第10話
第三十七章 要塞町カムレ再び
あの後は特に問題なく……いや、すれ違い追い越した人々にあまりの速さを驚かれたりしたが。カムレに到着し、臨時収入を得たのだが、町の雰囲気が前回とはガラリと違っている。
お祭りを前にした高揚感と、いつ戦争が始まってもおかしくないような緊張感がないまぜになっているような感じだ。
実里はその雰囲気に当てられ、身体が強張っているのに自覚がでるほど。
そんな彼女の背をポンとシルヴィが叩いた。
「ミノリのお陰で早く着いたんだ。今からその調子だと持たねぇぞ」
そう言われるが、今は頷くだけで、この空気に慣れるまでもう少し時間がかかりそうだった。
町は今、通りは飾り付けされ、肉屋は燃料や解体道具の手入れに勤しみ、商人は商品の受け入れ準備を進め、広場では町人達が所狭しと戦闘訓練に励んでいる。
何も知らなければ異様ではあるが、町人達にとっては恒例なのだろうか、どことなく楽しそうな雰囲気も感じ取れる。
宿を取り、明日からの予定を話し合う。現在はまだウルフの禁猟期間。よって、実入りは少ないが、森との境界での巡回依頼を当分の間受けることになった。何せ、到着日が十日も前倒しとなっているのだ。仕事のない町で冒険者がやれることは、この時期にのみ発生する巡回依頼だけである。
それから数日、巡回依頼を進めていると、たまに森から出てきたウルフと遭遇する。
この依頼の本質は、森から街道に出てきたウルフを排除することなので、三人やたまに合流するほかの冒険者と共に処理をする。
また、森の中での狩猟では、肉を放置することを推奨とされていたが、外ではしないようにと言われている。
今までなら冒険者達は狩る度に町まで運び帰っていたのだが、ここには実里がいる。
「こんにちはー、良かったら載せるー?」
「おっいいのか? なら少し借りるぞ」
実里の荷台に倒したウルフを載せてそのまま巡回を続けるので、このように他に狩った冒険者の獲物も載せて少しのお小遣い稼ぎをしていると。いつの間にかかなりの規模の集団となっていたこともあった。
ウルフも馬鹿ではない。冒険者が一つの集団となってしまっては手薄になるところがでるわけで。
そこから出てきたと怒られる日もあった。
ならばと実里達も都度戻ることにし、ついでに帰還する冒険者を拾っては高速で巡回に復帰するという手法を取れば。
それはそれで冒険者達の包囲網により、ウルフ達も出てこなくなり、巡回が退屈だと言う声も聞こえるようになってしまった。
しかし、巡回は被害が起きないようにするものであり、出てこない分追加収入が無くなるだけで、ギルドからの基本報酬はしっかりでているため、深刻な不満には繋がらないのは幸いか。
そして、本来の到着予定日から数日の後。
朝早く町全体に聞こえる緊急の鐘が多く打ち鳴らされた。
第三十八章 祭
その鐘の音を襲撃の合図と取った実里は、大慌てで迎撃の準備を宿の部屋で始めるが、普段通りに落ち着いているシャーリーが実里の元にやってきた。
「ミノリさん、今からの事なのですが、ジュウを使わないで頂けると助かります」
その言葉に疑問を覚えるが、この世界の事はずっと彼女の方が詳しいのだ。実里はそれに従い、シャーリーに装備をどうしたらいいか聞きながら、準備をするのであった。
実里達が門にたどり着くと、そこには町内全ての老若男女がダマスカス鋼製の武器を持って集まっている。
実里が困惑し、シャーリーとシルヴィはワクワクを隠せていない。
少し待つと、一人の男性が壇上に登る。
「ミノリ、あれが町の代表だ」
シルヴィの声に改めて代表の姿をみれば、腕の筋肉がかなり発達しており、腕をよく使う仕事をしているのだと見える。
よくみる貴族のような知識系のような雰囲気は全くなく、どちらかと言えば職人といった風情だ。
「皆、肌寒くなってきたが、よく集まってくれたことに感謝する! 今年もこの時期がやってきた! 皆も楽しみにしていただろう! 故に多くは語らん! これより、謝肉祭の開催を宣言する!」
