アプロディーテ
次の晩、白い腕の女神ヘーラーがパリスの元を訪れる。
「ふん!仕方ないから【無限収納】くれてやるぞよ。優しいわらわは、金は白金貨では使い勝手が悪いだろうと金貨にしておいてやったぞよ。
もう数えるのも面倒ゆえ、相当額の金貨を入れておいた。わらわは約束を果たした。あとは好きにせよ!」
とヘーラーは怒りが収まらない様子で、手短に僕に【無限収納】とその中に収納した大量の金貨をよこして消えた。
その次の晩、知恵の女神アテーナーが現れた。
「はぁ~。で、どんなスキルが欲しいのよ?」
「では、他人のスキルを自分のものにするスキルってありますか?」
「ちょっと待ちなさいよ。【スキル移動】のこと?そんなの伝説級のスキルじゃないの!そんなものあげられるわけ…」
「約束を守っていただけないのですか?」
「ま、守らないとは言ってないわ。仕方ないわね。
これは他人のスキルを自分に、または自分のスキルを他人に、他人のスキルをその他の他人に移動させることもできるわ。
一応注意しておくけど、相手が持っているスキルが判らないとスキル移動はできないわよ。
それにスキルを元々持っている相手とのあなたの関係が薄いとレベルが低い間は【スキル移動】の成功率はかなり低いから。
あと固有スキルも移動できないわ。
なかなかスキルを移動できないからって後で文句言わないでよね。ノークレームノーリターンよ!いいわね。私は約束は守ったからね!」
その次の晩、愛と美の女神アプロディーテが最後にやって来た。
「申し訳ございません。スパルタで政変がありまして、ヘレネーは新たに王になったメネラーオスに城の塔に閉じ込められてしまいました。」
「えっと、それはどういうことですか?」
「ヘレネーさん本人には了承を得ていたんです。パリスさんの元に行くと…。
ですが、メネラーオスが計略でスパルタ王テュンダレオースを倒しスパルタを乗っ取ってしまい、ヘレネーさんも捕まってしまいました。
さすがに女神である私でも24時間監視されている塔からヘレネーを救い出すことが出来ず…
神の誓いを神である私が破ることになってしまい、誠に申し訳ございません。」
「いやいや、それならアプロディーテ様は悪くないですよね。ほかの方法を考えま…」
「呼ばれてないけど、じゃじゃじゃじゃーん!」
そこに突然、大神ゼウスがどこかの大魔王的な自らの口効果音付きで現れた。
「アプロディーテよ。そなたは約束を違えた。これは重大な罪である。わかっておるな。」
「はい。」
「ま、まってください。ゼウス様。これはアプロディーテ様の責任ではありません。」
「パリスよ、これは神としてのケジメじゃ。アプロディーテには罰を与えねばならない。
よいかアプロディーテ、罰として、そなたはパリスに隷属し、パリスをそばで助けよ。」
「はい。わかりました。」
「ちょ、ちょっと待ってください。」
キラーン♪とアプロディーテは自分に隷属の魔法をかける。
「パリスさま、これでわたくしはあなたに隷属しました。
隷属は奴隷契約より強く、そして奴隷契約は一定の期間が終わったら解放されますが、生涯パリスさまに従うこととなります。
それから、パリスさまはわたくしのステータスを見ることができますのでご確認ください。」
――――――――― ステータス ―――――――――
名前:アプロディーテ 年齢:100021歳 種族:神族
ジョブ:愛と美の女神
スキル:
・不死:神族の固有スキル
・鑑定:神族の固有スキル。相手のステータスを見ることができる。
・魅了 レベルMAX:愛と美の女神の固有スキル。自身を信仰するものを魅了できる。
・繁殖 レベルMAX:愛と美の女神の固有スキル。生殖と豊穣をコントロールすることができる。
・隷属魔法 レベルMAX:隷属することを了承した者を隷属させることができる。
・料理 レベル2:料理が上手くなるパッシブスキル。
隷属:パリス
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「これで許してもらえぬか?それともこれでは不服か?」
「あ、いいえ。滅相もありません。も、もちろん不服なんてありません。
アプロディーテ様もこの世のものとは思えないほど美しいですから、そばにいて助けていただけるなんて夢のようです。」
「そうかそうか、わしはもうちっとふっくらしとる方が好みなんじゃがの…」ブルル。大神ゼウスは、一瞬身震いして続ける。
「女神ゆえ、この世のものではないがな。あとお主はアプロディーテの主じゃ。『様』はやめよ。」
「は、はい。ではアプロディーテ、これからよろしくね。」
「はい。パリスさま、よろしくお願いいたします。」
「ただ、これも何かの縁ですし、塔に閉じ込められたヘレネーさんを僕が救い出せるとは思いませんが、おかげ様で旅費もありますから、見聞を広めるため(エルフを一目見るため)にもスパルタまで行ってみたいと思います。」
※2022/10/25 ゼウスのセリフを少し足しましたが、話の流れに影響はありません。