羊飼いの親方
翌朝、僕はアプロディーテを連れて羊飼いの親方であるニキアスのもとを訪れ、羊飼いを辞めることを伝えた。
ニキアスは、「どういうことだ!3年もの間、面倒見てやった恩を忘れたのか!恩知らずめ!」と言うと、鞭を振るってきた。
とっさにアプロディーテが僕を庇う。
「あ゛っっっっっ!」
「アプロディーテ!大丈夫!?親方!何も鞭で打つことないじゃないですか!」
「うるさい!お前には大金を払ってるんだ!!お前は奴隷だ!勝手な真似は許さん!!」
「大金?あ、そうか。やっぱり僕は売られてたんだ…」
「今頃気づいたのか?愚か者め!奴隷のお前はおとなしく俺の言うことを聞いていればいいんだ!!さっさと羊の世話をしてこい!!」
「大金とは、それはいくらですか?」
「は?金貨10枚だ。なんだ?お前がその金を返すとでも言うのか。」
「では金貨10枚返します。あ、利子もいりますか?12枚でいかがでしょうか?」
「いや、金貨200枚だ!」
「そんな、法外な!一般的な奴隷でもそんなにはしません!それにあなたとパリスさまは奴隷契約してないじゃないですか!」とアプロディーテは僕の代わりに怒ってくれるが、今の僕にとっては大した額ではない。
「はい。いいですよ。わかりました。」
「わかりましたって、おいwお前、小遣いだってやってないのに、そんな金ないだろ…」
僕は無限収納から金貨を取り出して、「1、2、3、・・・」
「お、おい、おまえ…ちょっと待て…」
ニキアスはどんどん積み上げられる金貨にドン引きしている。
そして大量の金貨を羊飼いの親方に渡した。
「お、おまえ、いつの間にそんな大金を!?」
「これで僕は自由の身です。それとは別にあなたはアプロディーテを鞭で打った。これはあなたの罪です。謝罪してください。」
「うっ。そ、それはその女が勝手に飛び出して来たんだ。俺は言うことを聞かない奴隷を叩こうとしただけだ。」
「僕は奴隷契約結んでないですよ。奴隷契約を結んでないものを鞭で打っていいんでしたっけ?」
「うっ…。わ、わかった。あ、謝ればいいだろ!す、すまなかった。」
(このクソガキが!いつの間にこんな大金を手に入れた?この女か?この女の金か?この女もクソガキにはもったいない美女だぞ!くそっ!さっさと奴隷契約さえ結んでおけば…どうせ逃げられないと奴隷契約代をケチったのが間違いだった。)
「パリスさま、この人、【鞭術】のスキル持ってます。法外な金貨の代わりに【スキル移動】でスキルを奪って、それをわたくしにいただけませんか?」とアプロディーテが小声で僕に耳打ちする。
「やってみるよ。えい!あ、一発で移動できた!関係が薄いと成功率低いって聞いたけど、親方との関係は最悪だけと思うけどそれでもいいんだね。」
「???」
ニキアスがキョトンとしてる。まだ自分のスキルが奪われたことには気づいてない様だ。
そりゃそうか、日々スキルを活かして活動しているような人ならともかく、普通の人は特別なことがなければ自分のステータスなんて気にしてないもんな。
「旅の途中、これでわたくしも戦闘で少しはお役に立てます。」
――――――――― ステータス ―――――――――
名前:アプロディーテ 年齢:100021歳 種族:神族
ジョブ:愛と美の女神
スキル:
・不死:神族の固有スキル
・鑑定:神族の固有スキル。相手のステータスを見ることができる。
・魅了 レベルMAX:愛と美の女神の固有スキル。自身を信仰するものを魅了できる。
・繁殖 レベルMAX:愛と美の女神の固有スキル。生殖と豊穣をコントロールすることができる。
・隷属魔法 レベルMAX:隷属することを了承した者を隷属させることができる。
・料理 レベル2:料理が上手くなるパッシブスキル。
・鞭術 レベル3:鞭の扱いが上手くなる。なお殺傷能力は低い。
隷属:パリス
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