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2章ー7…何故ここに?







 「おはよう。ミラ♡」



 「・・・・・シリル・・何故ここに?」



 「ミラ様。エレイン商会は今人手不足なのです。なので働きたい方はウェルカムで受け入れさせていただいているのですよ!」



 「・・・デービッド???・・・なんか企んでる?それとも伯父様かな?」


 冷たい視線をリュドミラから向けられデービッドは慌てて釈明する。



 「み・・ミラ様・・誤解でございます。商会の為ですよ!!」



 「・・・・・わかりました。」



 むすっとした表情をするリュドミラは、シリルを一瞥すると何も言わずに仕事を始めた。



 「ミラ様!もうお一人今日から働いてくれる方がいるんですよ!何でもミラ様のご友人らしいではないですか!」



 「え?」


 (誰だ???・・・まさかミラ???)




 「おはよーございます!」



 「リナ。おはよう。」



 「?!!リナ?!」


 シリルの言葉に思わずリュドミラは反応してしまう。



 「あ―――・・デービッドさん。ちょっと友人に説明する時間をいただけませんか?」


 「構いませんよ。どうぞ行ってらっしゃいませ!」


 リナのお願いにデービッドは快く許可をした。



 (いきなりどうなっているの???)






 エレイン商会の外に出ると、少し開けた場所で話を始めた。道行く人は大勢いるが、恐らく普通に話す分には問題ないだろう。



 「え――っと・・ここでシアンテ令嬢って呼ぶのはまずいですよね???男装されてるみたいだし?」



 「――そうね。・・・というか色々わからないことだらけだわ。ミラ嬢の本当の名前がリナさんなの??」



 「はい。そうです!シアンテ令嬢が本当はミラさんだったんですね!初めて知りました。」



 「っ!!!・・・・・ごめんなさい。」


 リュドミラは自身が本当はミラであることを話していなかったことをすっかり失念していた。



 「え?別に怒ってないですよ?!・・むしろものすっごく気を使わせてしまってたんだなって・・・改めて思いました。


 ミラさんはこの1年私がミラさんの代わりをしていると思っていたんでしょう?」



 「・・・・えぇ。」



 「ごめんなさいっ!!・・・実は私も伝えていなかったんですが、私ミラとは名乗ってましたが、殿下は全くミラさんの代わりだなんて思っていなかったんです。




 最初からわかってたって・・2日前に言われちゃいました。




 でも嘘ついたことは罰しないって・・・殿下は言ってくれたんです。




 本当に優しい方ですよね。」





 「――そうね。」





 「ミラさん。―私殿下に告白したんです。



嘘をついていたことも、



ずっと好きだったことも。




 ・・・・・・・・・・でもフラれちゃいました。」





 「――リナさん・・」




 カミングアウトするリナの横顔は、寂しそうで切なげで庇護欲がそそられるような美しい横顔だった。




 「やっと。前に進めます!やっぱりごまかしたままとか、嘘ついたままで上手くいくことなんてほとんどないですよね!


 だからスッキリしたんです。




――――だけど殿下とミラさんの事に関してはスッキリしてません。」





 「え?」


 


 「殿下ってばここに来るまでシアンテ令嬢がミラさんだって全く知らなかったんですよ!


 ほんとひどいですよね!!





 ・・・・・だけど





 ・・・・殿下はシアンテ令嬢の事が大好きだったんです。」







 「リナさん???」






 「私・・気づいてたんです。




かなり前から殿下がミラさんを目で追ってたこと。




夜会服だって、無意識で・・・ほんと無意識で殿下は装飾具の宝石を、ミラさんの【瞳の色】にしてたんですよ!!




鈍感すぎだと思いませんか?!」






 (私の瞳の色?!・・・そうだったっけ???)




 「??!!!―え?っちょ・・・え?」






 

「私は今までのお二人だけのことは知らないので色々憶測では言えませんけど・・



 殿下はいっつも私といる時でもミラさんを目で追ってました。



 私の為にわざと鉢合わせしてミラさんが会ってくれていた時なんて、ほんっとうにひどかったんですから!!



 もうあの時には隠す気もなくなってるのかな?っていうくらい頬を赤く染めて、ミラさんを見惚れてましたよ。」






 「・・でも・・夜会の時だって・・私は婚約破棄まで言い渡されそうになったじゃない???」





 「あれも・・・私たちが入場した時に殿下ミラさんを興奮した目でガン見してたんですよ!!



 私が腕引っ張らなかったらずっと見惚れて動かなかったはずですよ!!



