂した六根丸譲司はビシャモサに張り手を入れる。


 ビンタや鉄拳制裁というレベルではない。


 コンクリートに叩きつけられたビシャモサの頭が鈍く不気味な音を立てた。


”最悪やな”


〈欺瞞のユートピア/烙印のディストピア〉で神喰丸を「テラモンと調和できない人間は皆殺しだ」という結論に導いただけのことはある。


 ビシャモサのほうももうリーダーを見放して良さそうなものだが、こういう人間に限って他人やテラモンの支配能力だけは高かったりするものである。


 ビシャモサは立ち上がり、ハネさんに向かって動き出す。


”……しゃーないな……”


 なんとも言えない調子で呟いたハネさんは雷属性のきいろハネコイに変化した。


 ビシャモサの仲間意識、あるいは粗暴なテラモンリーダーへの恐怖からか、コンドルフが動き出し、側面からハネさんに襲いかかる。

 

 コンドルフは空属性のテラモンである。


 苦手属性は雷と闇。


 雷は羽根を痺れさせ、闇は飛行に必要な視界を奪う。


 ついばみ攻撃の〈ペッキング〉をかわしたハネさんは、帯電させた背びれで斬りつける麻痺・電撃スキルの〈スパークフィン〉の一撃でコンドルフを麻痺させた。


”そのまま寝とき”


 地上に墜落したところを〈ナイトバブル〉でノックアウトさせた。


 相性勝ちで完封。


 麻痺が一発で入ったラッキーが大きいが、進化度やレベル的には大物食いとなる。


 レベルが一気に2上がって18に到達する。


 よろめきながら前に出るビシャモサ。


 その背後で、六根丸は腰からなにかを取り出した。


 コーヒー缶サイズ。

 傷のようなマークが入った金属缶。


 ゼノドープ缶。


 ゼノライザーのような複雑な行程は経ず、ただテラモンの周囲にゼノライズ粒子をぶちまけることでゼノテラモン化を引き起こす乱暴なアイテムだ。


 荒い息を吐きながら、六根丸はゼノドープ缶のプルトップを引き、ビシャモサの足下へと投げた。


 緑色の光を放つ粒子が煙幕のように撒き散らされ、ビシャモサの有り様を変質させていく。


 やがて全身をサイボーグ風の金属の装甲で覆い、尾羽根の代わりにムカデのようなマニピュレーターを生やしたビシャモサが姿をあらわす。


 ゼノビシャモサ。


 近未来風。〈欺瞞のユートピア/烙印のディストピア〉に登場するサイバーフォームのテラモンの可能性を取り込んだゼノテラモンだ。


「……ぶち殺せ」


 六根丸はにたりと笑って言った。


 だが、ハネコイ一匹にゼノを出すのはさすがに大人気なさすぎる上、無謀過ぎる。


 次の瞬間。


「……ビシャ」


 どご。


 ゼノビシャモサが振り上げたムカデ風マニピュレーターの一撃で、六根丸譲司は吹き飛ばされていた。


 気は失っていないようだが、口から血反吐を吐いて蹲るのが見て取れた。


 案の定B型化している。


 次のターゲットに認定されたのか、ゼノビシャモサがこちらに向き直る。


「……ビシャ」


 脚部に取り付けられたモーターユニットを起動。ゼノビシャモサが加速を開始する。


”ゼノ同士やとさすがにきつい……ちゅうか”


 ハネさんの体の七色の光が消え、元の金色のハネコイの姿に戻る。


”魔法が切れてしもたな”


 ゼノライズの効果時間が切れてしまったようだ。


 さすがのハネさんでも、ゼノビシャモサをひとりでどうこうするのは厳しいだろう。


 だが、まぁ。


 ――あとは、メインキャラに任せればいい。


「しゅれにゃ!」

「ユリィィィィ!」

「ビビビビビビビビ!」


 神喰丸のシュレベロス。


 薔薇塚ランガのユリコーン、ビーハチの3匹が次々と姿を現し、ゼノビシャモサを取り囲んだ。

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