終章ー2…闇市潜入
あれからリナを追っていた偵察隊から報告が入った。やはり闇オークションに連れていかれたらしい。闇オークションに潜入している潜入者のユーゴが引き続きリナを見守り囚われている場所も確認中らしい。
シリルの部隊にリュドミラもミラで同行し、今は闇市から1キロ程離れた山間部の偵察隊合流地点で明け方まで待機している。
作戦は闇オークションで囚われている子供たちの奪還と、アルテンド伯爵の身柄を捕縛することで、明け方には誘拐犯の捕縛隊員たちがこちらに合流することになっている。
闇市は市場の周りを高い壁で囲まれていて、潜伏隊の情報によると通常の出入り口の表門1か所と、関係者用の裏門2か所の3か所しかないらしい。
その為王宮からの応援部隊は、入り口三か所を封鎖することになっている。中を制圧する制圧部隊はシリル率いる部隊計25名とシリルとミラだ。
すでに潜伏しているカインが手引きして、制圧部隊は貴族に扮して闇市の客に成りすました。昼でも非常に賑わっていてとても闇市のイメージには合わないが、立ち並ぶ出店の商品は確かに普通の店では見ることができないものがほとんどだった。その中に以前リナが言っていたミラとシリルのカップル本があったのには唖然とした。
その出店の前には貴族女性が数十人購入待ちをしている状態で、ちらっと本をこっそり見てみると直視できないものだった・・・。
(ミラが完璧に男として描かれているわ・・・こわ・・)
シリルは気づいていないようなのであえて教えることはしないことにした。
(・・・欲しがったりしないだろうけど・・・ね・・欲しがったら怖いし・・)
貴族に扮したリュドミラたちは、普段の自分たちだとわからないように鬘を被ったり眼鏡をかけているのでバレてはいないが、見つかったら大騒ぎで間違いなく作戦は失敗するに違いないだろう。
一通り普通の貴族のように店を見て回り、タイミングを見ながら闇オークションに忍び込むタイミングを図った。恐らく入り口を厳重に壁で囲っている為、中はそこまで警戒していないのか見張りは二人程度しかおらず、制圧部隊の隊員たちが次々と見張りを捕獲し成り替わっていく。
(・・・すごい手慣れすぎてる・・・)
夕方頃までには闇オークションのほぼ全ての見張りが入れ替わり、捕縛した見張りはあらかじめ決めてあった隠し場所へ集められた。
(これって密偵とかできちゃう人たちなのかしら・・)
リュドミラは特にできることが今はないのでシリルに寄り添い、隊員たちのお手並みをまじまじと拝見していた。
「――あとは、子供たちの牢屋の見張り3名を制圧すればオークション客とアルテンドを捕縛はできる。あと1時間ほどで作戦結構だ!ユーゴ。リナは大丈夫か?」
「大丈夫です。今は子供たちと同じ牢に入れられています。伯爵は闇オークションの支配人と今夜の打ち合わせをしているようですが、包囲されていることに全く気付いておりません。もう間もなく始まるので安心しきっているのでしょう。」
「わかった。気を抜かず頼む。ここからは皆指定のフードを被り行動する!客は大勢集まっているから判断が難しい!味方と敵を見誤らないように気をつけろ!20名は私と会場の制圧に向かう!残り5名とユーゴ、ミラは子供たちの救出だ!制圧隊からの合図が出てから作戦の通り子供たちを誘導してくれ!!」
「了解っ!」
全員が気持ちを引き締め作戦開始の最終準備に取り掛かった。
そこからはあっという間だったらしい。闇オークション会場を制圧した合図をしに来たカインはあっという間の制圧劇のあらすじを完結に教えてくれた。
闇オークション会場入りが終わり、進行役が挨拶を始めた時点でシリルが進行役を捕縛し、アルテンド伯爵も他の隊員が捕縛した直後、他の制圧隊が会場に速やかに侵入して、ものの5分経たずに全員無力化して捕縛したらしい。
(・・・20人が5分程で100人近い客を無力化させてから捕縛・・1人当たり1分弱で???神業??)
後日、【縄抜け】と【捕縛】のスキルはシリルの偵察部隊のメンバーは王国一速いのだと聞いた。・・・シリルが鍛え上げたらしい・・
牢から子供たちを救出すると、そこにはリナもいた。
「リナ!!無事でよかった!!」
「ミラさん?!なぜここに!こんなとこに来ちゃダメじゃないですか!」
リナはミラがここに居たことが予想外だったらしく困惑していた。
「その言葉そっくりお返しするよ!散々心配かけたんだ!私は怒っているんだからな!」
「!!・・ごめんなさい・・私も役に立ちたくて・・」
「・・・・・」
「・・ミラ・・さん・・ごめんなさぃ・・ 」
リナは上目使いでミラをうるうる悲しそうな瞳で謝ってきた。
「―――全く!!!帰ったら説教だからね!無事でよかった!行くよ!」
リナの悲しそうな顔にはミラは弱い。
子供たちも壁の外へ誘導されて逃げていく。しかしあまりにもスムーズだったから気が緩んだのだろうか。一人の少女が出店の賑やかさに釣られて走って向かってしまった。
「だめだ!戻って!!」
慌てて声をかけるリュドミラの声が少女には聞こえていない。4歳程の少女なので店の立ち並ぶ通りに入り込んでしまったら客に押されてけがをしてしまうし、白色病の子供を忌み嫌う貴族に何をされるかわからない。
なんとか出店の通りに入ってすぐの所で、確保できて追いかけてきたリナに託せたが、後ろから客に押されてリュドミラのフードが外れて顔が晒されてしまった。
慌てて被りなおそうとしたその時だった・・
「ミラ様?!?!――ミラ様だわ!!!」
一人の貴族女性が歓喜の声を上げてしまった!
(―しまった!!まずい!!)
あっとゆう間に周りには貴族女性が物凄い速さで集まってしまった。
(はやっっ!!こわっっ!!)
「――これは握手会かなにかですの?!ミラ様が来て下さるなんて!!もしやシリル様もご一緒では!!」
「――ちがっ・・・うわ・・・触んないで!!」
興奮して暴走した貴族女性たちが、普段なら触ってなど来ないのに、闇市の無礼講だとでも思っているのかリュドミラの体にべたべた触れようとしてくる。
「止めて――――」
ぐいっと前方から力づよく引っ張られたかと思うとすぐに担がれリュドミラは即座に連れ去られた。
あっという間の出来事でリュドミラの頭は追い付かなかった。
顔を上げると貴族女性たちが泣き叫んでいる。物凄い形相にリュドミラはゾッとした。
(ふ・・フジョシ?・・怖いっ!!!!)
貴族女性から逃げることができてほっとして自分の状況に気づく。
(――え?!何?!担がれてる??・・・これってまさか攫われてる?!)
茶色い髪の男?に担がれていた。突然恐怖が襲ってきて、リュドミラは必死で降りようと抵抗して手足をばたつかせる。
「――は・・離せ!!離せよ!!」
男の茶色い髪をグイっと掴むと髪の毛が外れた。
「????!!」
茶色い髪のから覗いたのは燃えるような赤い髪の毛だった。




