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【最弱】金コイ縛りのモンスター育成ゲーム暗躍記 ~前世のゲーム知識で黒歴史を回避していたら〈金鯉の賢者〉と呼ばれるようになっていた  作者:
10周年の黒歴史

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第12話 マッドタワー

【神喰丸視点】


 マッドタワーの一階から七階はブラックマーケット。


 かつてはテラモン関連ショップを中心に様々なアパレル、飲食店、家電量販店、ブランド直営店、映画館など軒を連ねるショッピングモールだったが、現在はテラモンに派手な武装やデコレーションを施して行うマッドマッチ用アイテムの店が大半を占めている。


 テラモン用のアーマーやアイアンクロー、金属バット、チェーンソー、スタンガン、パイルバンカー、ショットガンにテイザー銃。テラモン相撲の親方である神喰丸からすると眉をひそめたくなるアイテムが堂々と並べられ、重武装をしたテラモン同士がフェンスや有刺鉄線で囲まれたり、地雷が設置されたりしたリングで死闘を繰り広げる映像が流されていた。


「これでも以前よりはずっとましになりましたのよ。以前はマッドマッチグッズどころか、誘拐テラモンですとか、改造テラモンボトルや盗品の類まで普通に扱っていましたわ」


 薔薇塚ランガが言った。


「マッドマッチグッズは合法なんでしょうか?」


 普通に銃刀法に引っかかりそうなアイテムばかりである。


「外の世界では非合法ではありますけれど、リング上で破壊属性のテラモン同士で殴り合っているだけですから見かけほどの実害はありませんわ。このタワーを仕切るマッドタイクーンが代替わりして、多少ですけれども健全化の方向に向かっているようですわ」


 破壊属性は、名前の通り破壊を得意とし、破壊を好む属性だ。


 この属性を持つテラモンは破壊や戦闘を行わないとストレスを抱え、健康を損ないやすい。


「少なくとも誘拐テラモンや盗品、危険薬物の類は排除する方向に向かっています」

「テラモン犯罪は排除されていると?」


 比嘉刑事が疑わしげに言った。


「外部のイメージよりは多少マシ、という話ですわ。もちろん、テラモン誘拐犯が普通に潜伏できる程度のものではありますけれど」


 ランガはインテリヤクザ風サングラスを光らせて言った。


 サイのような角と体躯を備えた超巨大ハリネズミのライノホッグ。

 鎧武者系のシルエットだが尻から猛烈な高温ガスを出すウルトラゴミムシャ。

 ポメラニアン似のかわいらしい見た目だが「せかいいちどうもうかもしれないテラモン」の異名を取るドドポメラといった破壊属性テラモンがヤカラ風のテラモンリーダーたちに伴われて行きかうフロアを進み、エレベーターに乗り込む。


 時折エレベーターに乗り込んでくる世紀末系ファッションのマッドマッチバトラーと目が合ったり、目をそらされたりしながら目的地、マッドタワー17階へと到着した。


 元々は正規のテラモンマッチの選手控室やシャワールームとして使われていたフロアだが、現在はマッドマッチバトラー向けの簡易宿泊施設となっている。


 受付のカウンターには気の強そうな70代ほどの女性と、ワイトンコツというローブ姿の豚のガイコツ型テラモンの姿があった。


 ホスピタリティを売りにする業態ではないのだろう。無言で視線を向けてきた女性に、ランガは「失礼いたしますわー」と声をかけた。


「少々人を探しておりまして。こちらの殿方に似た体型の方が、こちらに泊まっておられませんかしらー、隠すとためになりませんわよー」


 出だしは丁寧だったが後半は乱暴になった。

 女性はふん、と鼻を鳴らし無視を決め込む。

 比嘉刑事が警察手帳を出した。


「警視庁テラモン課です。テラモン身代金誘拐事件の捜査をしています。ご協力を」

「テラモン誘拐事件の犯人を逃がしたとなると色々面倒なことになりますわよー」


 ランガが重ねて脅しをかけると、女性の傍らのワイトンコツがプルプルカタカタ震えだす。


 警察やランガが怖いというのではなく、マッドタワーのトップであるマッドタイクーンがテラモンの誘拐、密売には厳しいというのがあるらしい。

 

 女性は観念したように「奥の7号室、あんたたちで2組目だよ」と答えた。


「2組目? どういうことですの?」

「トイチファイナンスの連中が借金の取り立てに来てるのさ」


 いわゆる闇金だろう。


 簡易宿泊施設の奥の方から「六根丸ゥアッ!」「出てこいオラ!」「なに隠れてんだコラァ!」「ドアァぶちやぶれウルァ!」という罵声が聞こえた。


「急ぎましょう」


 借金のカタにドヒョウガメのボトルを押さえられでもしたら厄介なことになる。


 まっすぐ奥へと足を踏み入れると、古式ゆかしいチンピラヤクザ、といった雰囲気の派手なスーツの男が6人、ドアの前に群がっていた。


 それとバールをくわえたタカ型テラモンのサシバール。

 