・・・しかも・・・そのあと殿下いなくなったじゃないですか・・・




 あれお花摘みにいってたんですから・・・」





 「お花摘み???え??来て早々に?」





 「はい到着して早々に!です。・・・興奮しすぎてあっちがやばかったんだと思います。」





 「あっち?」







 「――――あ―――・・・そのあたりはまあ良いとして、



 私が伝えたかったのは、あの日殿下はミラさんに舞い上がっちゃってたんです。



 あの日私たちが夜会に参加することを言わなかったのは、じれったい殿下にミラさんの歌を聞かせて、自分の気持ちに気づいてほしかったからなんですよ・・



 ミラさんはびっくりしたかもしれないですが、私も一緒じゃなかったら、殿下は参加する気なかったみたいだったので、強引に連れていくために内緒で一緒に行ったんです。



だから殿下色々びっくりしちゃったんです。



・・・すっごい拗らせてるんですよ。



ミラさんをずーーーーっと探してたっていうのは知ってますよね?




自分はミラさんを探しているのに、美人なシアンテ令嬢に心を奪われそうになって困惑していたことが【裏切り行為】に思えてしまったようです。



・・・でも蓋を開いたら二人とも同じ人だったとか・・・




ほんと・・・笑えませんよ。




・・・もう相思相愛なのに・・・何やってんだかって思っちゃいますよ。」






 「リナさん・・」






 「私はこれからもミラさんのお友達でいたいです。殿下よりも私はミラさんの味方です。




 だけど、ミラさんを幸せにできるのは殿下だと私は思ってます!」






 「り・・リナさんん・・ちょっとま――」





 「待ちません!


 私気づいちゃったから殿下に協力することにしたんです。



 殿下があんな態度をとっていたのは、シアンテ令嬢への恋を認めたらミラさんを裏切ってしまうと思ったからなんです。



 それが理由なんです。それで拗れただけなんです。



 容姿がどうとか・・・多分そうゆう事じゃないと思います。



 殿下はもう拗れてません。もう繋がったから。



 殿下の愛は重いですよ。きっと逃げられないと思います。


 でもきっとミラさんを幸せにしてくれると思います!だから殿下のこと見てあげてほしいです。


 すぐ答えなんか出さなくても大丈夫です。


 殿下は一生罵倒されても諦めないって言ってましたから!」






 「一生っ?!」






 「はい。多分ミラさんが根負けすると思います。ふふ。楽しみですね」





 「り・・リナさん・・」





 「私ずっとお二人が大好きです!だから私との友情も・・大事にしてほしいです。




 ・・・駄目ですか?」





 (こんなに・・・こんなにたくさんの言葉を勇気を振り絞って私に伝えてくれているのね・・)





 リナの手は震えている。きっとこの話をするために悩みに悩んでわざと明るく振舞いながら話してくれているんだろう。


 リュドミラは隣に立つリナをぎゅっと抱きしめた。






 「―――ありがとう。



 

 リナさんの想いはちゃんと受け取ったわ。



 絶対に無駄にしないから。



 あなたはこれからも大切な親友よ」




 「親友・・・ほんとに?」



 「本当よ。貴女ほど私の事を知ってくれている友人はいないわ。」



 「―――み・・・ミラさん・・うぅぅぅ・・」



 リナの瞳からは大粒の涙が零れ落ち、しゃくりあげながら泣くリナの姿はこれまでどれだけ重責に耐えてきたのか窺い知れるようだった。



 孤児院から貴族の世界に飛び込んで、きっと不安な毎日だったと思う。


 私の取り巻きたちや、白色病を忌み嫌う貴族からの悪意ある言葉に何度触れたことだろう。


 そんな中でシリルに淡い恋心を抱いたのに報われなくて、それでもリュドミラとシリルの幸せを願ってくれた。


仲介まですることないのに・・・






 「リナさんは本当に良い子過ぎるわ。」






 「―――私は・・狡い子ですっ・・うっ・・うっ・・」






 「私にとっては友達想いの優しい良い子よ。



 私がそう思っているだけよ。」





 その後もリナの涙は半刻ほど止まらなず、道行く人々にリュドミラとリナが恋人同士の痴話喧嘩と思われていたとはその時は夢にも思わなかった。



 部屋の中から外で抱き合う二人を見て、シリルがあからさまに嫉妬していたと、ダッツに後からこっそり教えられた。




 サマステリアに来て今まで絡まった意図がするする解けていくかのようにリュドミラの心が暖かくなっていることに彼女はまだ気づけていなかった。



 それでも【嬉しい】と思える事が増えていることにリュドミラは日々の生活に感謝するのだった。







 










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