簡素な代表の宣言に町民が裂帛の叫びを上げ、門が解放された。
その門に町人が雪崩れ込む様は、まるで一昔前にあった、年二回ある大規模同人誌即売会の始発ダッシュの様相か。
呆気にとられた実里は出遅れるが、シルヴィ達になんとか追いついてから、「これ何」と聞いた。
「謝肉祭だよ謝肉祭。町のみんなで増えに増えたウルフを狩りまくるんだぜ」
「わたしの知ってる謝肉祭と違う……」
実里は苦笑いを浮かべるが、この様子だとシャーリーが銃を禁止した理由もよくわかる。実里も誤射する自信しかない。
さて、謝肉祭を騙った大狩猟大会とはいえ、その様相は、森のウルフ対カムレという戦争だ。更に個人戦力としては、ウルフは鉄、カムレの民は皆最低でも銀級。戦力差は圧倒的にも程がある。
群れで襲いかかってくるウルフたちを、危なげなく町人達が捌いているのだ。
実里も日本刀を抜いて狩ってはいるものの、町人達の動きに目を見張るばかり。実里よりも簡単に倒すその様を見せられ続け、挙げ句に。
「わたし要る!?」
と叫ぶのであった。
狩猟している人達の後方には多くの馬車が待機しており、冒険者や町人達が狩ったウルフが後方の人達により続々と運び込まれる。
そして馬車が満タンになり次第、町へと運ばれていくウルフ。
そのため、討伐隊が進んだ跡にはウルフの死骸が残っていることはなく、比較的綺麗な進行跡だけが残っていたが、進めば進むほど荷台が間に合わなくなり、積み込み場所にはウルフの山が築き上げられていく。
討伐終了を宣言される昼過ぎにはもう、山がいくつかできあがる始末。
実里も本来は討伐側なので、あとは帰るだけなのだが。
「そこの嬢ちゃん! 町に来たとき変わった荷台を持っていたよな! それもどっかから出したり消したりして! それで運ぶの手伝ってくれ!」
ほかの商人から荷台を持っていることがバレ、山積みのウルフを乗せて帰る羽目になったという。
「よーし、ここで止めてくれ! お前ら! 下ろすぞ!」
持ち帰ったウルフは一旦町のものということで処理されるため、町に着くや否や残っていた町人総出で一気に降ろされる。
そして肉屋等解体や加工を担当する人達がどんどん処理をしていき、振り分けられて送られていく。
このあたりは機械で処理されているのかと思えるくらい早く、長年の経験による手際の良さや効率化がよくみえる。
再び実里が荷台にウルフを乗せて戻ってくる頃には、至る所から調理や燻製の煙が登っていた。
「お疲れー」
冒険者など狩猟組の仕事が終わり、労いの声がかかる。
「おつかれぇーー」
その中でも実里はぐったりとしていた。
それもそのはず、参加者の役割は狩猟、運搬、加工と三つに分けられていたが、実里は不服にも狩猟と運搬の二つをこなしていたのだ。
ほかの人たちよりも多く働いているのだから疲れるのも仕方がない。
おまけにウルフの搬送が終わった後、余った荷台は狩猟組を乗せて戻るという無駄のない仕様である。
「あの荷台、使うのやめた方がいい?」
「私達は助かるので、使っていただけるのは嬉しいのですが……」
「優秀過ぎるのも困りものとはこういう事を言うんだなぁ」
「それはそうかもしれないけど、何か違う気がする」
そんな悩みを漏らし、みんなして考えるこのパーティーである。
「そういえば、このお祭り……というか、町の人の手際がものすごくいいんだけど、昔からあるの?」
宿に帰る最中、そんな質問をするが、いつ始まったのかは二人も知らない様子。
ただ言えることは、貴族が存在していた時から既にあった事と、今でも王様は頭を悩ませつつも黙認する祭なのだそうだ。
詳しく聞けば、元々この町はこんな城壁を持っていなかったようで、簡易的な木柵で囲っている程度だったそうだ。
それをここの貴族が毎年決まった時期に『魔物の大襲撃が来た』と何度も訴えたので、王は町の城壁建築を指示し、補助金も出していた。
しかし、監査のために帳簿を見れば、不審な点が出てくる。
城壁建築等、防護工事はつつがなく進んではいるものの、魔物襲撃の後に多くの未報告収入がある。それも、補助金を不要とするどころではない額だ。
