終章ー6
王都に戻った私たちは、三人そろってシアンテ公爵邸を訪れた。
リナはこれまでの事をリュドミラの両親にも謝罪したいと願った。そのようなことはする必要ないのに、彼女は譲らなかった。きっと彼女の中のけじめなのだろうと感じた。
「リュドミラ!!おかえり!!元気になったんだね!本当に良かった。」
お父様もお母様も出迎えて早々泣き出してしまった。
「お父様。お母様。ご心配をおかけしてしまって本当に申し訳ございませんでした。しっかり療養できました。もう本当に大丈夫です!素晴らしい機会を与えて下さってありがとうございました。」
リュドミラも涙を浮かべながら二人を見つめ感謝の言葉を添えた。両親は本当に喜んでくれた。
「シアンテ公爵。今まで私の不甲斐なさでリュドミラ嬢を傷つけてしまった。申し訳ない。私はこれから先も償い続けながら彼女を妻として愛し続けたい。どうかリュドミラ嬢を私に与えてくれないだろうか。」
「殿下。私は貴方を試しました。娘が殿下と一緒に戻ってくるならば受け入れようと心に決めておりました。娘が決めたのであれば、私は喜んで娘を差し出しましょう。どうか、どうかリュドミラをよろしくお願いいたします。」
お父様は深く頭を下げてシリルを敬った。きっと言いたいことは山ほどあるだろうに、リュドミラの幸せの為だけに動いてくれるお父様を感謝する気持ちしかなく、心の中は暖かく嬉しい気持ちでいっぱいになった。
「こ・・公爵様。わ・・私もお話をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「君は・・・アルテンド伯爵家の?構わない。許そう。」
「ありがとうございます。私は、シリル殿下に王都に連れてきてから様々な嫌がらせを受けました。それはご存じかと思いますが、私が殿下と恋仲にあると噂が広がっていたからです。困っている私を、リュドミラ様は優しく手を差し伸べて下さり、仲良くしてくださいました。そして、今では親友と呼んでいただいております。私の人生を変えて下さったこのお二人に、私は心から感謝しております。また、これからもお二人の為であれば、どんなことをしてでもお助けしたいと心に決めております。
リュドミラ様にも、公爵夫妻にもご不快な思いをおかけして申し訳ございません。どうかこれから先もリュドミラ様の友でいることをお許し下ください。決して後悔されぬよう努めます。」
リナは自分の想いを真摯に伝え、深々と頭を下げた。
「リナ・・。」
「貴女はとても誠実なご令嬢なのだね。私の娘にこのように心の清らかな友人がいてくれることを誇りに思う。これからも娘をよろしく頼む。」
お父様はリュドミラの案じる心を察してくれたのだろうか。こちらに目配せをして、やさしい声音でリナに話をしてくれた。
リナは涙を流しながらずっとお礼の言葉を述べていた。
(――戻ってきたのだわ。)
***
それから王都は騒然としていた。
リュドミラたちの闇市の任務が王国のみならず隣国にまで影響を与えていたからだった。国王陛下と謁見の際には、今回の任務を最高に良い成果として残したことを称えていただけた。
なんと今回の闇市の捕縛者の中に、隣国の大物貴族含めた貴族が5家紋もいたらしく、隣国は対応に追われており今後良い交渉材料になると陛下は非常に喜んでいた。また、闇市に来ていた客は貴族であり、王国内の腐敗の影響を与えるような貴族がほぼ全員捕まったのだ。王宮の人事は現在大忙しで人員補給に急いでいるとのことだ。あの闇市がどれだけ大きな事件だったのかと心の中で驚愕した。
陛下は褒賞として沢山の褒美を下さったが、その中でも最も嬉しかったのは、リナがアルテンド伯爵家を継ぐことが許されたことだった。平民だった彼女は、今回自分の命を顧みず、自ら囮となって速やかに任務を遂行できるよう尽力したと認められたのだ。その功績なのだが、更に今後リュドミラが王宮で暮らす際には相談役となることもお許しいただいた。彼女にとっては信じられない事だったようで、しばらく放心状態だったが、翌日以降には大喜びですごい騒がしかった・・。
リュドミラは自ら敵を誘い出す囮として3か月動き続け、婚約者であるシリルを補助したと認められ、【一つだけ願いを叶える】という褒賞をいただいた。
その褒賞を、白色病の患者たちの今後の為に王国の財を使用することの許可をいただいた。
国王陛下との謁見後王太子の婚礼準備は始まり、翌年には大勢の国民の前でシリルとリュドミラは夫婦となった。
王太子妃となったリュドミラは、積極的に国中の孤児院や、病に苦しむ人々を助けることに尽力し、白色病のイメージを払拭する行動も積極的に行った。夜会には夫と共に出向き、直接貴族たちと話す機会を多く持つように心掛けた。
行動力に溢れた王太子妃を恐れる貴族も多かったが、リュドミラの真摯に向き合う姿にその恐怖は薄れていった。シリルがそうであったように、貴族たちも例にもれずリュドミラに篭絡されることになっていくのだった。
***
「―――ちょっと公務をがんばりすぎじゃないかい?」
「シリル?」
「・・私との時間がかなり少ないと思うのだ。もっと仕事を減らしても良いのでは?」
シリルはリュドミラを大切に膝に乗せたまま、寂しい寂しいというオーラを溢れさせておねだりしてくる。
「こんなに妃が忙しいと、授かるものも授からないではないか?君との夜が少なすぎると思うのだ・・」
「あら?そうかしら?今週はもう4日も一緒に寝ておりますよ? 」
「いいや。駄目だよ。夫婦は毎日一緒に眠らなきゃ!仲良くしないと!ね?リュドミラ良いだろう?」
「んー調整出来るか検討しますわ♡」
「・・・・善処を頼むよ!!」
リュドミラはシリルのおねだりをあっさりかわすが、シリルはぎゅっとリュドミラを抱きしめると念を押すのだ。
この王太子夫婦の問答は王となり国を繁栄に導いた後も続くのだった。
fin




