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なろうラジオ大賞参加作品(1000文字以内)

屋根裏部屋の少女は諦めていた

作者: りすこ
掲載日:2022/12/03

「第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品。1000文字の超短編です。

 私は魔力が強すぎた。


 花も、果実も、人も。

 手で触れたら腐らせてしまう。


 私は生まれてすぐ手袋をされ、教会の屋根裏部屋に閉じ込められた。

 恐ろしい力だから外に出てはいけないよ。

 そう言われても、幼い頃は人恋しくて泣いていた。


 でも、いつの日か諦めた。


 どれほど願っても部屋の扉は閉ざされたまま。

 開かれることはない。


 私と外の繋がりは扉につけられた小窓だけになった。

 窓から毎日、固いパンが皿にのって部屋の床に置かれる。


 いつの頃からか、パンに一輪の花が添えられるようになった。

 手袋越しに茎に触れ、花の匂いを嗅ぐ。

 白い花から外の香りがした。


 花は毎日、添えられた。

 それが少し楽しみになってきて、パンを届ける人に言った。


「お花、ありがとう」


 いいえ、と呟く男の声がした。



 ある日、パンの他に土が入った壺が小窓から出てきた。

 壺を見ていたら、男の声がした。


「土に触ってください。肥料ができるはずです」


 意味が分からなかった。

 でも肥料があるとパンがもっと作れると言われて、私は土に触れた。

 腐った土を渡したら、彼は喜んでくれた。



 固かったパンが柔らかいパンになり、白い花ではなく桃色の花が皿に添えられた頃、彼が言った。


「貴女のおかげで今年は小麦がたくさん実りました。餓える人が減りましたよ」


「そう。小麦畑、見たいな……でも無理ね。私が触れると皆、死んじゃう」


 自分で言ったのに胸が痛い。

 うつむいていたら、小窓から彼の手が出てきた。


「貴女は手袋をされていますよね? 触れても、僕は死なないのでは」


 小さく息を飲んだ。

 触れたい心と怖い心が両方きて、前者が勝った。


 恐る恐る彼に触れると手を握られた。

 びっくりして腕を引く。

 手は離れてしまった。


「……やっと、触れられた」


 泣きそうな声で言われて、枯れたはずの涙が瞳からこぼれた。


「私、初めて人に触れたわ……」


 彼は言葉をつまらせながら、もう少しだけ待ってほしいと言った。



 数日後、部屋の扉が開いた。

 居たのは彼。


「教会が貴女を豊穣の女神と認めました。こちらへ」


 彼に手を引かれ、外に出ると小麦畑が見えた。


「貴女が作った土で枯れた大地が回復しました。貴女の力は尊いものです」


 彼は学者だった。

 私の土を使い、十年以上かけて豊かな大地にしたのだ。

 私は恐ろしい存在ではないと教会に訴えて解放してくれた。


 初めて見た麦穂と彼。


 諦めていた光景を見れて泣きそうだ。


「あなたの顔が見れて嬉しい」


 そう言うと、彼は私をかき抱いた。


「僕もです」




「第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」でノミネートに選ばれ、朗読して頂きました!

応援ありがとうございます!


YouTubeで聞けますので、よろしければお聞きくださいませ。

https://www.youtube.com/watch?v=gmUvRA8o1EI

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― 新着の感想 ―
[良い点] 触れたものを腐らせてしまうという→肥料を作れるという発想が素敵です! 短所が長所になるという希望に満ちているうえに、魔法と科学がちょうどよく融合していてすごいです!
[一言] 素敵です!
[一言] 先程聴かせていただきました! 日々どんなに辛く悲しかった事か… 彼女の存在を知った彼が小窓越しに交流を深め愛を育み 報われ、やっと真に触れ合う瞬間には涙が出ました。 素敵な作品をありがとうご…
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