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オリンポス山

「あ、ワンちゃん。可愛い~。」とアプロディーテが手を差し伸べると、仔犬が愛想よく尻尾を振りながらじゃれついてくる。


「毛並みは整ってるから野良犬ではなさそうだね。お腹すいてるのかい?」と僕は干し肉を差し出す。


「くぅ~ん。」


 干し肉に興味はあるようだが、食べようとはしない。何か僕たちに伝えたいみたいだ。どうしたんだろう?


「お前のご主人様は、どこだ?」


「くぅ~ん。」


「なんか、ついて来てって言ってるみたいですね。」


「寄り道になるけど、気になるからついて行ってみよう。」


 僕がそう言ったのを理解したかの如く、仔犬が僕たちを先導する。まるで、もっと急いでと言わんばかりに。 僕たちも仕方なく草原の中をオリンポス山に続く道を小走りで走り出す。そうすると、仔犬はもっと早く走り出す。


「ぜい、ぜい、ぜい。何キロくらい走った?」


「わかりません。結構走りました。はぁ、はぁ、はぁ。」


 気が付いたら、鬱蒼(うっそう)とした森の中の山道を走っていた。僕たちは、オリンポス山へ続く山間を切り開いたわずかな農地の中にポツンと立った一軒家に連れてこられた。


「こんなところに家が建ってるけど、魔獣や山賊に襲われないんだろうか?」


「ワンちゃんがあの家に入っていきましたから行ってみましょう。」


「ごめんください。」


「ギ~!ギ~!」「こ、コボルトだ!」


 そこには、緑の肌をして毛がふさふさとした尻尾と毛深い脚を持った3匹のコボルトと、それに対峙して唸りを上げる仔犬、そしてコボルトの餌にされかけていたのであろう、激しく損傷した老人の遺体が横たわっていた。


「ガルルルル」


 仔犬とは思えない狂暴な唸り声をあげ、仔犬がコボルトにとびかかる。仔犬がコボルトの腕にかみつくが、コボルトは難なく仔犬を払いのける。


「キャイン」


「ワンちゃん、助けるわ!」とアプロディーテが仔犬に襲い掛かるコボルトを打ち払う。

「よし、僕も!」とコボルトを切り倒す。


 そうして3匹のコボルトを倒すと、仔犬が老人の遺体に寄り添って、悲しげな声で鳴きこちらを見る。


「くぅぅん」


「そうか、この人がお前のご主人様だったのか。ごめんな。僕らにはもう助けることはできないんだ。間に合わなくてごめんな。」


「このままですと、また魔獣が来て、遺体を食べてしまいます。せめて、お墓を作ってあげて成仏させてあげましょう。」



 僕たちは老人の家にあった農具で墓を掘り、老人の遺体を埋葬した。そしてアプロディーテが花を摘んできて、墓前にお供えする。


「くぅぅん」


「ワンちゃんもお供えしたいの?」


「くぅぅん」


 仔犬はアプロディーテが渡した花を器用に咥え、墓前に置いた。そして、しばらく仔犬はそこを離れなかった。


「これからお前はどうするんだ?」


「くぅぅん」


「仕方ない、餌を置いていこう。魔獣に取られないようにするんだぞ。そして餌がなくなる前に狩りを覚えるんだぞ。いいな。」


「くぅぅん」


 僕たちが袋に入れた干し肉を老人の家に置いてその場を立ち去ろうとすると、仔犬がついてきた。


「どうした?お前の一緒に来るのかい?」


「あ、パリスさま。この子、わたくし【隷属】使ってないのに、わたくし達に二人に隷属してます。」


「え?二人に隷属ってありえるの?あ、この子のステータスが見れる。」


「そんなことが出来るのは…」


 実はオリンポス山の上から見ていいた大神ゼウスが仔犬を隷属させたのであった。


「ひとりぼっちで置いていくのもかわいそうですから、連れてってあげましょう。」


「じゃぁ、名前を付けようか。ポチ?ジョン?ハチ?シロ?」


「なんですかその名前は?もしかしてパリスさま、名前つけのセンス無くないですか?そもそも白くないですよ。」


「ん~。じゃぁ、アプロディーテはいいアイデアある?」


「この子、奇麗な小麦色してますから、コムギなんてどうですか?」


 あれ?コムギって何語?


 ――――――――― ステータス ―――――――――

 名前:コムギ 年齢:0.5歳 種族:犬

 ジョブ:忠犬

 スキル:

 ・嗅覚向上 レベル6:嗅覚が向上する。

 ・聴覚向上 レベル2:聴覚が向上する。

 ・長駆 レベル1:長距離足が速くなる。

 ・噛付き レベル1:噛付き攻撃のスキルが向上する。

 装備:

 なし

 隷属:

 ・パリス、アプロディーテ

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