では、そのお金はどこに行ったのかと言うと、お約束の通り貴族が着服していたという事に。
当然王は怒り、その貴族は取り潰しになったという。
それに伴い、収入源として発覚した祭りも調査されたが、こちらは悩ましいことに。
この森のウルフは実里に「ハツカネズミか!」と言わしめるほど生殖サイクルが短い上に繁殖力が強く、少しでも放置していると、森の外にウルフがどんどん出てくる程である。
そこに目を付けた貴族があえて、餌が残るように冒険者の持ち帰りを指導して増やせる下地を作り、更に禁猟期間を設けて爆発的に増やす。
そして、それを国中で慢性的に食料不足となる冬の直前で大々的に狩ることで、冬の食料を確保する事になり、特需で大儲けするという寸法だ。
この祭りに協力してくれた商人や冒険者には恒例として保存食加工された肉が報酬として贈られる。この時期だと、自分で食べてもよし、売っても高値と好評である。
では、何故王がこの祭りに頭抱えているのかというと、禁猟期間における安全性の低下だ。
サツタが襲撃事件多数発生と報告したように、この国の住民ならともかく、他国の商人からすれば、通ることすらリスクとなる。
故に禁猟期間を設けずに恒常的に狩ればよい。という話になるのだが、実際、この祭りにおける影響度はこの国においてかなり高い。
町人のストレス解消、多くの地域で発生する冬季性食糧難緩和とメリットも大きい。
悩んだ結果、狭域の危険性よりも、広域の生存率を取り、今も続けられているという。
そして、貴族時代のような不正がないか、王からの使者がこの地に毎回遣わされているようだ。
「王様も大変だねー。毎回ここに人を送るなんて……って、王都ってどのあたり?」
実里は感心するが、王都の場所を知らないことに気が付いた。
「王都はここからだったらヘイブを通ってさらに北よりの西へ歩いて七日だな」
「王都につながるだけあって、一日毎の距離に宿場町や村もありますので、余程な事がなければ野宿の心配もありませんが……ミノリさんの便ですと、ここから四日くらいで着きそうですね」
「ショウニンコワイショウニンコワイショウニンコワイ」
例の荷台を作って運用してからというものの、商人達によく囲まれるのだ。
ベアリングやサスペンションといったオーパーツは木箱みたいな外装で目隠しをしているが、それでも流石に荷台が揺れないのは目に付くようだ。
なお、履帯の方でもまだ囲まれるが、こちらはヘイブの冒険者ギルドを通して商人ギルドに「水車や風車の力をいつでもどこでも引き出せるようになったらヒントをあげる」と公言したので、それを知っている商人は実里に近づく事がすくなくなった。
だが、ヒントを貰えるのは履帯だけで、荷台については何も言われてない。ならば、直で見るしかない。となるわけで、追っかけが発生しているのだ。
ならばヒントとして『油』など言おうものなら、ただでさえ現代と比べて遙かに高い食用油がさらに跳ね上がるのが簡単に予想できるので、そんな事は言えない実里であった。
さて、実里達がのんびりしているように、このお祭りは加工のタイミングに入ってしまえば、冒険者はもう特にやることはない。数日間はただ完成を待つだけだ。
とはいえ、一応ギルドに行って、加工品の運搬程度の仕事はもらえるのはもらえる。しかし実入りも少ないので、よっぽど食い詰めている人しか受けていないのだ。
つまりは暇である。
幸い実里にはまだ作っていないプラモパーツ・キットがあり、シャーリーにも作らせる約束があるのだ。
こんな完全な待機時間はなかなか取れないということもあり、それらを消化する事にした。
第三十九章 競作
急かすシャーリーからお金を預かり、内訳がどれくらいになりそうか伝えてから買いに行った実里。
当たり障りのないものと釘をさされているため、選べる物は限られている。
プラモデル製作における必要な工具一式をカートに入れ、ディスプレイからキットを探す。