 神喰丸の姿に気づいたチンピラのひとりが「兄貴!」と声をあげる。


「六根丸です!」


 力士体型同士で、六根丸と誤認をされたらしい。

 六根丸譲司の本名は飛田だが、こちらでも六根丸と呼ばれているようだ。


「おいこら六根丸、金も返さんとどこいって……」

「こちらの方は六根丸様ではありませんわよ。こちらも六根丸様から取り立てに参りましたの」


 ランガが笑顔で告げると、〈兄貴〉らしいチンピラが「あんたか」と呟いた。


「タクシーの運ちゃんがどうして借金の取り立ての真似事なんざ」

「ちょっとした成り行きがございまして。六根丸様が私のお客様のテラモンを誘拐してこちらに潜伏しているということで、回収にうかがいましたの。お手数ですが、六根丸様の身柄を抑えられましたら、テラモンのボトルをこちらに渡していただけますこと?」

「なに言ってんだゴルァァ!」


 うなり声をあげるチンピラ。


六根丸(るうぉっこぉんまぁ)の持ち物はケツの毛一本まで俺等のものなんだよォッ!」


「それでしたら、皆様を蹴散らして六根丸様の身柄を抑えてもかまいませんことよ?」


 悪戯っぽく笑うランガ。

 相手が悪いと悟ったのだろう。〈兄貴〉は鼻で息をついた。


「……仕方がねぇな。テラモンのボトル一本だけだ。あとはぜんぶこっちでおさえるぜ」

「そこはご随意になさいませ。お客様もよろしいですわね」

「はい」


 ドヒョウガメを取り戻すことが最優先と判断し、神喰丸はうなずいた。


 同行している比嘉刑事はあまりよろしくはないはずだが、ここで身分を明かしてもめるメリットはないと判断したようだ。


「見ても聞いてもいなかった」というように、天井に目をやっていた。


「よし、ぶち破れ!」

「バルッ!」


 サシバールが撃ち込んだバールを掴み、チンピラたちがドアをこじ開けに掛かったが、なかなからちが明かない。


 その向こうで、バン、と何かが破裂するような音がした。


「なんの音だ?」

「野郎! ガラス割りやがった!」


 追い詰められたとみて、窓ガラスを割って逃亡を図っているようだ。


「オレがやろう」


 神喰丸はバールを掴んで一気にドアを引き裂く。


「うお!」

「すげぇ!」

「やるじゃねぇか」


 チンピラ達が驚嘆の声をあげる。


 ドアの向こうは、2畳ほどの狭い部屋。


 だが、既に六根丸の姿はなく、ドヒョウガメのボトルもなかった。


 ドアの向こうの窓が粉砕され、風が吹き込んでいた。


「野郎ゥァッ! 飛びやがったァッ!」


 チンピラのひとりが叫ぶ。


 窓から外を見下ろすと、マッドタワーの前方を大型のコンドル型テラモン、コンドルフが飛んでいくのが見えた


 翼幅4メートルにも達する、飛行型としては最大級の巨体を誇るテラモンで、飛行力も極めて高い。


 六根丸の体重は現役時代の公称で180キロになるが、脚部に取り付けたパラグライダー風のハーネスでしっかりと体重を支えて滑空していく。


 ――まずい……。


 腹の底が冷えていく。


 目の前が暗くなっていく。


 ただ逃げただけならまだいいが、神喰丸たちに尻尾を掴まれたことに気づかれたかも知れない。


 自暴自棄になってドヒョウガメを殺そうとするかもしれない。

 

「逃がすんじゃねぇ! 追え! サシバール!」

「バ、バルッ!」


 チンピラの命令を受けたサシバールが窓から飛び出すが、トレードマークのバールが邪魔で飛行速度が足りない。瞬く間に引き離されていく。


「お客様! 追いますわよ!」 

「ユリッ!」


 ランガ、ユリコーンと共にエレベーター前へと駆け戻り、伊勢界人に電話を入れた。


「神喰丸です! 六根丸がテラモンで飛んで逃げました。そちらから目視できるでしょうかっ!?」

『ああ、はい、それでしたら……』


 界人は落ち着き払った様子で応じた。


『ハネコイをぶつけて不時着させました。今は近くの遊園地跡に降りています』

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