終章ー3…明かされるアルテンド伯爵の罪
「は?!え?シリル?!」
リュドミラが声を上げてもシリルはお構いなしにそのまま走り続ける。くっくっくっと笑う声が聞こえる気がする・・・
壁の外に出るとシリルの偵察隊やリナ、王国からの応援部隊の騎士たちが出迎えた。
(――はっはずかしいっっ!!)
お姫様抱っこだって恥ずかしいが、荷物のように肩に担がれて運ばれて顔が熱くて皆の顔が見れない。リュドミラの顔は真っ赤に染まっていた。
機嫌のよいシリルはリュドミラを肩から下ろすと集まった仲間たちに語りかける。
「皆ご苦労だった!!ケガ人を出すことなく無事に任務遂行してくれたことを感謝する!だが、まだ残党が残っている可能性もある。闇市の中にいる者たちは全員罪に問うので捕縛して陛下の指示する牢に収監してくれ!偵察部隊も事後処理はまだ残っている。先ほどの指示の通り迅速に進めてほしい。ミラとリナは陛下より伝令が届いているので私の馬車に同乗してくれ!以上!」
各部隊はそれぞれの引き続きの任務に戻り、リュドミラとリナはシリルの馬車に乗り込んだ。
「―お疲れ様だったな。二人とも。」
シリルはにこやかに二人に微笑みかける。リナはシリルに微笑み返すが、リュドミラは窓の外を眺めて返事をしない。」
「おや?ミラどうしたんだ?体調でも悪いのか?」
「・・・」
シリルは気にする様子もなくにこにこしながら体調を気遣うが、リュドミラは返事をしない。リナは空気を読んで静かに窓の外を眺めることにする。
「なぁミラどうし――」
「―ちょっと黙ってくれます?」
凍てつく声音でリュドミラは返した。
「ミラご機嫌斜めなのかな?美人が台無しだよ?」
「男の時に美人とかいうな!」
相変わらず外を向いたままリュドミラは返事だけ返す。
「――もしかして肩に担いで運んだのを怒ってる?」
「・・・・・」
「そうか・・すまない。それじゃ横抱きにしてお姫様のように大切に運ぶべきだったね♡」
「・・どっちもヤダ」
リュドミラの返事にシリルもリナもクスクス堪えきれずに笑い出す。
「――リナまで笑わないでよ!」
リュドミラは顔を赤くしてぷんぷん怒っている。
「ミラさん。――私ミラさんのそんな態度初めて見たんですけど?殿下と一体何があったんですか?」
リナの指摘にリュドミラは我に返った。
(――婚約者に戻ったこと誰も知らないんだった!!)
「リナっ・・これは――」
「私たちが婚約者に戻ったからミラがじゃれてるんだよ♡」
リュドミラがリナに話している途中でシリルが言葉を被せてくる。
「!!!!!っじゃれてないっ!」
(・・もうヤダ・・)
リュドミラはシリルに肩に担がれてから恥ずかしくて恥ずかしくて冷静さが保てない。
「殿下ミラさんが好きだからってそんなに弄らないで下さい!ミラさんっ!殿下なんて放っておいて私と話しましょうよ!」
「・・リナ・・・不敬だよ?」
お構いなしに暴言を吐くリナにやっとミラは冷静さを少しずつ取り戻すことができた。
――――コホンっ
「シリル殿下。国王陛下からの伝達があるのですよね?そちらを教えてください。」
リュドミラは調子を整えるとシリルに話す様促した。
「・・なんだもう終わりか?残念だな。・・・仕方ない。それでは陛下からの伝令を含め、状況を伝えよう。」
「お願いいたします。」
3人とも表情を戻し話に集中する。
「今回のアルテンド伯爵の捕縛と闇オークションの制圧は、1年程前から始まった。・・私が事の発端ともいえるかもしれないのだが、3年以上前から私はミラを探す為に自分の身分を隠しミラの似顔絵を予想して描いたものをサマステリアの街中に貼っていた。何年も張り紙が張り続けられるので貴族が関心を持ってしまい1年も経たずにその似顔絵と同じ容姿の白色病患者少女を探して私の所に連れてくるようになった。そして途中から王太子が人探しをしているとバレてしまったのだが、そのことで更に偽物のミラを用意する貴族が増えてしまった。しかし、偽物だから選ばれるわけがなかった。
選ばれなかった令嬢は、元の場所に戻される場合もあった。しかし、ほとんどは奴隷として売られてしまったのだ。その売った大元がアルテンド伯爵だ。」