シャーリーの希望は実里と同じようなもので、装備付き。なのだが、売っている物は基本的に銃などの現代装備ばかりだ。中世時代に合うような装備のキットなどそうそう無い。 となれば、素体と追加パーツで構成するのも有りだとは考えるが、狭義の意味では、リクエストから外れてしまう。
実里の物と比べて頭一つ分大きさが小さくなってしまうが、その代わり、問題無さそうな装備のものが多いシリーズを買うというのも手かと、実里は散々に迷った。
結局、実里と同じスケールのハルバードを持った純白の女騎士──にしては、装甲面積が少ないが──が描かれたキットを選んだ。預かり金の残りも銅貨数枚と言ったところか。
実里もまた、別の道具を買いそろえ、急いで宿に戻った。
「これが私の分ですか」
シャーリーは渡された箱をまじまじといろんな角度から見ていた。
書かれている言語は日本語のため、彼女には読めない。なので、実里が翻訳して読み上げてもいる。まあ、実里が発した言葉は自動的に翻訳されるので、実里はただただ読み上げているだけだが。ついでにと、よく使われるアルファベットやアラビア数字も紙に書いて、対応表のようにして渡してある。
工具も使い方を教え、実里もジュンのキットを用意して、二人揃って開封する。
なお、シャーリーは開け方がわからず、側面の下から指を入れて破こうとした場面もあったが、そこはしっかり止めて事なきを得ている。
「ミノリさん? これ、多くないですか?」
多くのビニール袋に入った小分けされたランナー達を見て若干絶望の表情を見せるシャーリー。
「大丈夫、そっちの方がまだ少ないよ?」
そう言って実里も中身を見せるが、それでもシャーリーの顔は晴れない。かなり不安のようだ。
「慣れだからね。どんどん作っていけば、それくらい普通だと思うよ」
そう言いながら実里は小分けのビニールをどんどんバリバリと破り、説明書を見ながら必要なランナーを手際よく仕分けていく。
工具の使い方を教え、各々作業に入る。シルヴィはシャーリーの横に座り、一緒に文字の解読をしている。
ぱちり、ぱちりと実里のニッパーが音を出して部品を切り出していく。ちらちらとシャーリー達を見れば、ランナーを切る度に宇宙猫のような表情になっていくではないか。
「ミノリさん、ミノリさんのと違って、切った時に音が出ないのですけど、なんなのですか? これ」
「それ、すごいよねー。高級品だけあって切れ味凄いし使いやすいよねー」
そんな返答をすれば、高級品というワードに二人はどういう事だと詰め寄られる。
「い、言い訳させて? あそこ、そのレベルのしか売っていなかったんだよ? わたしだってエントリーモデルが売っていたらそっちにしていたからね??」
「その言葉は理解できませんので、私達に分かりやすく言ってください」
ずいずいと詰め寄る二人に実里はたじろぎ、何とかして例えを考えた。
「えっとー、これから冒険者ギルドに登録する人に鉄の剣をプレゼントしたかったけど、どこにもないから、仕方なく唯一残っていたオリハルコンの剣をプレゼントした。みたいになるか、な??」
「ミノリさんのそれは、どれくらいになりますか? 品質として」
「わ、わたしのは二ランクくらいは下がる真ん中辺りだけ──」
「ダマスカスクラスで十分ですから! オリハルコンクラスなんて怖くて使えません!! 交換してください!」
実里の言葉を喰ってまで、シャーリーは涙目に近い状態になりながらも手放したかったようである。
何度か使い比べさせて、説得したからだろうか。はたまた、冒険者の経験から刃物の善し悪しも分かってしまうのだろう。戸惑いつつも、高級品の方を使うことにしたようだ。
その作業の中、実里はふと手が止まる。
そこは、ある選択式のパーツ。二つは機能を備えたフラットなもの。それに三ミリ軸の穴がついたもの。もう二つは球を二つ並べ、上からモスグリーンの布を被せたようなものの大きさ違い。
つまりは胸部装甲である。
ふと、シルヴィと実里自身のものと見比べ、少し想像してしまう。その豊かな装甲をもった自分自身が動く事を。
