2章ー6…ミラとしての告白
「――――殿下?大丈夫ですか?」
数日ぶりに再開した殿下は憔悴しきったように目の下にクマができ、少しやつれたかのように感じる。
「――私は愚か者だ・・大切な人を・・最低なやり方で愛してしまった。」
「・・・・」
(会えたんだ・・)
「気持ちは伝えたんですか?」
「あぁ。これっぽっちも信じては貰えなかった。」
(―――ま。そうなるよね。)
ミラは同情の眼差しで殿下の隣に腰掛けたが、シアンテ令嬢が殿下を必要としないのであれば、自分が殿下を支えたらよいのでは?
(・・・やっぱり私はどこまで行っても狡い女なんだなー。)
「殿下。気持ちを伝えられたなら良かったじゃないですか。言えずに終わるよりもずっと良かったと思います。
私、殿下とシアンテ令嬢を応援したいってずっと思ってきました。その気持ちは嘘じゃないです。
だけど、私は殿下の事が好きなんです。」
「―――ミラ?」
「―――私では貴女のミラにはなれませんか?」
「・・・・・」
「きっとシアンテ令嬢は殿下との別れを望んでも、殿下の幸せは願っていると思います。じゃなかったら3年も嫌われていると思っていながら尽くせないです。
だからシアンテ令嬢が殿下を幸せにすることをやめたのなら・・
私が殿下を幸せにしたいんです。
シアンテ令嬢と仲良くなったころに、二人で話したんです。どちらが殿下と結ばれようと、お互い祝福しようって。
だから――――」
「――ミラ。」
「・・なんでしょう?」
「君の名は何というんだ?」
「!!!」
「――殿下?!・・・それは――」
「君がミラじゃないっていう事は最初からわかっていたんだ。
アルテンド伯爵の陰謀を明らかにするために君を自分の懐に入れるために私もあえて騙された。
だから嘘だったからと言って罰するつもりはないから安心しなさい。
君の名前を教えてくれないか。」
「・・・リナ・・です。」
「リナか・・よい名だな。」
「・・・」
「リナ・・私はミラを心から愛している。誰かで変わりが務まるものではない。
だからリナが代わりになる必要はないし、なれないんだ。
・・・すまない。」
殿下の謝罪の言葉には熱がこもっていない。これはただの拒絶だ。
わかってた・・わかっていても望みを捨てきれなかった。
・・・もしシアンテ令嬢とうまくいかなかったら・・自分を求めてくれるかもしれないと
そんな淡い恋心を持ち続けてしまった。
でも殿下は正直だった。私への気持ちを正直に返してくれた。
なんでうまくいかないんだろう・・・
みんなが幸せになれたらよかったのに・・
せめて二人が結ばれてくれたら二人の笑顔を近くで見守れたかもしれないのに・・
これでいいの?
初めてできた友人と、初恋の人を・・こんなことで・・
「―――――駄目です。」
「・・・リナ?」
「殿下。シアンテ令嬢の事、諦めないでください!」
「リナ・・さっき言っただろう。私はこれっぽっちも信じてもらえなかったんだよ。」
殿下は手で大きさを測るように見せて小ささを示したいようだ。
「だからなんですか?たった一回本音を伝えたことが受け入れてもらえなかったくらいで・・しょうがないで終わらせるんですか?シアンテ令嬢は3年罵倒されながら耐えたんですよ?!それをたったの一回で諦めるっていうんですか??!」
「――――!!!」
「――いいじゃないですか・・・もう散々シアンテ令嬢に罵倒しまくっちゃったんです。今度は一生かけて罵倒されてくださいよ。私。協力してあげますから!」
「――リナ・・
ありがとう。
・・・そうだな・・・・しょうがないから一生かけて罵倒され続けてみようか。」
「そうしましょうっ!!それなら作戦たてましょう!!よい作戦思いついちゃったんです!!」
「作戦????」
リナは本当にとっても良い子なんです。本人は自分が狡い子だと思っていますが、ちゃんと相手を想える優しい子なんです。
それが伝わったらいいな。・・と。
・・・殿下はまだダメンズのままですが・・・苦笑