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旅支度

「さて、アプロディーテ。旅に出るには準備が必要だね。何がいるかな?

 スパルタまではエーゲ海を一気に横断する海路が一番早いけど、やっぱり海路はそれなりに危険だって聞くし、それに急ぐ旅でもないからダーダネルス海峡だけ船で渡って、そこからは陸路で行こうと思うんだけど。」


「そうですね。食料と水筒、それに着替えは必要ですね。

 それに陸路で行くのであれば…、スパルタまでは大きな街道もありますし小さな町もたくさんありますので使う機会は少ないかもしれませんが、万が一に備え野営の準備も必要ですね。

 テントや寝袋や火起こし、調理器具は必要ですね。ロープもあれば何かと便利かと。あと魔物も出ますから武器なども必要ですね。あ、ポーションも買っておきましょう。私は【不死】ですので大体の怪我は大丈夫ですけど、パリスさまは万が一のことがありますから。」


「そうだね。大きな街道を通っていく分には強い魔物は出ないだろうけど、戦う準備も必要だね。」


「あと、パリスさまの【無限収納】に入れれば持ち運びは楽ですが、【無限収納】の存在がばれるのはよろしくないかと思われます。レアアイテムですがアイテムバッグというものがありますので、それに見えそうな鞄があった方が良いかと。」


「なるほど。どんなのがいいか判る?」


「はい。お任せください。

 あ、アイテムバッグ(もどき)はパリスさまが持つ必要がありますが、隷属しているわたくしが手ぶらではおかしいので私の鞄も買ってください。」


 僕たちはさっそく山を下りて麓の小さな町の鞄屋に向かい、アイテムバックに見えそうな適当な鞄に購入し、ついでにアプロディーテが持つおしゃれな高級鞄(当然、こちらの方が高い)も買わされた。


 そして、日用品屋に行き、水筒、二人用のテント、寝袋、火起こし、ナイフ、鍋、食器、ロープにタオルなど、思いつくあった方が良さそうなものを適当にいくつか購入、さらに薬屋に行きポーションを購入し、それぞれ偽装したアイテムバックに入れるふりをしながら【無限収納】にしまった。


 そして次は武器屋だ。


 武器屋が僕に尋ねる。

「お客さま、失礼ながら剣術などの武術の経験はどの程度?」


「まったくの素人です。」


「それなら、初心者用の装備の方が使いやすいかと。この剣はスキルが無い初心者でもそこそこ使えますよ。

 あと防具ですが、あまり重装備ですと体力がない方は疲れてしまい、かえって瞬発力を失うデメリットの方が大きいですから、この革の胸当てと冒険者の兜なんかはいかがでしょうか?」


「はい。それでは、それで一式お願いします。」


「あと、彼女に鞭と、僕と同じく初心者用の防具を。あ、鞭は中級車向けで大丈夫です。」


 武器屋のおやじは鞭と聞いてニヤリとしたが、僕にはそんな趣味はないよ。誤解だ。


「パリスさま、私は不死のスキルがありますから防具は不要かと。」とアプロディーテが僕の耳元でささやく。


「いや、死ななくてもアプロディーテが痛い思いをするのはもう見たくないからね。」



 さらに洋服屋で二人の着替えを大量に購入する。【無限収納】もお金もあるから遠慮は無用だ。

 アプロディーテの洋服選びに時間がかかったが、女性の洋服選びなんてそんなもんだろう?


「こちらとこちら、どちらが似合うと思いますか?」


「えっと…」


 こう言う場合は、すでに一方に決めていて背中を押してほしいだけなんだろ?

 前世、何かで聞いた覚えがある。お金があるから両方買おうと言うのは悪手だ。どちらだ?どちらが正解だ?


「えっと、右は…」


 あ、アプロディーテの奇麗に整えられた眉が動いた!ということは左か!


「右は色合いがちょっとけばけばしくて年配女性ぽいかなぁ。左の方がシンプルでアプロディーテの美しさを引き立てる気がする。」


「そうですよね!でもお金もあるので両方買っちゃっていいですか?」


「うん。いいよ。」


「次は下着なんですけど…」


「え?あの、その、わざわざ試着して見せなくても…」


「これ可愛くありません?」「こっちは大人っぽいと思いません?」「きゃっ。こ、こんなのもありますよ?」


 一着づつ試着して僕に見せるアプロディーテに、もう、鼻血出そうなんですけど…

 下着選びまでさせられて(艶めかしいプロポーションを見せつけられて)、結局全部買った。そして俺たちは旅にでた。




 そのころ、イリオスでは…


 芸能・芸術の神であり神託を授ける予言の神でもあるアポローンがカッサンドラを見初め、彼女に言い寄っていた。


「カッサンドラよ、わが愛人となれ。わが愛人となれば【聖女】の固有スキル【予言】の上位スキルである【予知】のスキルを授けよう。」


 パリスが王宮を去って以来ずっと落ち込んでいたカッサンドラは、三日三晩悩んだ挙句、父王や兄ヘクトールの勧めもありアポローンの愛人となることを了承した。


「では約束通り、そなたには【予知】のスキルを与えよう。」


 しかし【予知】のスキルを受け取った瞬間、カッサンドラは自分の未来を知ってしまう。

 アポローンの自分への愛が覚めてしまい、自分を捨ててしまう未来を。


「いやーーー!!!」


 カッサンドラは、彼女に触れようとしたアポローンを拒絶してしまう。

 そして怒ったアポローンはカッサンドラの言葉を誰も信じなくなる【アポローンの呪い】というバッドスキルを彼女に付与した。


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