「どうした? ミノリ。あたしを見て」
「あはは、な、何でもないよ」
しかし、クラスメートから聞いた、豊かなものは豊かなものばりに大変であるという話を思い出す。馴れないバランスで戦闘中に姿勢を崩すのはよくないと、身の丈に合ったフラットなものを選んでいた。
しばらく後にシャーリーの方も同じ工程にたどり着き、シルヴィに理由を察されたが、何故そこを気にするのか理解が及ばないようで、首を傾げていた。
実里は知らないことだが、この中世当時の男は胸よりも脚を魅力的と感じるようで、実里が気にする胸部装甲など二の次であったそうだ。よって、女性の方も気にするのはそっち側になるため、胸部装甲の違いなど現代と比べれば薄いのだろう。
「ここは、シルヴィに似せておきましょうか」
「おいおい、あたしに似せなくていいんだぞ? 動きやすく小さくていいんだよ」
二人もそんなノリであり、特に気にした様子が無いのだ。
作業も進み、シャーリーが素体となる人部分を完成させた頃、シルヴィが作業を止めさせた。
気が付けば日も沈み、下の階からは夕食の香りが漂ってくる。
「これ、集中していますと、時間が消えますね。慣れているミノリさんでも時間が足りないと言われる理由がよくわかります」
「オマケに何か手を入れてなおシャーリーより速いしな」
そんな感想を言う二人。なお、実里の現在している作業は、武装部分のスミ入れという、溝にインクを入れてディテールアップさせるというもの。
これをするだけでも、出来の印象が変わるのだ。
三人は食事を終えた後、それぞれの部屋に戻り、その日の作業は終わ……らなかった。
実里は残ったスミ入れと、宿からもらえる身体を拭くための湯を使って、自分の分の水転写デカールを済ませる。いきなり詰め込まず、初心者にはゆっくりと、そのタイミングが来たときに教えればいいと思って。
翌日も二人のプラモ作成は実里の部屋で続けられる。
とはいえ、両者ともに武装を作るのみであり、シャーリーは後、パーツを切り出すのみだったりする。盾はまだしも、特殊剣でもない限り、剣に組立はないからだ。
「それにしても、楽しみで寝られないというものを初めて経験しました。冒険者となって、野宿で寝にくいことはありましたが、こうも寝られないとは」
そうシャーリーは言うが、さすが冒険者と言うべきか、寝不足といったものは感じられない。
実里は苦笑いしながらそれに同意する。
彼女とて、幼い頃はよく学校行事でそう言うことがあったからだ。
結果的に実里の方が後に終わり、テーブルの上に二体の美少女プラモが並ぶ。かたや騎士。かたや空戦。詳しく知っていれば何ともな取り合わせだが、何も知らなければただのカッコかわいいフィギュアが並んでいるだけだ。
その後二人はそれぞれシーンを話し合ってポーズを取らせたり、差し替えてどういうのがいいのかと談義したりして楽しんだ。
そして数日後、ギルドから祭りの報酬として、腸詰めやらベーコンの薫製などを渡された。
それもひとりで食べきるには何日かかるのかと言うほどだ。
「あの、私の量多くない?」
「他の冒険者とかから聞きましたよ。狩猟をして、自前の荷台で運んだと。その分です」
そんな実里に渡された量は他の人と比べて半量ほど増量された程。
そりゃ売る人も多いわけだと納得する彼女である。
さて、祭の報酬を受けとった三人は、次の移動に向けての最終調整をする。
行き先は二人の希望で王都オルディだ。そこに配達するための荷物を二人が受け取ったからである。
そして、旅立つ三人。荷台と履帯が石畳を蹴る音が街道に響き渡り、雑談もまた話を咲かせながら、三人の旅は続く。
前書き・後書きではお久しぶりです。 8byteです。この辺りで1巻分、八万文字を想定して書かせていただきました。
申し訳ないですが、書き溜めを作りたく、しばらく更新はお休みさせていただきたいと思います。
できるだけ早く再開するつもりではありますが、復帰後もまた読んでいただければ幸いです。