「なんですって?!奴隷!」
リュドミラは衝撃を隠せなかった。
「――これは私の欲が招いた悲劇だが、アルテンド伯爵は隣国のある大臣と懇意にしていた。そこで白色病患者を献上し、非常に喜ばれたのだそうだ。隣国では白い肌白い髪、薄い色の瞳の人間や動物は幸運の象徴のように思われていたらしく、そこから闇オークションが開催されるようになってしまった。
この悲劇を陛下は私に自分で始末をつけるよう義務とされた。勿論私自身も自分が発端であるとわかっていたからこそすぐに偵察部隊を編成し、状況を把握しながらそれでもミラを探し続けた。
そこで出会ったのがリナだった。アルテンド伯爵は幾度となく偽物のミラを連れてきた。だから流石に耐えられなかった。丁度リナと出会ったときに、闇オークションがすぐに開催されて、そこで手を打つことは難しかったの。その為、次の闇オークションは必ず阻止すると力を入れていた。だからこそリナが危険な目に合わないように、他の少女たちが狙われないようにリナをミラとして受け入れた。
結果アルテンド伯爵はリナを私に献上して満足して大人しくなったが、しかしその後も少女がいなくなる事件は後を絶たなかった。
恐らく今回のオークションで売りに出すつもりだったのだろう。
しかし、私がサマステリアに来たことで、また私がミラを探し始めたと思ったらしく、リナがミラではないとバレた可能性が高くなった。その為、リストン辺境伯に頼み込んで条件のよい宿泊施設を紹介してもらい、私の部下も護衛にあたらせた。
護衛が着いたことでアルテンド伯爵が警戒し、リナに近づかなかったのでどうするかと考えていた時に、リナが今回の囮作戦に協力してくれて、無事に作戦を完遂することができた。
結果全員子供たちは無事だった。
その報告で陛下はリュドミラとリナを賞賛したいとおっしゃって、王都へ戻り、王宮にて陛下の謁見をしてほしい。急ではサマステリアの知り合いたちに別れも告げられないだろうから、明日別れの挨拶の夜会をリストン辺境伯邸にて催されることになった。翌日には王都に向かって出立の予定だ。何か確認したいことはあるか?」
「色々とアルテンド伯爵には物申したいですが、状況は判断いたしましたわ。今回被害が出なくて本当に良かったです。
ミラを必死で探すあまり、他の少女たちを危険な目に合わせていたなんて正直王太子としてあるまじき行為ではあるけれど、きっとこの件は陛下からとっくにお叱りを受けているのでしょうから。」
「そうだろうね。
それにしてもリナが今回自分から積極的に動いてくれたおかげでかなりスムーズに任務を完遂できた。君の協力のお陰だ。そしてミラがリナをサポートしてくれたおかげでもある。心から感謝している。ありがとう。」
シリルは真摯に感謝を述べると深く頭を下げた。
「リナはすごく頑張ってくれていましたけど・・私は闇市で何もできませんでした。むしろ身バレしてしまいましたし・・。」
「いや。ミラはとても役に立ってくれていたのだよ。実はあの闇市・・・今回が最高の客の入りだったらしいのだ。何故かわかるかい?」
「・・・・・・・・・まさか・・」
なんとなく自分に関わることとなると思い当たる節が・・
「カップル本だよ!これを目当ての裏貴族が本当に今回多くてね!以前からなかなかしっぽを現さないやましい貴族たちがこぞってあの会場に現れたんだ!凄い効果だろ?あれも前もって釣っておいてよかったな!」
「??・・・・まるであの買わせ行為すら思惑だったみたいないい方ですね?」
「ふふ。」
「え・・・・うそ・・なんか聞くの怖いんだけど・・」
シリルの含み笑いを見ていると、まるでサマステリアに来てからの自分の行動が全てシリルの掌で踊らされていたかのように感じるのは何故だろう・・リュドミラは思考を放棄したくなった。
「まぁこの辺りはミラが聴きたくなったら話してあげるよ!
まずは明日サマステリアの仲間たちとの宴を楽しもうじゃないか♪」
シリルは嬉しそうに笑った。
(・・・この人・・今日ずっと笑ってる気がする・・・)
リュドミラはシリルの微笑みが怖いと感じたのだった。




