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エルフのヘレネー

 コムギは野営の際に大活躍した。


 二人で交代で火の番をするが、コムギはテントでは休まず、火の番をする側の傍で寝ている。そして、誰よりも早く自慢の嗅覚で魔物の存在を察知し、起き上がり僕らに外敵の存在を知らせる。

 後は、僕とアプロディーテで魔物を倒すだけ。


 もちろんコムギも噛付きで戦ってくれるがまだ仔犬なので魔獣を倒すまでには至っていない。というか無理はしないでほしい。正直ひやひやする。


 そして町や村についたら宿の部屋には入れてもらえず、一匹で馬小屋に泊まらされるわけだが、吠えもさみしがりもしない。とてもいい子だ。さすがに、体を洗われるのだけは嫌みたいだが。


 だけど、戦って汚れているから奇麗にしようね。


「こらっコムギ!おとなしくしろ!お前もスライムのヌルヌル気持ち悪いだろ!このままじゃモフれないぞ!」

「きゃっ!コムギちゃん、まだブルブルしないで!」


 それから宿では、僕はアプロディーテは愛を交わす。


 アテネのあるアッティカからペロポネソス半島に入り大都市ミケーネにたどり着いたころには、アプロディーテは僕の【絶倫】と【性技】の虜になっていた。いや、僕の方がアプロディーテの虜になっていたのかもしれない。

 僕の【絶倫】は通常なら体力(HP)を激しく消耗するし、性欲が高まるっていると、とても戦ったりはできる精神状態ではなくなる。通常の人にとってはバッドスキルだ。

 なので途中で適当な魔物にスキルを渡して討伐してしまおうと思ったのだが、僕は【回復速度向上】のスキルを持ち、かつ僕の底抜けの精力の相手をできるアプロディーテがいる僕にとってはバッドスキルにならなかった。

 何より、アプロディーテが喜んでくれている様なのでそのまま持っていることにした。


 ミケーネまでは主に海沿いの街道を通ってきたが、ここからは山道を進む。そしてスパルタに向かう山道を進む僕たちを、案の定というか山道では定番の山賊が僕らを取り囲んだ。


「へっ、へっ、へっ。こんところついてらぁ~。また美女を見つけやしたぜ。」


「あぁ、こないだ拾った美女といい、俺達ついてるぜ。」


「ほぅ、こりゃ高く売れるぜ!おい、坊主、命が惜しけりゃさっさと失せろ。」


「お頭、折角だから一人は売らずに残しときましょうぜ。せっかく上玉の女を手に入れたのに手出しできないなんて殺生ですぜ。」


「それもそうだな。これだけの上玉なら一人売れば十分な金は手に入るしな。けっけっけっけっけっ」


「パリスさま、こいつらバッドスキル持ちばっかりですね。ろくなスキルを持ってません。あ、魔力(MP)を使うスキルもないのに【MP強奪】のスキル持ちがいます。」


「では、それをいただいておこうか。」


 MP強奪のスキルをありがたくいただき、サクッと山賊達を倒し、コムギが1人生きたまま捕獲した。(というか、あまりにも噛付いたまま離れないので、山賊の心が折れた。)


「おい、お前らの仲間はこれで全員か?」


「ど、どうだろうな?」


 ピシッ!アプロディーテの鞭が唸る。「ガルル~ゥ」とコムギが可愛らしく唸る。

「ひっ。や、やめてくれ。アジトに留守番が二人いる。頭はお前らが倒した。」


「じゃぁ、アジトまで連れてってもらおうか。」


 山中の獣道をかき分け山賊のアジトになっている洞窟の前につくと、捉えていた山賊が突然騒ぎだして留守番をしている仲間を呼んだ。


 しかし留守番の二人は俺たちの相手にはならなかった。俺達は、留守番の山賊二人をあっさり撃退し、そのすきに逃げようとしていた捉えていた山賊もコムギが足止めし、俺たちが倒した。


 山賊だったというのもあるが、すっかりこの世界に染まっていた僕に人殺しの罪悪感は全く感じなかった。


「アジトになにかあるかな?伝説の武器とか(笑)」


「伝説の武器はともかく、山賊どもの会話では、1人女性が捕らえられているのではないでしょうか。」


「じゃ、助けなきゃね。」


 僕たちは山賊のアジトになっている洞窟に入った。洞窟の中は、所々にある松明で照らされ、なんとも薄気味悪かった。


 そしてとても臭かった。松明の煙は上に登って山賊が作ったと思われる空気穴から外に抜けているようなので一酸化炭素中毒の心配はないと思うが、イエローウルフに襲われたときに【嗅覚向上】を取っていたら鼻がもげてたかもしれない。先頭を進むコムギは辛いだろう。



「アプロディーテ、二手に分かれて探索しよう。コムギとアプロディーテは左。僕は右を探すよ。」


 そしてしばらく進むと、檻に誰か入れられているのを見つけた。裸で、汚れてはいるが水色の長い髪、そして透き通るような白い肌をしたスレンダーで、背が高く耳が長いエルフの女性だ。


「ぼ、僕は、パ、パリスと言います。た、助けに来ました。」と、エルフって実在するんだなどと感動しながら、一瞬で彼女の美貌を目に焼き付けた僕は、彼女に背を向けながら説明する。


「助けてくださるのですか!ありがとうございます。」


「アプロディーテ!アプロディーテ!こっちの女の人が!」


「どうしたのですか?パリスさま。何か見つかりましたか?」すぐにコムギとアプロディーテが僕の方に駆け付けた。


「あら、もしかしてヘレネーさんじゃない。」


「え?まさかアプロディーテ様!」


「パリスさま、私のシャツを出してください。とりあえずこの服着てね。」と僕が無限収納から出したアプロディーテのシャツをヘレネーに渡す。


「鍵らしきものは見つからなかったから、倒した山賊の誰かが持ってたのかもしれない。取りに戻るのも面倒だし、檻ごと壊しちゃうから少し下がってて。」


 バキバキ!


 自分の剣を使うと刃こぼれしそうだったので、ゴブリンが持っていたぼろい剣で檻を破壊した。


「改めまして、僕はパリスと言います。」


「もしかして、アプロディーテ様。この方があのパリス様?」


「はい。そうです。この方があのパリスさまです。」

※ 2022/10/24 アプロディーテのヘレネーの呼び方が統一出来てなかったので修正

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