冒険者ギルド
僕らは商人の馬車に乗せてもらい、途中の村や町の宿に何回か寄りながら数日後にマケドニアの大都市テッサロニキに入った。
「ありがとうございます。パリスさま、アプロディーテさま。お二人のおかげで無事テッサロニキの店まで帰ってくることができました。これは命を助けていただいた額にしては少ないですが…。」と言ってセルジオスさんから金貨3枚のお礼を受け取った。
まぁ、お金はいらないんだけど、もらっておこう。
「では、こちらの者に冒険者ギルドまで案内させますね。」
そして僕たちはセルジオスさんの店の店員(おそらく奴隷と思われる)に冒険者ギルドまで案内してもらった。
ファンタジー小説に出てきそうな絵に描いたような冒険者ギルドの両開きのウエスタンなドアを開けると、そこは酒臭い匂いが充満していた。
前世基準では、まだ未成年の体である今の僕には堪える匂いだ。
ギルドに併設されたバーにいる厳つい男たちが一斉にこちらを見る。あ、これは絡まれるパターンな気がする…
とりあえず、たむろする厳つい男たちの間をすり抜け、カウンターらしき場所にいる眼鏡が凛々しい女性に話しかける。
「あの~旅の途中で退治したゴブリンの右耳を買い取ってほしいんですけど。」
「はい。かしこまりました。冒険者カードを見せていただけますか?」
「あ、まだ冒険者登録してないので持ってないんです。冒険者じゃないと買い取ってもらえませんか?」
「冒険者登録が無い方ですと買い取り額が半額になりますがよろしいですか?それとも冒険者登録されますか?」
「冒険者登録って、今、簡単にできますか?」
「はい。特にお金もいただきませんよ。冒険者になりたての方向けの剣術など武術などの講習会にもお安く参加できますのでお得ですよ。」
「そうですか。では、冒険者登録をお願いいたします。」
「では、お二人ですね。こちらの用紙にご記入ください。」
僕は、アプロディーテの分も登録用紙に記入する。
二人とも出身はアシアでいいよな。種族と当然人族で、アプロディーテの年齢は21でいいよね?多分それくらいに見えると思うんだ。僕はそっとアプロディーテを見た。
「永遠の17歳でお願いします。」
「はい。」
「アシア出身の方でしたか。あちらには冒険者ギルドはまだありませんから、ガラが悪くて驚かれたでしょ。」と微笑みながら酔っぱらっている冒険者たちに目を向ける。
「先日、トラキアには冒険者ギルドができたんですよ。まだ小さいですけどね。そのうちアシアにもできると思いますよ。
あ、準備ができました。こちらのカードに血を一滴垂らしてください。」
僕たちは、渡された針を指に刺し、カードに血を垂らす。
ピカッ
一瞬カードが光り登録が終わる。
「では、こちらが冒険者カードになります。紛失しないように注意してくださいね。再発行にはお金がかかります。あとこちらがゴブリンの討伐証明部位10個で銅貨50枚です。」
「ありがとうございます。」
僕たちが一通り冒険者ギルドの規則について説明を聞いて、礼を言って冒険者ギルドを去ろうとすると、「よ~、ねーちゃん。べっぴんさんじゃね~か。ちょっとこっちに来て酌しろや。」と酔っ払いのおっさん冒険者5人組が絡んできた。